プロローグ
第21爆撃集団。B29操縦室。
エンジンの唸りが、機体全体に響いていた。
闇の中を、編隊は静かに北上し続けていた。
機長が言った。
「今夜の爆撃で、何万人が死ぬか分からん。しかし——戦争を早く終わらせるためだ」
副操縦士が笑って答えた。
「観光旅行みたいなもんだぜ。東京の防空能力なんて、ないに等しい」
そのとき——航法士が顔を上げた。
「東京まで約百キロメートルです」
「爆撃準備——」
***
大和・発令所。
「レールガン、撃て」
閃光が走った。
音はほとんどなかった。
五秒後。また閃光。
また五秒後。また閃光。
モニターの中で、B29の編隊が先頭から順に消えていった。
***
B29操縦室。
「先頭の一機が——突然爆発したぞ」
誰も何も言えなかった。
また一機。また一機。
「五秒ごとに一機落ちていくぞ!」
「音がしない! どこから撃ってくるんだ!」
モニターの中で、B29編隊が乱れ始めた。
一機が大きく旋回した。
編隊がバラバラになり始めた。
***
昭和二十年三月十日。
——そして、天正六年十月。
***
天正六年十月。
燧灘。深夜。
大和は燧灘に向けて潜望鏡深度で進んでいた。
桐山がモニターを見つめた。
「まもなく燧灘——到着します」
「浮上する。ただしセイルだけを水面に出した状態で進め。来島まで——およそ何キロだ」
「約十キロメートルです」
「よし——レーダードローンを上げろ。係留している船を確認する」
ドローンが、勢いよく上昇し、移動した。
モニターに——能島の港が映し出された。
篝火の光の中に、大型の船影が並んでいた。
「安宅船が——三隻。関船が七隻。全部で十隻です」
「照準——完了」
「撃て」
レールガンが光を放った。
轟音とともに——安宅船の船体が、真っ二つに割れた。
次の瞬間、船が傾き——みるみる海に沈んでいった。
「一隻目——沈没確認」
「次——撃て」
また轟音。
二隻目の安宅船が——火柱を上げて沈んだ。
港の見張りが叫んだ。
「な、なんだ——!」
「何が起きた——!」
見張りたちが右往左往した。
しかし——何も見えなかった。
暗い海に——光一つなかった。
「三隻目——撃て」
轟音。
三隻目の安宅船が波間に消えた。
「続けて関船を狙え」
七隻の関船が、次々と撃沈された。
港は——炎と水しぶきで満ちた。
田村が言った。
「能島——完了」
村上武吉は、港の惨状を見つめていた。
昨夜まで並んでいた安宅船も関船も——一隻も残っていなかった。
残骸が、ゆらゆらと波に揺れていた。
***
これは——ある原潜と乗組員たちの物語。
二十世紀に生まれ、太平洋戦争、戦国時代へと転移し、未来を変えようと必死に奮闘した者たちの物語である。




