第4話 今日から始める
妄想の産物第4弾。ゆうかのモデルは私の友達です。
それから1時間ほど色々な話をした。
その中でわかったのはゆうちゃんは35歳であること。以前は会社員だったこと。このお店は居抜きで、5年前に自分が始めたお店であること。そして、
「次の21日でありさちゃんが亡くなって5年目か。」
婚約者がいたこと。
このお店はそのありささんの夢だったということ。
そして、まだゆうちゃんはありささんを愛しているということ。
「ありささんってどんな方だったんですか。」
少しでもゆうちゃんのことを知りたくて、聞いたって辛くなることはわかっているのに聞いてみる。
皆さんが思い出すように斜め上を見上げる。
「一言でいうと大和撫子っていう感じだな。」
田中さんが初めに口を開く。
次いで山口さんが
「そうですね。淑女っていう感じですね。」
と言う。
最後に斎藤さんだがトドメを刺す。
「婦女子って感じですかね。」
婦女子って漢字違いだよ。ちくしょー…
腐女子からノリと勢いをとったら何も残らないのよ…。
とりあえずありささんについてはもう触れないようにしよう。
…私は過去形で聞いたのに、誰1人過去形で答えなかった。
ありささんはまだ過去の人になれていない。
残っていたカフェモカを一気に流し込む。もう冷めきっていた。
「また、来てもいいですか?」
これで終わりにしたくない。
私は諦めが悪いんだ。
私は大和撫子でも、淑女でも、婦女子でもないけど、そんなことは関係無い。
「あぁ、もちろん。いつでもおいで。ただ、火曜と21日は定休日だから気をつけて。」
21日。
毎月その日はありささんのことだけを考えているのだろうか。
私がありささんみたいになれれば振り向いてもらえるだろうか。
扉を開けば青空が広がっていた。
「では、また‼」
一歩踏み出す。水溜まりがパシャンと跳ねた。
ここから、今日から始めよう。
私、婦女子を目指します‼