第22話 二人三脚
レザールとレオンはクランベラ教会の応接室から出て聖堂に入った。たった今ルイから仕事を受けてその現場に向かおうとしているところだ。二人のすぐ後ろにルイもいる。見送りの為だろう、特に何かを言う訳でもなく後ろから付いてきていた。
「おいエリス行くぞ」
レザールはエリスに呼びかけるも返事は無い。隣にいたレオンに肩を叩かれて指差された方を見ると、エリスと大差無いくらいの少女と会話していた。会話というよりは、エリスが一方的に喋ってそれに相槌を打っているだけだが。それでも年相応に楽しげな雰囲気なのは遠目でも分かる。視覚情報だけで言えばエリスのみが。
エリスの横にいた少女がレザールたちに気付く。どこかで見たピンク掛かった長髪に黒のインナーが入っている。少女は挨拶のつもりかレザールたちに駆け寄った。基本無口なのだろう、言葉は出さず会釈だけする。レザールたちもそれに倣って会釈を返す。
レザールの背後にいたルイが背中から顔を覗かせると少女に呼びかけた。
「おや、アイラさんではありませんか。息災のようでなによりです」
「どうも。仕事を貰いに来た」
レザールはルイとアイラと呼ばれた少女の顔を交互に見る。雑談は無く用件だけ話している様子から見て、二人はビジネスライクな関係だと言える。
「アイラちゃん! 一緒に仕事行かない? 」
エリスが目を輝かせている。仲の良い同性の友達と一緒にいたいのはこの年頃からすれば当然だ。だが、そう都合良くはいかないのが社会だ。
「お気持ちは理解できますが、神の落とし子の人数の都合上、近い場所には行かせられないのです。余裕があれば可能なのですが」
依頼主であるルイの言い分にエリスはがっくりと肩を落とす。
二人の依頼書に書かれている場所を見ると、アイラは南部エリアのコルチカムライブラ県ピンクストーク市とあり、一方レザールは中央部エリアのクレマチスジェミニ県オレンジスワロー市と書いてある。ピンクストーク市は現在地から南側で、オレンジスワロー市は北側な為、行き先は真逆という事になる。
レザールはアイラを見て考え事をしていた。初対面では無いように感じているのだ。
「どっかで会わなかったか? 何かしら喋った気がするが」
「覚えておりませんか? 彼女は両声類型、準男爵位の悪魔討伐の時に駆けつけてくださった方です」
「ん。姓はリト、名をアイラと言う」
レザールは納得した様子で名乗り返す。当時は反動で視界がよく見えていなかった為、見た目で判断出来なかったのも無理もない話だ。
自分と隣のレオンの紹介も済ませてレザールたちはオレンジスワロー市へ向かう。しかしエリスは名残惜しそうにアイラにベッタリ引っ付いている。
「……ほら行くぞ。早くしねぇと終わる頃には真っ暗だぞ」
溜息交じりにエリスを諭しているが、遅くなる事に忌避感を覚えているのはレザール自身だ。早く事務所に戻って早く寝て休みたいということなのだろう。
エリスの後ろ襟を掴んで引きずって連れて行く。さしずめ、散歩終わりに帰宅拒否をしている犬のようだ。その様子をアイラとルイは何事もなかったかのように見送っていた。
「……珍しいですね。彼女のこと、苦手なタイプかと思っておりました」
ルイは視線を聖堂の扉へ向けたまま問うた。エリスとアイラは性格だけでいえば対極に位置する。端から見て合わないと思われるのも不思議ではない。アイラはうーんと考えた後、ポロッと本音らしき言葉が零れた。
「……あの子が人懐っこいだけだと思う」
小声だったもののルイにはしっかり聞こえた。ルイはフッと息を漏らして何事も無かったかのように会釈をして聖堂から戻って行った。
教会の廊下に出ると背後から声が掛けられた。驚くことは無い。何しろずっとそこに居たのだから。修道女でも修道士でも無く魔力感知に引っ掛かる人物、神の落とし子であるアズマだ。廊下の壁に凭れて立っている。
