第78話ー思考共有(リンク)の練習ー
ちょっと遅くなりました!すいません!
ーー縁が煙管の煙をくゆらせていた頃。
弟子3人は縁の部屋から1番離れた、ヤオの部屋に集まっていた。
…思考共有の練習かつ、師匠の過去についてどう思うか話す。名案だね。…
ヤンガは慎重に魔力に言葉を乗せて2人に送る。
…いい感じだ、ヤンガ。それにしても婆様の小さい頃を知っていたと言うから、長生きしていることは知っていたけど、4000歳以上とは恐れ入った。…
ヤオが2人に共有する。
…出生についてはもう絶句よね。戦争については習ったことはあるけれど、まさか生き証人が目の前にいるなんて複雑な気持ち。…
とユエがため息を着いた。
3人の頭の中には、縁が語った膨大な情報と、それをたんたんと語る姿が、非日常的に映った。そして、焼き付いて、離れなくなっていた。
…師匠は、こう、普段は明るいし、なんかいたずらっ子みたいな所もあるのに、戦闘になれば冷酷無比。このギャップが変だなって思ってたんだ。…
ヤンガが真剣な表情をして共有する。
…あぁ、俺もそれは思ってたんだ。師匠は、感情が後から加わったんだと思えば、チグハグさもわかる気がする。…
とヤオは答えた。
…きっと師匠の"恩人"が、No.5(ナンバーフィフス)を"縁"に変えたのね。世界規模の人間兵器を変えた人って、いったいどんな人だったのかしら。気になるわ。…
ユエが顎に手をやって考え込む。
…それに、混沌の夜明け(ダウンオブカオス)を起こした、No.13(ナンバーサーティン)は、依然行方不明。ちょっと怖いわね。…
と付け加えた。
…どっちにしろ、戦争が起こったのは4000年前、師匠も連絡がつくナンバーズと、連絡がつかないナンバーズがいるようだし…。師匠レベルの超人があと19人いるわけだ。世界は広いな。…
とヤオが呟くように共有した。するとヤンガが、
…ヤオとユエも世界の均衡を守る陰陽の化身として、同じレベルの強さを求められることになるよね。…
と不安そうに共有した。
…それは仕方ないわよ。そう運命られたんだから。琉球王国でも何が待っているか分からないし、まぁ、おおよそ検討はつくけれど。…
とユエは共有した。
…え?ユエは琉球で何が起こっているのか想像が着くのか?…
ヤオが驚く。
…あのね、私たちの封印の廟は龍脈穴の上に立ってた。それに昔習ったでしょ?日本を始めとするアジア圏には龍脈が密になってるって。その中でも琉球王国の龍脈穴は有名じゃない。多分そういうことよ。…
とユエは冷静に返した。
…なるほど。龍脈穴絡みだと話は早いね。日本にも龍脈や龍脈穴が色々あるし…。…
とヤンガが返す。
…龍脈は俺たち蛟にとっても大切な場所。それが乱れたとなれば天変地異に匹敵する。そこまで話が大きくなっていないのは琉球王の手腕によるものか…。…
とヤオは眉をひそめた。
…まぁ、実際は行ってみないと分からないから。大したことないことを祈ろう。…
とヤンガが月を見上げた。
…そういえば次に行くのは福州だってね。そこから台湾に渡るって。…
ユエが話を変えた。
…師匠はそう言ってたな。福州は大きな都市だ。俺たちみたいな田舎者は浮くだろうな〜。…
とヤオが珍しくボヤいた。
…仕方ないわよ。だって先月まで封印されてたのよ?私たち。流行がどうとかいう話じゃないわよ。…
とユエも若干ボヤいた。
…実は僕は行ったことあるんだよね。父さんと母さんと旅をしていた頃だけど。…
とヤンガ。
…ええー!そういえばヤンガのお母さんって、産婆さんだったのよね?福州はどんなところ?…
とユエがワクワクした様子で尋ねる。
…んー、人がいっぱいいて、海沿いだから塩気を含んだ風が吹いてるかな。大きな街だから、田舎から出てきた人も大勢いて、"やーい田舎者〜!"みたいなことはないよ。よっぽど馬鹿なことしない限りね!…
とヤンガが記憶を手繰り寄せる。
…海沿い、そうなれば海鮮料理!!楽しみだ!!…
ヤオは早くもまだ見ぬ海鮮料理にウキウキしている。
ーー縁はふと煙管を止める。
……まだ起きているな、あの3人。
小さく笑い、再び煙を吐いた。
…そういえば、明日は師匠が、この宿の厨房を借りてレーションの作り方を教えてくれるって話だったよね?…
とヤンガがヤオの、にへっとした顔に苦笑する。
…そうそう!ドライフルーツとか買い出しからやるって言ってたね。楽しみ〜。…
とユエが応じる。
…でも俺料理ほぼしたことないんだよな。塩して焼くとか煮るぐらいしかできないから、不安だ。…
とヤオは一抹の不安をのぞかせる。
…そういえば、師匠は何でこんなに料理ができるようになったんだろう?これも"恩人"繋がりなのかな?…
とヤンガがハッとした様子で共有する。
…明日聞いてみようか。師匠の料理について!きっと面白い話が聞けると思うんだよね!…
とユエは提案した。
…いいね!やぶ蛇というか、やぶ蛟にならないことだけを祈ろう!…
とヤンガは茶化した。
「「ふふ。はは。」」
ヤオとユエはこの微妙なジョークが、微妙すぎて声に出して笑ってしまった。
「そんなに笑わないでよ!!僕だってそれなりに場を盛り上げようとしたんだから!」
と、ヤンガも声に出して言った。
「はー、でも3人が向き合って、一言も発せずに頷いたりニヤニヤしたりするのは、だいぶシュールだわ。」
とユエが笑いながら言った。
「確かに。誰かに見られてたら、気持ち悪い集団だよな。」
とヤオが言った。
「いい時間になったし、今日は解散する?」
ユエが提案する。
「そうだな。」
「そうだね。」
ヤオとヤンガが返事をする。
そうして弟子3人の秘密の会議は解散となった。
――離れた部屋で。
縁は、
「いい弟子を持ったな…。」
と煙管を置いた。
弟子たちそれぞれが、それぞれの想いを抱えている。
ー恐れ。
ー戸惑い。
ー驚き。
だが——
それでも三人は知っている。
あの人は、ただ戦争を生き抜いた兵器ではなく、ただの1人の"人"だということを。だからこそ、三人の決意は変わらない。
これからも、縁を師と仰ぐ。
それだけだった。
——そしてその夜、三人はそれぞれの部屋で、静かに眠りについた。




