18.新たな試み side祥太
あの後、洗脳が解けて大混乱に陥った中部地区は中部地区隊長自身がその場を落ち着かせてくれたらしい。というのも俺たちはその時にはもうすでにその場にいなかったからだ。彼女の洗脳が確実に解けたことを確認してからすぐに村からの信頼できる迎えの車に強制的に押し入れられてしまった。ここは私たちに任せてください、と言われて抵抗する間もなくばたんと車の扉を閉められたときは俺たち三人とも目が点だった。いや、そりゃあ俺たちだって疲れていたからとてもありがたかったけれど、さすがに自分たちがぼこぼこにした応接室付近の建物の後片付けくらいは参加するつもりだったんだが・・・。彼女も洗脳が解けた直後で疲れていただろうに、本当にすごいと思う。
ああ、あと洗脳された人たちはみんな正常に意識を保てていて何も後遺症はないらしい。洗脳されていた期間は実際に体を乗っ取られていて精神と体が完全に乖離されていた広瀬さんは例外としてみなちゃんと自分がどのように行動していたか記憶にあるらしい。所詮結界によって薄くかかった洗脳だ。思考誘導くらいの効果だったのだろう。
今回の敵は今までにないくらい強敵だった。こちらの能力がほとんど封じられてしまったのだ。それほどまでに”ジャミング”は厄介だった。次に戦うのがいつになるのかはわからないがそれまでに対策を講じておくべきだろう。さて、どうするか・・・。そう思って目の前のパソコンに目を向けると、あるものが目に映った。
・・・・・うん。なかなか名案じゃないか?ただこれをするとなるとかなり大掛かりになる。先に莉緒と昼斗に相談してから上に持ち掛けるか。思い立ったら即行動。俺はスマホから莉緒に電話を掛けた。
***
今日は休息日だ。3人ともかなり消耗が激しかったから各地区の調査はいったん中止にして3日間のお休み期間が設けられた。午前中は睡眠と今はまっているFPSゲームに費やしたが休息日と言ってもさすがに今後の対策について考えないとだめだろうと思い、午後はそれに時間を割く予定だ。次に3人で集まったときに俺だけ何も考えていませんでした、なんて事態になった時にゃ妖狐隊の1人として恥ずかしいし申し訳ない気持ちになっちまうからな。
prrrr・・・
『・・・はい。』
「あ、莉緒?今大丈夫か?」
『う゛ん。・・・ん゛ん。ごめん、大丈夫だよ。なに?』
けふ、と漏れ出た咳が聞こえた。あー。そっか。その可能性は考えてなかった。
「わるい。寝てた?」
『いや、寝れなくてぼーっとしてた。・・けほ、わりと重要めなやつ?』
「そうだな。今後の妖狐隊の活動について提案、というか。この後昼斗にも話そうと思ってるんだが、オンライン会議でも大丈夫か?」
『そだね、説明二度手間になっちゃうし。この後?』
「いや、昼斗にまだ連絡してねぇからまだわからねぇ。いつがいいとかあるか?」
『いや、特に。』
「了解。じゃあ、時間決まったら連絡する。そんじゃ。」
電話を切ってやっちまったと頭を抱える。最近はなかったからすっかり忘れていた。昔、大規模の戦闘の後莉緒は必ずと言っていいほど体調を崩していた。熱がでるわけではないが毎回咳がでて呼吸が苦しそうな姿を見てなにかしてやれることはないのかと医者にいろいろ聞いて回った記憶がある。結局背中をさすったり飲み物を準備するくらいしかやれることはなく、そもそも莉緒も弱っている姿をあまり他人に見せたがらないからたいていは自室でやり過ごしてしまう。いつも歯がゆい気持ちにさせられていたが次の日にはけろっと復活していることも多くてそこは安心していた。
今回はダメだったみたいだ。あの調子じゃあ咳でうまく寝付けなかったのだろう。声に覇気がなかった。この会議が終わったら速攻で寝てもらおう。なんなら昼斗と莉緒の部屋行くか?どうせ申し訳ないからとか言ってお手伝いさんに看病はいらないとか言ってるんだろうし。家族のほうは・・・まあ、考えるだけ無駄だな。とりあえず早く昼斗に連絡とるか。俺は再度スマホを手に取った。
***
「それで?今後の僕たちの活動方針についての提案があるって聞いたけど。」
昼斗の言葉にうなずく。
「ああ。今後、またこの前のアガペーが俺らの前に現れるだろう。だが向こうは俺らの能力に何か対策できたとしても、俺らは”ジャミング”に対抗する手段が俺の”情報解析”しかねぇ状態だ。もちろん俺も”ジャミング”に対する対策はするが、それを踏まえても戦力が足りない。」
莉緒ならチートすぎる”歌”の能力で何とか出来てしまいそうな気もするが、さすがに”ジャミング”の効果を打ち消すほどの”歌”となれば難易度も上がるし、使用する妖力も莫大になるだろう。それに昼斗はどうあがいても”ジャミング”に対抗するすべがない。なら、どうするか?
「そこで、俺は妖狐隊に新たな戦闘員を追加することを提案する。」