「待ってたよぉ、ルイちゃん。早速報告といこうかと思ったけど……なんだかご機嫌だねぇ? 良いことあった? 」
「何でもありません。早く本題に入りなさい」
ルイは若干頬が赤くなったのを咳払いで誤魔化した。照れ隠しのつもりだろうが、全然隠せておらずアズマはニヤニヤしている。そんなアズマを赤い顔でキッと睨みつける。体感で周囲の気温が下がったように身震いをするが、これは決して気のせいでは無いのだろう。
「ちょーっと笑っただけで恥ずかしがり過ぎだよぉ。ルイちゃんはもっと笑った方がいいと思うけどなぁ」
おちょくっているのか本心でそう助言しているのかは恐らく本人にしか分からない。眉尻が下がりやれやれと肩を竦めて廊下の窓から外を眺める。
少しの沈黙の後、ようやく平静を取り戻したルイにアズマが話を切り出す。この教会に顔を出しに来た理由の一端だろう。顔は窓の外に向けたまま語る。その顔はいつになく真面目な表情をしていた。
「悪魔側が戦争を切り出したからか、出現区域外での遭遇率が上がった。そろそろあの子たちにも教えるべきなんじゃなぁい? 戦い方とかさぁ」
「……確かに此方の担当振り分けでは厳しくなりつつあります。ですが、反応は追えますので、まだ今のままをキープしてください」
ルイの返答にアズマは溜息を漏らす。期待した返答ではなかったのが伺える。
「幸い今は犠牲無く両方狩れるボクらと他が半々でバランスは取れてるからいいけどさぁ、悪魔側は兎も角誰かががいなくなったとしたら一気にバランス崩れるよ」
アズマの言葉に黙り込む。倒す敵の種類によって分担させるのも効率で言えば悪くは無い。一方を狩るのに特化していればその分慣れで仕留めるのも早くなる。神の落とし子八人全員が存命だからこそ現状問題なく回せられるものだ。だがしかし、敵がお行儀よく特定区間内にしか出現しない訳では無い。
「悪魔は案外約束事に律儀だからいいけどさぁ、一方は違うじゃない? だからボクとルイちゃんが両方を担当してる訳で。アイラちゃんは知った上で担当外だけど、グランくんとナデナちゃんはそうじゃない。まあその二人はそれで問題ないけど、実質悪魔担当になってるレザールくん、クリスくん、ジャックくんには教えた方がいいと思うねぇ」
「……そうですね。ご尤もだと存じます。ですが、戦い慣れない相手との戦闘は死亡率が上がります。僕はそちらの方が深刻に捉えておりまして」
アズマは煮え切らないルイの反応に腕を組んで考える。ルイの言い分も分からなくはないけどと言った、少し困った様子で首を捻る。
職業柄神聖生命体に詳しいルイと、ルイやその周囲の教会関係者等から情報を仕入れて詳しくなったアズマは神聖生命体の種類を問わず狩る事は造作もないことだ。だが、悪魔しか狩って来なかった人物が他の種も狩れと言われてすぐに順応出来るとは限らない。それから実力者が呆気なくやられるというのも前の代までの神の落とし子たちが直面した例でもある。今の代と比べて統率が取れていなかった代でもあったが。
「でもさぁ、御子を守る為にも各自対処出来るようにした方がいいと思わなぁい? 理想論だけど合理的でもあると思うんだけどねぇ」
合理主義になれとは言わないが、合理的であれと言外で語っている。ルイは数秒目を瞑り息を吐く。アズマは説得しようとしてルイに判断を委ねている訳では無い。自分はこう動くから了承しろと言っているのだ。アズマの真意はルイも理解していた。
「承知しました。そちらの件はアズマにお任せします。僕の方でも教会に来られた方にはお声掛けを心がけます」
