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31話 泣いてやるもんか

 汚い花火が打ち上がって数分。俺は今、魔力枯渇症の影響で地面に倒れ伏していた。

 体に見合ってない力を使用したせいもあり、全身バキバキで動けそうにもない。


 ……でもまあ、とりあえずはどうにかなった。


 と言っても、新たな問題も発生してしまっているし、再び魔王幹部の襲撃も近いうちに起こる。

 これじゃあ休むこともままならないし、体を鍛えるのだって満足にできなさそうだ。


「……はぁ。憂鬱だなぁ」


 ほんの少し前までは何の力もないただの村人だった俺が、どうして魔王幹部なんかと……。

 ……くそ。勇者は何をやってんだ。聖剣使えなくても、戦う方法なんていくらでもあるだろうよ……。


 それに、俺と同じ呪具使いはどうした。アイギスの話では強いんじゃないのか?

 なのに初代勇者が平和にしてからの1500年の歴史で、呪具使いなんて聞いたことがない。


 俺は英雄譚が好きで読んでいたけど、それにも『呪具使い』という単語は出てこなかった。

 もしかしたら別の呼ばれ方をしているのかもしれないけど、基本は勇者だったり賢者ばかりで……それらしい単語はなかったような気もする。


 仮に歴史から隠されている存在だとしたら、呪印のことを聞くにも骨が折れそうだ。


「実際、ガチで骨折れてるんだけど……ヨホッ」


「キモい声出さないでくれる? 鳥肌が立つんだけど」


「……うぅ。魔王幹部を撤退させて人生で1番カッコいい時期のお兄ちゃんを労ってくれないなんて、なんて冷たい妹なんだ。ごめんよ、母さん。俺はアリスと仲良くできないみたい……」


「はぁ? 誰がアンタを回復魔法で体を治してあげてるのよ!」


「最近、ある部分を除いて母さんに似てきている俺の可愛い可愛い妹だけど」


「……っ、悪かったわね貧乳でっ! っていうかあたしまだ12歳だから、これからもっともっとデカくなるし! お母さんも叔母さんも大きいんだから、あたしも大きくなる可能性あるんだから……!」


「お、おう。そうか……」


 ……えっ? スルー? 可愛いって言われたら普通は恥ずかしがったりするものじゃないの?

 もしかして、貧乳なのを気にしすぎて耳に入らなかった感じ? なら、ごめん。順番ミスった。


 可愛いを先に言えばよかったんだな。


 それにしても、何で胸が小さいことを気にするんだろう。俺は別に小さくてもいいんだけど……。

 大体、母さんと叔母さんを引き合いに出してたけど、あの大きさには流石に成長期でも無理だろ……。


 ……そういや、叔母さんにも母さんと父さんの訃報を伝えないといけないよな。

 まだアリスにもしっかりと伝えてもいないし……。


「なぁ、アリス」


「何よ! まだあたしの胸をイジる気? 最低っ!」


「別に俺はイジってもないし、胸の大きさとかどうでもいい。顔さえよければな……」


「それはそれで最低なんだけど! ……それで? あたしに何か言いたいことでもあるの?」


「これ、渡すの忘れてた」


 そう言って、ずっとポケットに入れたままになっていたネックレスを取り出した。

 言うまでもないだろうが、これは母さんの形見だ。ひとときも母さんのことを忘れないための……な。


 俺も外套を形見として、今も羽織っている。


「これは何? プレゼント? 全然ダメね! あたしはもっと可愛いのがいいんだけど?」


「……違う。これはプレゼントなんかじゃない。もっと大事な物だ」


 俺は真剣な眼差しを向けながら言った。別に雰囲気的に真剣な表情をしているわけじゃない。

 こうやって顔に力を入れていなかったら、涙が溢れてきそうだから……アリスに弱さを見せてしまいそうだから、こうしているだけ。


 それにきっと、母さんも父さんも……悲しんでほしいわけじゃないと思うんだ。


「……これはな、母さんの形見だ。お前が肌身離さず持っていてくれ」


「お母さんの形見……? じゃ、じゃあお母さんは、お父さんは……死んだってこと?」


「ああ」


「……そう、なんだ」


 と言って、俺からネックレスを受け取ったアリスはそれを胸に抱き――うずくまった。


 そして、


「……助けるって約束したのに。あたしが絶対に助けてあげるって指切りしたのに、なんでっ……。時間は腐るほどいっぱいあったのに間に合わなかった。……あたしのせいだ。あたしがもっと頑張ってれば、特待生になったからって浮かれていなければ……。ほかの人と自分は違うって優越感に浸っていたから、お母さんを殺しちゃった……。そうだよ、あたしが殺したんだ……! これじゃあ何のためにあたしは必死で勉強して、魔法学園に入学したの……? もう何を目標にして生きていけばいいのかわからないよ……。わからないんだよ、お母さん……。あたしバカだからぁ! お母さんを殺したあたしがこれからも生きていてもいいのかもわからない……。あたし、お母さんがいなかったら何も……できないよぉ…………。いつもみたいにあたしの背中を押してよっ、手を引っ張ってよぉ……っ。ごめんなさいって何回でも謝るから、お願いします……。お母さん、お母さん……」


 後悔をこれでもかと吐露した。


 それを聞いて、涙がとめどなく溢れてきそうになったけど、俺はお兄ちゃんだから。

 母さんみたいにカッコいいところだけを見せるって、決めたから……泣かない。泣いてやるもんか。


 もう、母さんも父さんもいないんだ。


 だから、アリスを守ってあげられるのは俺だけ。国に頼ろうなんて考えは捨てろ……。

 俺が強くなるんだ。俺が何よりも強くなってアリスを、そして自分自身も守る。


 誰も失いたくないし、失わせたくないから……。


 だから、アリス。お前は泣いていいんだ。弱音を吐いたって、生きる意味を失ったっていい。

 俺がずっと一緒にいる。今度は、俺が母さんのようになって背中を押してみせるから……。


 また、前を向いて生きられるように手を引いてみせるから……。


 ――こうして、俺は新たな誓いを胸に……泣きじゃくる小さな妹を抱きしめるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

少しでも面白い、続きが読みたいと思っていただけたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


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次回の更新は8月12日です!多分、次で一章の最終話だと思われます!

追記:

現在、体調不良のため小説を書く気力がない状態です。なので、次回の更新は未定とさせてください。明日中に書く気力が出たら明日更新します。申し訳ありません。


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