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27話 また目の前でブチ殺されてぇの?

「……こんなん撃ち込まれた側はたまったもんじゃないな」


 それが率直な意見だった。というか、それ以外に感想なんて浮かばず……敵が可哀想とすら思えたほど。

 それほどまでに『ファイアボール×100000』の威力は魔法という域を逸脱しすぎていた。


 もはや、天災そのものだった。


 ただでさえこの世のすべてを燃やし尽くす勢いだったのに、空気を取り込み威力を増していきやがった。

 その様子はまるで生き物のようで、次々と地面を木々を――そして、俺たちまでを喰らい尽くそうとした。


 その勢いはまだ収まることを知らず、俺たちは現在……『赤い悪魔』から逃げ惑っている。

 そうしないと一瞬で消し炭を超えて、無に期してしまうと容易に想像できてしまった。


 だって、呼吸しているかのように吹き荒れている熱風だけで周囲の木々を焼き、俺たちの皮膚を焦がす。


「これ、流石の魔王幹部でも死んじまったんじゃないか?」


「……残念ながら生きていますわ」


「マジか」


 どれだけタフなんだ魔王幹部ってのは。そう思いながら、マジックポーションを受け取って飲む。

 やっぱりくそマズい。もうちょっと飲みやすい味にしてほしかったぞ、ジェイドさんや。


 ……そういや、


「アリス、大丈夫か?」


 今まで逃げるのに必死で心配することができていなかったんだが、果たして……。


「大丈夫なわけないでしょ! おにぃの嘘つき! 【ファイアボール】って言ったじゃん!」


 ……ふむ。どうやら元気でいられてるみたいだ。

 魔力枯渇の寸前までいってたと思うけど、体調も思ったより悪くないように見える。


 俺はくそしんどいんだけど、この違いはなんで? もしかしてアリスのやつ……慣れてる感じ?

 それ以外に考えられそうもないし……まあ、魔法学園なら魔力枯渇症なんて日常茶飯事なのかもしれないけど。

 

「言っておくけど、あれが本当の【ファイアボール】だ。俺たちが使っている【ファイアボール】は【プチファイア】っていう生活魔法みたいだぞ」


「はぁ? そんなの授業でも習ってないし、教科書にも書いてなかったんだけど!?」


「そんなん俺も知らんし」


「おにぃのバカ! この役立たず!」


 ……えぇ? なんでそこまで言われなくちゃいけないのかわからないんだけど……。

 俺はわからないことを知ったかしても仕方ないから、素直にわからないって言っただけなのに。


 ……しかし、妙だな。優秀な魔法使いを育成する魔法学園でも、魔法の衰退について習わないのか。

 これは考えすぎかもしれないけど、もしかしたら魔法が衰退したという事実がなかったことになってるのでは?


 だって、そうでしょ? その事実が周知のものなら、教科書にも載っているだろうし。


「……もしかして、魔族か?」


「え? なんの話?」


「魔法が衰退した原因は魔族なんじゃないかってな」


「勝てないから人間を弱体化させるために……ってこと?」


「あぁ」


 ……ただ、その場合――人間側に魔族と繋がってる奴がいないといけないはずだ。

 ……それとも、王国の中枢に魔族が入り込んでいるか。どっちの可能性も考えられるな。


 実際、アイギスが魔法学園の教師をしているし。


 まあ、原因を突き止められても、ただの一般人である俺にどうこうできるわけじゃないけど。

 ああでも……後でオリビアに話しておくか。国のことなら、王女の耳には入れておいた方がいいし。


 そう思っていると、


「ノロアさん」


 不意にジュジュが足を止めて、俺の名前を呼んできた。ただ、いつもと違って……どこか冷たい。

 今の俺なら何となくだけど、わかるような気がする。ジュジュは今――何かに怒っている。


 でも、冷静さを失っているわけではないようで、


「ごめんなさい」


 と、俺に対して謝ってきた。きっと、この謝罪は何かしらに俺を巻き込んでしまうからだろう。

 それは、今まで轟々と燃え盛っていた【ファイアボール】をかき消した禍々しい魔力で薄々ながらに理解できて、そして――。


「どうして『あの方』の命を代償にブチ殺したはずのあなたがのうのうと生きていますの?」


 という、明らかな怒気を孕むジュジュの言葉で完全に理解することができた。

 あぁ、なるほど。『あの方』が死んだ理由は禍々しい魔力の持ち主にあったのか。


 だからジュジュは1500年以上もそいつだけを呪い続けていたんだな……。


「何とか言ったらどうですの?」


「相変わらず威勢だけはいいじゃねぇの。何も守れなかった雑魚の分際でさぁ? また目の前でブチ殺されてぇの?」


 こうして因縁とも呼べる相手と再会したジュジュと現・所有者の俺の前に――そいつは姿を現した。


 背後に複数の――そして、全員が同じ顔をした幼女を連れて……。

 

 

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次回の更新は8月4日です!

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