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【二章開始】狂信者は今日も刈り取る~畜生以下の存在には最期に夢を魅せましょう~  作者: いさな
1章.廃棄少年は神からの救いを経て信徒となる

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第7話 狂うほどの熱と反復

 川の水を飲んで悶え苦しんでいた俺は、何故か洞窟の前まで戻ってきていた。


 外はまだ明るく、太陽からの暖かい光は俺の身体を照らしている。


 まるで、時間が巻き戻ったみたいに。


「おかしいだろ......じゃあ、あの川の水を飲んだときの高揚感は、その後の絶望的な熱さは俺が感じていた幻覚だとでもいうのか?」


 いや、そんなわけがない。必死に熱さを逃がすように魔力操作をして身体強化を行った。あの時の生きるという意識とそれでも覆すことが出来ない絶望は現実のものだったと断言できる。


「じゃあ、なんで戻って来たんだ......?」


 意識が途切れる寸前の時間を思い出す。熱さを逃がそうと、地面にゴロゴロとのたうち回りながら『痛い、熱い、辛い』という感情だけが頭の中を埋めていたあの時......最後に聞こえたのは確か、『殺した貴方は夢を魅る《メメント・ソムニス》が発動します』だった気がする。


 違ったとしても記憶に少しでもあるのなら確認する価値はあるだろう。


「ステータス」


【固有】殺した貴方は夢を魅る《メメント・ソムニス》

 ・ 殺した対象に夢を見せ、夢のなかに入ることができる

 ・ 夢のなかで自由になる


「殺した対象の夢に......殺した?」


 この時が戻っているように感じている状況も、夢の中だとしたら説明がつく。ただ、もしここが俺の夢のなかだとして俺は誰を殺したんだ?


 俺の行動は水を飲んで苦しんでいただけ。考えられる可能性としては水にいた微生物や地面にいた虫?でも、そんな考えられる力が無いほど小さいものが夢を見るとは考えにくい......


「となると、まさか俺か?」


 俺はあの時に死んでいて、原因が自ら水を飲んだことで魔力に耐えられ無かったという行動が自死と判断されたとか?


 とにかくスキルが発動した理由ははっきりとしないが、俺は夢の中にいるという仮定で今のところは良いだろう。


「今いる場所が夢の中だとして、ほぼ死んでいるような俺に出来ることなんてあるのか......?」


 夢は所詮、夢。今の俺に出来ることなんて......


「いや、待て、『夢のなかでは自由になる』......ということは、無制限で鍛えられるということか?」


 夢はどこまでいっても夢なので筋トレをしたところで現実の身体に筋肉が付くことはないだろう。だが、技術だけは持って帰れる可能性はある。


「俺には光魔法もある......ここで魔力操作と光魔法を勉強して使えるようになれば、死にかけの身体を復活させることも可能なはず......」


 ブツブツと考察を口に出しながら顎に手を当てながら考えて、思考を整理させて行く。


 いつ俺が夢から覚めるかもわからないし、元の身体がどういう状態かもわからない。でも、最善の可能性と最悪の可能性があるなら俺は最善の可能性の方を掴みたい。


 夢の中での技能を現実へと持ち帰れたなら、俺が生き残れる道がある。


「纏めよう、1は魔力操作の精度をあの強烈な魔力熱を抑えられる程度まで上げる。2に光魔法を習得、及び即時に回復できるような魔法の創造。3にこの夢からの脱出、これは夢魔法に可能性があるかもしれない」


 幸い、俺にはシャーマ様から授かった魔法への知識がある。魔法の深淵に至るほどのものでは無いが、初歩的な知識があるというだけでひとりで生きていかなければいけない現状では凄く助かる。


 俺は現実と同じように動き始めるのではなく、その場で座って魔力貯蔵器官に手を当てる。まずはゆっくりと全体に流すように魔力を出していき、身体全体が熱を持つ程度まで強化していく。自分が耐えられる限度を理解することから始めて、少しだけ許容量を超える程度の魔力を流す。


 その瞬間、急激な熱が俺の内部から発生して身体が悲鳴を上げる。


「ぐ......!?こ、ここが今の限界......か。だが、少しずつなら上昇幅を上げられるはず」


 痛みは感じるがそれに耐え続けることしか、俺には出来ない。ここは夢の中、死の概念が無い以上、どれだけ辛い思いをしようが死にそうになろうが俺の心が折れない限りはひたすらに鍛えられるはずだ。


 ――それから俺は身体が限界を訴えた魔力量を流し続けた。砂粒程度の進みだとしても成長が実感できるまで己の限界まで何度も試す。


 夢の中では俺が望めば空腹感も発生せず、時間も進まない。身体から感じる魔力の熱さだけがまだ俺が生きているということの証明となっている。


 何度目かわからない程迎えた限界の瞬間、俺の脳裏にひとつの情景が浮かんできた。それは楽しかった親父との思い出でもなく、復讐への恨みでもない。


 暗い洞窟のなかで何も出来ない俺に、シャーマ様が力を授けてくれたあの景色だった。


 だが、それでいい。今の俺に必要なのは心の支えであるシャーマ様だから。シャーマ様さえいればそれで......


 すでに頭の中はシャーマ様の姿しか映っていない俺の思考を現実へ戻すかのように、無機質な声が聞こえてきた。


『魔力操作の習熟を確認。限界を超えたため、魔力操作Ⅳと特殊スキル魔力の解放を獲得しました』


 ――俺は今何を考えてたんだっけ。


「......まあ、いいか。それよりいきなりⅣか、あとは魔力の解放......ステータス」



【種族】魔力操作Ⅳ

 アーツ〈肉体強化・外部放出・魔力形成・属性エンチャント・魔力粒子化〉


【特殊】魔力解放

 ・体内の魔力を全て解放することで限界を超えた力を発揮する

 ・魔力が無くなっても動けるようになる


 魔力操作の熟練度がⅣになり、アーツというものを覚えたらしい。シャーマ様から頂いた知識によると、スキルは成長するほど自由に扱えるようになるが、それはこのアーツというものが増えるからだとか。


 そして、急激な成長や常人以上の成果を残した際に特殊スキルが手に入ることがあるとも記憶している。


 魔力操作の成長も、特殊スキルを得たことも俺がこの夢のなかで文字通り死に物狂いで得た結果ということだろう。


「なるほど......夢の中で限界以上の修練をすることでここまで強くなれるのか。ただ、現実では絶対に同じ鍛え方は出来ないな。本当なら何度も死んでいただろうし」


 死にそうになっても精神が壊れなかったのはシャーマ様が見てくれているかもしれないという安心感があったからだろう。俺は元々強い精神力を持っている訳じゃない。


 でも、誰かが俺の頑張りを見てくれているなら。それだけで生きたいと前を向ける気がする。


 「これなら俺は強くなれる。この程度の熱や苦痛では俺の心を折ることはできない」


 どれだけ無様だろうが、滑稽だろうが、最後に立っていた者が勝者だ。


 ========


【作者からお願い】


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