↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第3章 戦国時代編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/63

第62話 織田殿はどのような人物だと思ったか

武蔵・大会議室。


北沢は全員を見渡した。

「まず——藤林殿、津田宗伴殿と清兵衛殿という、良い患者を見つけていただき、ありがとうございました。おかげで、思いがけない展開になりました」


藤林は頭を下げた。

「才蔵たちの働きでございます」


北沢は続けた。

「実は——その治療の場で、大きな出来事がありました。村上先生から、改めてみなさんに話していただきましょう」


村上が、津田宗伴の屋敷での唐瘡からかさ治療についての報告を始めた。

「九鬼家の清兵衛殿の一回目の治療が、無事終わりました」


「それは重畳」

藤林が頷いた。


「ですが——治療の場に、思いがけない人物が来ていたのです」


「思いがけない人物、とは」


「清兵衛殿を心配してついてきたという、作田甚右衛門なる人物が同席していました。その正体は——織田信長本人でした」


藤林の目が、大きく見開かれた。

「まことでございますか」


「はい。清兵衛殿の治療の後——織田殿ご自身にも、体調を気にされるようなご様子が見受けられましたので、診察を申し出ました」


藤林が身を乗り出した。

「織田様の体調は、いかがでしたか」


「その前に、少し肝を冷やす場面がありまして」


村上が続けた。

「診察を申し出た際、隣室の護衛の方々が動きかけたのです。無礼者と斬られるのではと、本当に心臓がどきどきしました」


桐山が補足した。

「織田殿ご自身が制してくださり、事なきを得ました」


北沢が言った。

「それは大変でしたね」


村上は頷いた。

「はい。話を戻しますと——診させていただいた結果、砒素ひそ中毒であるとわかりました」


藤林の表情が、険しくなった。

「砒素——それは、まさか」


北沢が引き取った。

「藤林殿からご報告いただいた、安土城での毒の件です。あれは、砒素だったということになります。この時代では『砒霜ひそう』と呼ばれる毒です」


「では——某が見た、あの女中が渡していた粉こそが」


「おそらく、そうでしょう」


藤林は低く続けた。

砒霜ひそうという毒は、忍びの世界では、古くから知られております。無味無臭で、少量ずつ盛られれば、まず気づかれません」


藤林は続けた。

「それを使ったとなれば——甚兵衛の報告にあった通り、忍びの仕業と見て、まず間違いないでしょう」


北沢は頷いた。

「他の皆さんには、初めて聞く話だと思いますが——」


そう前置きしてから、北沢は改めて、安土城での毒の目撃と、今回の信長との面会・診察結果について、経緯を順に説明した。


村上が、砒素ひそ中毒だと気づいた後のことを説明し始めた。

「その場ですぐに、織田殿へお伝えするのは危険だと判断しました。九鬼殿、清兵衛殿、護衛の武士も同席していましたので。織田殿を廃そうとする勢力に——我らというより、伊賀の方々が狙われる恐れがありました」


桐山が感心したように言った。

「見事なご判断だったと思います」


村上は続けた。

「そこで——紙に『毒 調査』とだけ書き、対処法を記したものに見せかけて、織田殿に渡しました」


「織田殿は——一瞬目が鋭くなりましたが、何事もなかったように紙を折りたたまれました。そして『また連絡をする』と言い残し、足早に安土へ戻られました」


藤林はしばらく黙っていた。

やがて、静かに言った。

「一を聞いて十を知るお方です。安土に戻られたら——すぐに動かれるでしょう」


北沢は桐山の方を見た。

「桐山、織田殿はどのような人物だと思ったか」


桐山はひと呼吸おいて答えた。

「いらいらしたり、機嫌が悪くなったりというのが、砒素の影響であるということであるなら——本来は、身分の境なく気さくに人と交わる方だと思います。これはと見込んだ人材は、思い切って登用する。頭の切れも良く、行動力・判断力も——申し分ない人物と見ました」


北沢は小さく頷いた。

「村上先生——砒素ひそ中毒になると、どうなるのですか。初期から末期まで説明してもらえますか」


村上は順に説明した。

「初期は——食欲不振・倦怠感・腹痛・下痢が始まります。この段階では気づかれないことが多いのです」


「次第に——手足のしびれ・頭痛・体重減少が現れます。皮膚に色素沈着が出始め、爪に白い線が走ります」


「さらに進むと——肝臓・腎臓が障害を受けます。神経系への影響で気性が激しくなり、判断力が低下します」


「末期になると——臓器不全・意識障害・死に至ります」


「織田殿の現在の状態は——中期から後期の境目といったところです。これ以上放置すれば——判断力の低下が進みます」


会議室が静まり返った。


桐山が口を開いた。

「織田殿が——我らが期待するような人物だったとして、我らの力をどこまで見せますか」


北沢は少し考えた。

「織田軍とともに戦うよりは——我らは別働隊として、人知れず戦う方がいいかもしれない。たとえば我らだけで、能島村上水軍の本拠地に乗り込み、気づかれぬまま、船をすべて沈めてしまうとか」


桐山が続けた。

「別働隊として動いたとしても——なぜ、どうやって沈めたのか、必ず説明を求められると思いますが」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。