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ユイ14

高校の先輩でもある蘭三郎のママ。

みんなで遊びに行った翌日も彼の店に連絡がいったみたいだ。


彼の帰りが遅かったので、私は部屋の掃除や選択をしていた。

「ただいま」

「おかえり。気持ち良さそうじゃない。飲んでたの?」

「今日も店に電話があって、イシハラと蘭三郎に行ってきたよ」

「そうなんだ」

8万も取られた翌日。

彼は断ったらしい。

しかし強引に誘われた為、顔を出したという。


前日と違い、同じボトルをプレゼントされ、会計は10000円しかしなかったらしい。

「ママに気に入られちゃったんじゃないの?」

「ユカさんと同じこと言ってるよ」

「ハッキリしておいた方がいいよ。完全に今日の話じゃ落とそうとしてるんじゃない?」

「いやいや。そうであっても俺はユイが居るから。てか向こうは女じゃないし」

「私もまさかママに彼が盗られるとは思ってないけどさ」


ママの性格を知っている。

嫌な予感はしていた。


毎晩、彼は誘われるようになっていた。

2回目以降は、ママのおごりになった。

彼は借りを作りたくないと、払おうとしたが受け取らなかった。

それが悪いと思った彼は、誘われると顔を出さざるを得なかった。


そんな状況の中、私と彼は店休日にコートを買い出掛けた。

「俺のコートの方、見てくるわ」

「えー!分かった…すぐ行くね」

彼は買い物が好きじゃない。

私が選ぶのが長いからだ。

彼を待たせまいと急いで選ぶと会計を済ませた。


買い物袋を持った彼がこちらに向かってきた。

「もう選んだの?早いね」

「ママに買ってもらった…」


「あちゃー。これは完全にハマってるね。いいじゃないもらっとけば?」

「おいおい。このレザーコート20万もするぞ」

「ユイと一緒に住んでるって教えてあげた方がいいよ。こんな良い女が居るんだって」

「そうだな。ユイは良い女だ」

「本当にそう思ってるの?」

「今すぐここでキスしろって言われてもちゃんと出来るよ」

「じゃ早くして」


確かに彼は参っているようだった。

実直な正確なせいか、ママの執拗な誘いやプレゼント攻撃に困っていた。

ギブアンドテイク出来ない、一方通行な付き合いが嫌いなのだ。

この地域の水商売で名を馳せる以上、トラブルは避けたいとのことだった。


「ユイ、今日は真っ直ぐ帰る?」

「キムラとコダマとイシハラと出掛ける」

「いつものショットバー?」

「先に向かっといて」

「分かった」

彼はミーティングと称して、ママからの誘いを断っていた。


店に入ると常連となっていた私にマスターが声を掛けてきた。

「ユイちゃん、いらっしゃい」

「おはよう、5人かな?」

「マナブ達?上使っちゃって」

「ありがとう」

みんなの飲み物を頼むと、ちょうど彼達も来た。


彼はママのことを話し出した。

20万もするコートを買ってもらったこと。

今日、ロレックスを買ってもらったこと。

時計を手渡されたとき、私の存在を話したらしい。

ママは彼に私と別れてと懇願してきたという。

もちろんそれに対して、断固拒否してくれた。


「そっかーそんなことになってたのか」

「一言言ってくれれば、俺達に分散できたかもしんねえな」

「ううん。ママはそんな生易しいもんじゃないわよ?」

「コートと時計どうすっかな」

コートと時計で100万相当するだろう。

彼は処分に困っていた。

「もらっとけばいいんじゃない?」

キムラくんとコダマくんがニヤニヤしながら、そう言った。

彼は少し笑った。


「ユイ、俺イシハラと返しに行くわ。どっかのお姉ちゃんならもらっちゃうんだけどな」

「私も一緒に行く。いざとなったら私がママをやっつけるから!」

私の言葉に偽りは無い。

彼を守る為なら、相手をやっつける。

「ユイ…ケンカしに行くんじゃないから大丈夫だよ。だからついて来なくていいよ」

「マナブくんを守る!私キレたらどうするか分かんないだから。殴り込みよ!」

「分かったけど、刃物は持ってこなくていいからね…」

「こんなにお前のこと想ってくれてんだから連れてってあげれば?」

キムラくんとコダマくんのナイスフォローが入った。


彼は思いたったら、すぐに行動に移す。

ショットバーを出るとタクシーに乗り込み、蘭三郎へ向かった。

「イシハラ、今日は飲まずに帰るからな」

「承知してるっす」

「お前、空気読めないからな。連れてきたのは失敗かな…」

「んなことないっすよ。店長に何かあったら俺が盾に」

「お前に守ってもらうほど、老け込んでないよ」

「イシハラくん、大丈夫。ユイが居るから」

タクシーは15分ほどで、蘭三郎に着いた。


彼は私とイシハラくんを、前に出るなと背中に居させた。

店の外に連れ出すと、ママから話し出した。

「ユイと来てるっていうのは、そういうことね」

「ママ、うちの人は優しすぎるのよ。もらった物も悪いから返したいってね」

「それはアタシが夢見させてもらったからプレゼントよ。これからはユイにちゃんと買って

 もらいないさい。この子はこれからなんだから。身なりもちゃんとさせないとね」

「分かった」

「ユイが出てきたらしょうがないわ。アンタと揉めようとも思ってないから。」

ママは私の主張を素直に聞き入れた。

揉めるつもりも無いと。


ママやユミさん、ユカさんから言わせると私はじゃじゃ馬らしい。

学校で同級生、その男と揉めたもの有名だった。

何より、刃物を奪って男を刺したのだから。

この一件以降、私と揉め事を起こそうとする人間は居なかった。


ママもこの噂を知っているのだろう。

私が来たら、しょうがないと言った。

私としては、必死だった。

やっと運命をともに出来る、信頼出来る男と出逢った。

それをニューハーフに取られたら、目も当てられない。

学生時代、キャバクラ嬢としてモテたプライドもある。

女というのは、惚れた男に尽くすが、プライドも持ち合わせるのだ。


彼にその気が全く無かったことに、安心はしていた。


しかしママは彼や私にも思いつかない、驚きの行動に出ることになる。


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