ルイからの言質を取り満足気に凭れていた壁から離れて聖堂へ繋がる簡素な扉へ足を伸ばす。右手をドアノブに掛けると思い出したかのようにルイへ向き直る。
「カスミさんからの伝言。見つかったんだって。今は刺激しないように接触しないで観察中らしいけど会いたいなら早い方がいいかもねぇ。ボクはおすすめしないけど」
アズマはやんわりと否定的な言葉を残して去って行った。これ以上の情報はエルダーベラ教会の司教カスミに聞けということだ。
ルイは堅く手を握り締め、アズマが行った所とは別の方へ歩き出す。本館廊下の扉の一つで、そこから繋がっている宿舎のルイの部屋へ。決して休む訳ではない。とある準備のためだ。先の報告のせいか顔が強張っている。ルイにとって嬉しい報せではないことだけは確かだった。
レザール一行はクレマチスジェミニ県オレンジスワロー市に来ていた。オレンジスワロー市の中でも北西寄りに位置している。ルイから貰った討伐依頼の現場だ。町から外れた、舗装された道路を囲むようにある枯れた田んぼ道。依頼書の住所はこの辺りを指している。
この辺り周辺は視界が開けており見晴らしが良い。車での事故すら滅多に起こらない程だ。そんな場所で悪魔を見つけるのもまた容易く、それらしい影を数分も経たない内に見つけた。念には念をとイヤーカフ小型索敵機を起動して反応を見る。どうやら間違いないようだ。索敵機のレーダーと照らし合わせた限り、目の前の人型悪魔二体と、もう二つは田んぼの間を割くように流れている小川から出ている。水場に居るということは魚型の可能性が高い。
レザールはこの四体の悪魔に見つからない位置まで後退してレオンとエリスに作戦を語る。
「いいか、今回は四体ともお前らの力で倒してみろ。やり方は任せるがエリスは銃、レオンは刀を使え。チャームもナイフも好きにすればいいが、メインでは使うな」
エリスは「えー」と声を漏らしながらもチャンバーチェックをし始める。以前渡したマガジンをそのまま持っていたら残弾数は六十発弱だと考えられる。下級悪魔四体に対してその弾数なら無駄撃ちしない限りは余裕で足りるだろう。
教え通りに戦闘前にチャンバーチェックをしているエリスは置いておいて、レザールはレオンに向き直る。その表情は真剣そのものだった。
「人の見た目をしててもアレは悪魔だ。殺す事に躊躇はするな。じゃないとお前が死ぬぞ」
人を殺したくないと家を出たレオンにとっては酷な指示だ。相手は人間ではないものの見た目は人そのもの。恐らく頭では理解していても身体が動かないだろう。それが理性ある正常な人間だ。そうなってしまうのも無理もない。だがそれを理解した上でレザールは続けた。
「お前が殺すのは人間じゃない。人間誰にとっても共通した敵だ。見た目に騙されるな。居場所を守る為に戦え。それがお前が選んだデビルハンターの道だ。俺らは書面で契約してんだ、今更撤回なんかさせねぇ」
レザールはイヤーカフ小型無線機を外しレオンの左耳に付ける。そして超音波索敵機が起動する。
「そいつは体内の魔力炉心を感知するから神の落とし子にも反応するが問題は無い。そいつを信じてお前の仕事をしろ」
レザールはレオンの背中をポンと叩き目の前の仕事に向き合わせる。レオンの顔には緊張の色が見えるが、元々が殺し屋の家系の人間であり長年そこで修行をしてきた身だ。緊張で動けないといった致命的なパフォーマンス低下の心配は無い。
チャンバーチェックを終えて二人の会話が終わったところでエリスがレオンに駆け寄った。この二人は体力作り等で一緒に行動することが多かった為、全く連携が取れない訳では無いだろうが、エリスが撃った弾丸が近接武器を扱うレオンに当たらないかだけが懸念点だ。
「レオン、あたし射撃の精度はあんまり良くないから頑張るけど期待はしないで」
