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28話 私はもう……間違えない

 焦土と化した戦場。教会なんて跡形もなく消失し、代わりに大きなクレーターが出来上がっていた。

 その中央部で謎の男が立っている。その背後には同じ顔、同じ姿をした幼女が複数人。


「あれは、一体……?」


「呪いの魔道具の量産型……だと思う。少し前に見学しに行った王国魔法師団の研究室で見た気がする」


「は?」


 俺の疑問に応えたのはアリスだ。だが、アリスが言ったことに対して、新たな疑問が浮かんでくる。

 仮にあれが王国魔法師団で開発された呪具の量産型だとしたら、どうして魔王幹部がそれを……。


 いや、そういう想定もしていたじゃないか。人間側に魔族と繋がっている奴がいるかもと……。

 そして、王国の中枢に魔族が入り込んでいる可能性があることも……。


 まさか、その2つが当たることになるとはにわかにも信じられないけど。


「アリス。あの呪具の能力とかわかるのか?」


「あたしが知ってる呪具と同じなら、空中に漂う魔素を魔力に変換し貯蓄するというものだったはず……」


「……なるほど。何千、何万という魔物を召喚できたのはその魔力があったからってことか」


「で、でもなんであんな奴がそれを……? あいつ、どう見ても魔族じゃない……」


 あぁ、どこからどう見ても魔族だ。アイギスと違って、頭部にいかにもな角を生やしている。

 背中からは禍々しい翼が生えているし、魔族以外の何者でもないだろう。


 ……しかも、かなりの強者だ。


 大体、ジュジュと顔見知りってことは、初代勇者が活躍していた時代を生き抜いている。

 そんな奴が弱いわけがない。それは、ジュジュの前・所有者を殺したことで容易に理解できる。


 ……果たして、そんな強者に少し前までただの村人だった男の力が通用するんだろうか。


 そう、少しだけ弱気になっていると、


「お前かぁ? オレが放ったゴブリン・エンペラーを倒したのはよぉ……。やってくれるじゃねぇかぁ」


 奴は俺に近づき、興味を示してきた。


 や、やめて? 俺を注目するのやめて? 俺はお前が思っているような人間じゃない。

 少しばかり魔力が多くて、神の領域に至ったジェイドが作った呪具を持っているだけなんだ。


 だから、俺のことなんて気にしなくていいから。気にされても困るからさ、ほんとに。


 なのに……。


「お前のせいで、余計な無駄足を踏むことになっちまったじゃねぇかよぉ。あのとき、お前さえ大人しくしていてくれていたらさぁ、オリビアを簡単に捕まえられたのによぉ……。どうしてくれんの? マジで」


 明らかに俺に敵意を持っていやがる。それに、やっぱり狙いはオリビアだったのか……。

 まだ目的はわからないけど、魔王幹部にオリビアを渡しちゃいけないのはわかった。


 だから……


「はぁ? 人のせいにしないでくれる? お前が悪いんじゃん。人の故郷を戦場に選んだりするから。……逆に俺からも言わせてもらうけどさ、お前のせいで俺も迷惑してんの。お前が魔の紋章持ちの魔物を送ってきやがるから、それを倒した俺は王宮に出頭しなきゃならんのよ。つまり、お前の存在は俺にとって邪魔だからとっとと消えてくれない?」


 俺が取るは抗戦的な態度。そして、標的を俺にすり替えるために「シッシッ」と手で煽ってみる。

 こいつは自分がバカにされたらムキになる典型的なチンピラと一緒だろうからな。


「いまお前、なんつったぁ? もしかして、オレのこと……バカにしたんじゃねぇだろうなぁ!? ……許さねぇ、ぜってぇ許せねぇ――ッッッ!」


 はい、怒ったぁ! 激おこだねぇ。でもさ、俺もお前に負けないぐらいイラついてる。

 なぜだかはわからない。でも、ジュジュを侮辱されて無性に苛立ちを覚えてしまっている。


 どうやら俺はジュジュのことになると、どうにも自分らしくなるなるみたいなんだ。


「……お前さ、いい加減にしろよ?」


「ハァ!?」


「お前さ、なに自分のこと棚に上げて許さねぇだの許せねぇだの言ってんの? 俺は何にも知らないけどさ、お前の方こそ許されないことやってきてるだろ」


「ケヒャヒャヒャヒャヒャッ! バカじゃねぇのお前!? 強者のオレは何をしても許されるんだよぉ! そんなことも知らねぇとか、頭悪っ!? クヒャヒャヒャヒャ!?」


「……あっそ。だとしたら、お前はやっぱり許されない。だってお前、俺より弱いじゃん?」


 え? もしかして、俺って煽りの天才では? それともイキリの才能が爆発してしまったか。

 まぁ、どちらにせよ……魔王幹部の頭は俺を殺すことでいっぱいになったはずだ。


 そして、俺の気も済んだ。まだ言えてないこともあるけど、それは俺が言うことでもない。


「……ジュジュ。後はお前があいつに言ってやれ。……俺のことは気にしなくていい。謝らなくてもいい。お前のすべてを受け入れると言っただろう?」


「格好をつけているところ、申し訳ないのですけど……そのようなこと一度も言われたことありませんわ。だってノロアさん、ワタクシが犯した罪の1割か2割しか一緒に背負ってくれませんもの」


「えっ、そうだっけ?」


「……えぇ。ですけど、ありがとうございます――ノロアさん。その言葉が聞けて、とても嬉しいですわ。……もう我慢しなくてもいいんですのね?」


「ああ」


 ――その瞬間、俺の中に『何か』が流れ込んできた。……あぁ、これが『呪い』か。

 今までジュジュが積もりに積もらせていた憎しみや恨みが俺の心を――すべてを変容させようとしている。


 だが、それは俺が恐れているからだ。もっと、すべてを受け入れてあげなければ……。


 ――その次の瞬間、


「――あなたが憎い。憎い憎い憎い憎い憎い。……どうしてあなたはまだ生きていて――『あの方』は死んでしまいましたの……? あなたが死ねばよかった。そう、あなただけが――死ね。死ね死ね死ね死ね死ね。死に晒せ、無様に。ワタクシがあなたを殺して差し上げますわ。今度こそ絶対に誰も……。ワタクシは――私はもう……間違えない!」


 ジュジュはありったけの呪詛を吐き、姿が変貌するほどの力を解放するのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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次回の更新は8月6日の予定です! 

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