表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/41

30話 寝言は寝てから言えや

 魔王幹部を洗練された体捌きと殺しに特化した剣技でひたすらに攻め続けている。

 ジュジュもまた剣を投影し、俺と完璧なコンビネーションを発揮してくれている。


 だが、それでも倒せない。


 相手は勇者の紋章でしか対抗し得ない魔の紋章を持つ魔族。このまま攻め続けても意味がないだろう。

 とはいえ、今の俺たちにはこれ以外にやれることがない。俺の命を引き換えにすれば、倒せはするけど……。


 さて、どうしたものか。


「……ジュジュ、一旦距離を取ろう」


「しかし、離れてしまうと力を解放する恐れが……」


「まあ、そうなんだが……このまま攻めても俺たちの方が先に限界を迎えてしまう」


 ……まあ、すでに俺は限界なんだけど。当然ながら、『初代勇者の身体能力』に体が追いついてない。

 本当はこうやって強敵とことを構える前に体を鍛えておきたかったが、いかんせん時間がなかった。


 やっぱり、早いとこ筋トレとかやってこの力に耐えられるようにしておかないとな。

 あとは呪印だ。使い方がさっぱりだから、どのようにして使用するのかも確かめておかなければ……。


「ジュジュ、後30秒で離れる。それまでにアイツをどうにかする算段を考える」


「わかりました、主人様」


 その瞬間、俺たちはギアを上げた。特にこれといった意味はないけど……あぁそうだ。

 まだ俺たちは本気を出していないと、魔王幹部に知らしめておきたかったってことで。


 あの力が使えない以上ここで倒し切れそうもないし、虚勢を張って逃げてもらおうかな……なんて。

 といっても、考えることをやめたわけではない。いま俺たちができることを必死に考えている。


 ……まず、俺にあるのは呪具だけ。


 魔力の残りも8割を切った。魔力を回復する隙を与えてくれるわけないから、魔力は慎重に使わないと。

 ……だが、魔法は効かない。守りに徹するわけにもいかない。アイツにはほぼ無限の魔力がある。


 ……あまりにも厄介だ。


 『空中に漂う魔素を魔力に変換し貯蓄する』……か。魔力枯渇を投影すれば無力化はできそうだけど。

 それをしたら魔力が空になって、魔王幹部にやられそう……。


 やっぱり、虚勢を張る以外に無さそうだな。


「ジュジュ!」


「――【火球ファイアボール】っ!」


 俺の呼びかけに頷いて、ジュジュは魔王幹部に対して至近距離で魔法を撃ち――距離を取った。


 ……さて、ここからはいかに俺たちの実力を過大評価させられるのか……だな。


「……弱ぇな。これが魔王幹部って……。寝言は寝て言えよ、この雑魚!」


 ――俺の考えはこうだ。


 再びバカにして、血を頭に上らせる。そうすることで頭の回転を鈍くさせるのだ。


 つまり、考えさせないってこと。


 考えることさえ放棄させることができれば、どんな嘘だってアイツには本当のように聞こえるはずだ。

 ……もちろんすべてが嘘だと流石にバレるから、嘘と事実を織り交ぜながら話す。


 さぁ、ここからが勝負だ。


 手が届く距離で【火球ファイアボール】を撃たれて、吹き飛ばされていた魔王幹部が煙の中から姿を現す。


「いまお前、なんつったぁ? オレには雑魚って聞こえたんだが……舐めんじゃねぇぞ?」


「舐めるわけないじゃん。お前絶対に臭いじゃん。顔近づけただけで鼻がひん曲がるわ、ボケ!」


「……どうやら、本当に殺されてぇみてぇだなぁ!!」


「……はぁ? なに言ってんのお前。俺が本気出してたら、とっくに死んでたくせに」


「ハッ! 騙されねぇぜオレはよぉ……! お前いま、本気出せねぇんだろ? 本当に殺す気なら、とっくに殺してたはずだもんなぁ!!」


 ……まあな。初めから殺すことができていたなら、こうやって話すこともなく殺しているさ。

 きっとお前は嘘を見抜いたと得意げになっているだろうが、こんなのは想定の範囲内。


 なんならそう思ってくれていた方がいいまである。


「確かに今の俺はとある事情で本気を出せなくなっている。お前にそれがわかるか?」


「ハッ、わかるに決まってんじゃねぇか! 耐えられないんだろう? あの力によぉ……」


「あぁ。だから、今の俺に勇者の力はない。取り上げられたんだよ、聖剣も勇者の紋章も何もかもな……」


「はぁ? 何言ってやがんだ、そんなことできるわけがねぇ――ってハァ!?」


 おおっ、良い反応。呪印が刻まれてない方の手の甲を見せただけでここまで取り乱してくれるとは……。

 元々、そこには勇者の紋章なんて刻まれてないのにな。まぁ、こうなることは予想できていたけど。


 というのも、魔の紋章持ちのゴブリン・エンペラーを倒した俺は勇者だという認識になっているからだ。


 本当は別に勇者がいることを知らずにな……。


「……できるんだよ。お前ら魔族が魔法技術を衰退させているのを知った王族が開発した魔法を使えばな」


「ま、まさか……ッ! お前、知っていたのか……。オリビアが魔王の子孫だと……」


 え? そうなの? でも、確かにそれならオリビアがつけ狙われていた意味もわかるな。

 そして、バカな魔王幹部さん……どうもありがとう。利用できる情報を自分から吐いてくれて……。


「あぁ。俺みたいな勇者に相応しくない奴より、魔王の子孫であるオリビアの方がよほど勇者の力を扱いきれる。だから、俺を殺しても無駄だぞ」


「騙したな! オレを騙したなぁ! ただの人間にここまでコケにされるなんて……絶対に殺――」


「――殺せるのか? ただの人間である俺に防戦一方だったお前が? もう一度言う。寝言は寝て言え」


 ……決まった。これは完璧以外の何者でもない。文句の付け所がないくらい、完璧に嘘を貫き通せた。

 ほんまコイツアホすぎる。嘘しか言ってないのに信じやがったんだけど……。


 これからほんの少し、エッセンス的な感じで本当のことを言ってやろうと思ったんだけどなぁ。


 これは俺の勝ちだな。


 イカれてしまったのか、肩を震わせてキモい笑い声――というか、奇声を上げ始めたし。


「クヒャ、クヒャヒャヒャヒャッ! お前は何か忘れてねぇかなぁ!? オレにはコイツらがいんだよ!! ――おい、お前ら【爆裂魔法エクスプロージョン】だ! オレのために死ねやぁああああああぁぁぁぁぁ――ッッッ!!」


 そう言って、俺たちに背を向けて逃走を開始する魔王幹部を横目に俺は、


「ジュジュ、『魔力枯渇』だ」


「すでに準備できています!」


 ……うん。やっぱりいいな。心が通じているというのは、かなりやりやすい。時間ロスもないし。


 その瞬間、俺の魔力がほぼ空になったと同時に、幼女の姿をしている呪具は倒れた。

 それを確認した俺はジュジュとアリスにこう言った。


「ジュジュ! ここでは倒し切れないけど、怨念込めてぶちかましてやれ! アリスは……とにかくやってやれ!」


「わかりました!」


「は、はぁ? 意味わかんないんだけど!」


 ――こうして、無様に背中を晒した魔王幹部に……特大の魔法がぶち込まれるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

少しでも面白い、続きが読みたいと思っていただけたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンはモチベーションアップにも繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!


次回の更新は8月10日です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