「エリスは俺が悪魔から離れたタイミングで撃ってください。後方支援をお願いします」
レオンは左手で人差し指と中指を着けたピースサインを作り、エリスは右手で人差し指と中指と親指で銃を形作る。形作った手の手首を互いに当て合った。これはアズエラ神聖国に伝わる「互いに健闘を祈る」という意味合いを持つハンドサインだ。レオンが指を閉じたピースサインなのはレオンが「刃物」を使うからで、エリスが銃サインなのはエリスが「火器」を扱うからだ。当人が近接武器を扱うか中距離又は遠距離武器を扱うかでどちらの手の形になるかが変わるハンドサインとなっている。
レオンは刀の柄に手を掛ける。そしてそのまま抜刀する。両手で柄を握り人型悪魔へ向かって右足で地を蹴って駆け出す。エリスも銃の射程距離まで詰めるように走って前へ出る。
レオンの刀は人型悪魔の背中を突き刺した。しかしこれでは悪魔は死なない。悪魔の手がレオンの腕を掴もうと背中へ伸びてきたところでレオンは刀を引き抜き左足で悪魔の足を掛けて地に伏せる。もう一体の人型悪魔がこちらに気付いたところで、一度地に伏せた悪魔から退いてもう一体の方へ左から右上方への逆袈裟斬りを繰り出す。しかし綺麗に両断とはいかず依然とその場に立っていた。
エリスはレオンが悪魔から身を退いたのを目視で確認してから銃を二発撃ち込む。その弾丸は真っ直ぐ飛び、地に伏せられた悪魔の喉元と肩へ命中する。レオンは正面の悪魔を蹴飛ばして足下の悪魔の頭部を逆手に持ち直した刀で突き刺す。これでようやく一体仕留めたといったところだ。
足下の悪魔に目を向けていたところで先程蹴り飛ばした悪魔がレオンの右腕を掴んだ。レオンは刀を順手に持ち替えその悪魔に突き刺そうとした時、悪魔の肩と胸に銃弾が先に着弾した。エリスが撃ったものだ。その銃弾に怯んだ悪魔が一瞬動きを止めたところでレオンはすかさず腕を振り払って腰に隠し持ったサバイバルナイフで悪魔の喉を突く。人型の悪魔は倒れ、残りは小川に居る二体だ。
レオンは小川に掛かる小さな橋から見下ろした。悪魔の姿は見えない。水の中か橋の真下に居るのだろう。
「そこにいるって訳? じゃああたしが刺激してみる」
エリスは銃を握ったまま右手を突き出し左手人差し指で右手薬指に嵌っている黄緑の石の指輪に触れる。次の瞬間、エリスの周囲に風が集まり大きく三つの塊が半月状になって小川の流水へ向かって飛んでいく。すると、水の中から二つの影が勢い良く出てきた。小さい身体でひし形のような形をしている魚型の悪魔だ。ボディは茶色だが腹と尾鰭は赤い。レオンたちに向かって飛んでくるその悪魔の口はギザギザに尖った歯が付いている。下級悪魔だが人間に対して好戦的で口を開けて飛びついてくるところから、ピラニアだと分かる。
エリスはピラニアの悪魔に驚き、銃を三発撃ってしまう。判断としては間違いでは無い。だが、その弾は悉く外れてしまっている。レオンはエリスの腕を引っ張って後退させて左手に逆手で持った刀で二体とも地面に叩き落とした。魚のこの二体は当然腕や足は生えていない。地面に叩きつけられた身体ではどうする事も出来ずその場でピチピチと跳ねていた。レオンはこの二体に迷うことなく刀を突き刺して殺した。
「……お疲れ様です。怪我はありませんか? 」
「お疲れ。あたしは平気。傷を治すチャームもあるし。アンタこそ平気? 」
二人は疲れた様子で互いに安否を確認し合った。神の落とし子ではない二人が二人の力だけで下級とは言え悪魔に初めて立ち向かったのだ。
レオンとエリスがレザールの下へ戻ってくる。レザールは咥えていた煙草を足で擦り消して二人へ視線を向けた。
「お疲れ。最初にしちゃ上出来じゃねぇの。まだ訓練は必要だろうがな」
「ご褒美は無い訳? 」
