第106話ー剣潭山《ジェンタンシャン》②ー
なかなか筆が進みませんでした 汗
頑張ってこれからも書きます!
日が落ちて、木々の影が色濃く焚き火に照らされる。早々に夕食のボリューム満点のサンドウィッチを食べると、縁はツーマンセルを組む。白曜とヤンガ、アオイとヤオ、黒曜とユエ、縁とウスハ。夜明けまで焚き火を守りながら、それぞれ夜警を2時間程受け持つ。
縁のデバイスで2:00頃。
「師匠、ししょう!森が変です!」
ユエが縁に声をかけた。隣のテントには、黒曜が頭を突っ込み、男子を起こしている。
「そんな気配がしていた。…やっと来たか。」
縁は寝ていたとは思えない様子で、テントから出る。
階段の広間は結構な広さがある。その中心で、焚き火を炊いているが、その灯りの届かぬところに、妙な存在感のある木が立っていた。 木には美しい月下美人のような花が、垂れて咲き乱れている。獲物を誘う甘い芳華が、不自然な柔らかい風に乗って届く。
「あの木、いつの間にか紛れてたんです。」
ユエはその木を見つめて言った。ヤオとヤンガも出てくる。縁は、
「そうか。だが…、囲まれているな。」
柄に手を置いて言った。
「えっ?!囲まれてる?!」
ユエは驚愕の表情を浮かべ、周りを見渡した。それまで見張りを担当していた、ヤオとヤンガも顔を見合わせる。
「でも、白曜様も、アオイ様も、何もおっしゃいませんでしたよ?!」
とヤオが困った顔をする。
それに対し白曜は、
「我らは気づいていた。敵をできるだけ引き付け、一網打尽にするのが良策だと、主は考えておられる。今までもそうであったのでな。そなたらに気づかれたら、トレントどもが出てこん可能性があった故、言わなんだ。」
と、辺りを睨みつけながら言った。アオイが、
「それにしても、うじゃうじゃおりますわね。」
と周りを見渡す。
弟子達は、改めて周囲を見渡した。すると、1本また1本、明らかに木ではない異質な、"魔のもの"が闇夜に浮き上がる。
ーいつの間に…?!!ー
弟子3人は戦慄した。気配もなく、音もなく自分たちを包囲していた、狂華の暴樹。花が咲いているのは1本だけだが、幹に目がギョロギョロとしている木が闇夜で一行を凝視していた。
…3人のこめかみに汗が伝う。
「狂華の暴樹(以下トレント)を、各自で倒せ。剣潭山の生態系を壊す訳にはいかない。全員、戦闘行動開始!抜かるなよ!」
縁は村雨丸を抜き放つと、1番目立つ大きなトレントに向けて走り出した。同時に白曜が風の刃を纏って、別のトレントに向けて走り出す。弟子3人と一騎当千の使役獣達が、トレントに襲いかかっていく。
「ウオオオォ!」
花を咲かせたトレントが声をあげると、包囲したトレントから、不気味な蔓が一行に向かって一斉に伸び始めた。
ヤオが寸勁で伸びてきた蔓を粉砕する。ユエがまとわりつく蔓を、暗器でまとめて両断する。ヤンガが風魔法で、複数の蔓を切れ切れにした。
「ヤンガ、お前の魔法で蔓をまとめて始末してくれ!俺とユエがその後トレント本体に襲撃する!」
ヤオが叫びながら、ユエとともにヤンガの背後を固めた。
「わかった!じゃあ昼間の氷雨を使う!それまで引き付けて!」
ヤンガが菩提樹の杖を握って詠唱を始める。
「我ここに命ずる…」
明るい昼間とは違う真夜中、更に前方だけでなく囲まれているという劣勢の中、ヤンガの脳内で魔法はより精密に、より効率良く最適化されていった。
ーーそして、縁と白曜達使役獣達を除いた範囲に、
「…空気よ凍てつき地に落ちよ!氷雨!」
昼間より広範囲に、より威力の強い氷雨が降り注いだ。
トレントが伸ばしていた蔓が、"ブツブツブツブツ!"と細切れになる音が響いた。周囲のトレント達も氷雨をあび、
「オォ、オオォ…」
と声を上げた。その隙を見てヤオが一抱えもある幹に寸勁をあてる。
「穿内崩!!」
幹が爆散してトレントが一体死んだ。一方ではユエが赤い瞳を光らせて、
「ふふふっ。魔石はここね!!」
と暗器を幹に力いっぱい差し込んだ。パキッと微かに魔石が割れる音がした。
「くひっ!」
とトレントは倒れた。
ーーしかし。
「ちょっと!キリがないわね!一体何体いるのよ?!」
ユエはトレントの魔石を狙って一撃離脱を繰り返している。ヤオも新たに伸ばされた蔓を掻い潜りながら、トレントを爆散させているが如何せん、敵の数が分からない。
ー龍穴の近くのせいで、魔力探知が上手くいかない…!!ー
ヤンガは菩提樹の杖を地面に突き立て、探査を続けているが額に汗を浮かべている。
「お前たち、私の使役に任せてこっちに来い!!」
突然、縁から鋭い声がとんだ。弟子3人は即座に縁の背後に走り寄った。
「師匠!どうしたんですか?」
とユエが尋ねる。
目の前には、幹に無数の目玉が浮かんでいるトレント。月下美人のように見えた花は、硬質で、花びらは鋭く焚き火を照り返し、無機質さを醸し出している。極めて不気味なトレントである。
だが、向かって右側の枝が切り落とされて、花もろとも転がっている。
「ーー私の魔力探知によると、こいつが親玉だ。周りのトレントと、根で繋がっている。こいつさえ倒してしまえば、他の個体は魔石の力が失われるはずだ。」
縁は油断なく村雨丸を構え、トレントのボスを見据えた。
「私はこのボスを倒す。ボスを守ろうと、下っ端が必死でちょっかいかけてくるはずだ。お前たちには私の背後を任せる。もちろん我が使役たちもいるから、緊張する必要は無い。ーー任せても、大丈夫だな?」
縁は前を向いたまま、弟子たちに語りかけた。
「「「任せてください! 」」」
3人の声がピタリと揃った。
縁はニヤリと口角を上げると、
「作戦開始!!」
と走り出したのだった。
今夜のクライマックスが、ここに始まろうとしていた。