エリスがキラキラした目でレザールを見上げる。本物の尻尾が付いていたらブンブンと振られていただろう。実際に今付いてるのは尻尾もどきだが。レザールはそんなエリスを鬱陶しそうに顔を顰めて一歩距離を空ける。
「ねぇよ! 犬かお前は」
エリスが上目遣いでレザールを見つめておねだりをするが本人には全く効いていない。寧ろ突っぱねられる始末だ。未成年の少女の上目遣いに流される成人の男がいたらそれはそれで問題だが。
レオンがイヤーカフ小型無線機を返却すると三人は駅へ歩き出す。この後はルイへの仕事完了の報告もそこそこに各自帰宅をすることになる。レオンは時折自分の手に視線を落としていた。肉を斬った感覚を噛み締めているのだ。小刻みに震える手を握りしめて顔を上げる。これに慣れなければデビルハンターとして生きられない。それは恐らくレオン自身にも分かっていることだろう。ゆっくりと深呼吸をした。レオンの様子を見て察しがついたのか、レザールは視線をレオンに向けず話し出す。
「別に慣れる必要は無い。というか、ジャックみたいに楽しさ追求してチェーンソーに走るようなことはするな」
レオンがそうなることは絶対に無いだろうが、釘を刺しておくことに越したことは無い。無論、レザールはジャックを嫌っている訳では無い。戦い方が怖すぎて苦手というだけだ。ジャック自身決して悪人ではないのが質が悪い。そんな心情を知ってか知らずか、レオンは苦笑いを返す。
ジャックが話題に上がったところでレオンがふと思い出したかのように問いかける。
「そういえばコブラさんの周りって二人も神の落とし子がいるんですね? 」
「二人って俺とジャックのことか? 俺は同郷だが、ジャックに関しては調べ上げて探したんじゃねぇの。ライラック的にも神の落とし子は喉から手が出るくらいには欲しい人材だしな。だがまあ結局、ライラックのデータベースに既にあったってオチなんだと」
「なんという徒労……」
コブラは偶然が重なって身近に神の落とし子が二人も居るのだ。本当かどうかは本人にしか分からないが。
「ジャックさんのようにはなるなって言ってますけど、目指すべきは誰なんでしょうか」
レオンの質問にレザールは手で顎を触りながら考える。レザールの下で修行をしている為レザールを目指すべきなのは明白だ。だが、レザール自身がどういうスタンスなのかの確認が主な意図だと語っているようでもあった。
「つっても共闘とかあんましねぇし、戦い方を知ってるヤツなんざ数人程度だしな。敢えて言うならアズマか」
アズマは場数を踏んだ正真正銘のベテランで、レザールと互角くらいだと語られている。名前が上がるのも当然と言えば当然だ。しかし、そんなアズマにも問題はある。攻撃パターンが分かりやすいという点だ。分かりやすいとは言ってもそれをカバーするくらいには身体能力も判断能力も高い為、パターンを把握していようがアズマを上回るのは簡単では無い。レザールは頭を掻き毟って投げやりに言い放つ。
「俺が言うのも何だが、お前は俺の弟子なんだから俺を目指しておけ。目移りしてんじゃねぇよ、ガキ」
レオンの頭を乱暴に掻き回すとレザールはエリスを脇抱えにして早足で歩いて行ってしまう。同じ種類の武器を扱う上で見本にするのは言うまでもなくレザールしかいない。レオンはレザールの背中を見て小さく息を吐くと小走りで後を追った。初めて殺した経験をしたが、今はその顔に不安は無かった。寧ろ晴れやかな顔色をしていた。
神の落とし子は短命だ。それは当人たちも理解していることだ。しかし、その周りの人間はそうで無かったりするのが常だ。この日常もいずれ終わりが来る。それまでにどれほどレザールの戦い方を吸収出来るかがレオンの課題となっている。エリスも例外ではない。この日々のタイムリミットは誰にも分からない。




