エピローグ 新たな旅の予感
辺りはかなり暗くなってきたのを感じて、俺は声をあげた。
「ようし! じゃあ、もう暗くなるから街に戻ろう。チェルシー、バンを出してくれ」
「はあぃ」
チェルシーがカプセルからバンを出す。
巨大な飛竜が、いきなりそこに現れた。
「街の外れまで飛ばそう」
「判りましたぁ、バンちゃん、お願いね」
「キエェェ――!」
一声鳴くと、飛竜が飛び立つ。すぐに街についてバンをしまうと、俺たちはネクストリアの街に入った。
「さて……宿を探さないとだが――」
「あ、ネクストリアにもあると思いますよ、カプセル宿屋」
「お、そうなのか?」
「はい、全国にチェーン展開してるみたいですから」
エリスがそう答えて、微笑む。
と、チェルシーが口を開く。
「ミッキー・アズマさんは大事業主なんですわぁ」
「どうやら、そのようだな」
俺が少し呆れる感じで感心すると、フィリアが声をあげる。
「いや……さすがに疲れたな――ゆっくり風呂につかりたい」
疲労困憊のフィリアがそう口にした。
俺たちは近くの商店にカプセル宿屋をことを訊ねて、場所を特定した。
「「「「お~!!」」」」
外見は少し違うが――やはり『カプセル・アズマ』と書いた看板がデカデカと飾ってある。魔道具の効果なんだろうが、電飾のように光を放っていた。
「は……派手だな」
「最初はこういうケバケバしさを嫌がった人も多かったって聴いてます」
「とにかく、入ろう」
フィリアはエリスの解説もそこそこに、店内に入った。
作りはまったく同じで、一階に食堂と風呂があり、上の階にカプセルルームがある。
いつものパターンで、俺たちは一時間半後に食堂で集合にして、各自の個室へと案内された。
個室を確保した俺は、風呂場へと行く。
「お~……って、少しあの店舗より狭めか?」
あのファーストリアの店はかなり特別な造りだったらしく、風呂の大きさは前の店の方が大きかった。
――が、そんなこと気にせずに風呂に浸かると、疲れた体にお湯が沁みてくる。
「う~ん、たまらんなぁ」
俺はやっと息をついた。
またカプセルで30分ほど仮眠してから、俺は食堂に降りていく。
と、三人組が既に来ていた。
「あ、ライトさ~ん、ここです!」
エリスが手を振って俺を呼ぶ。
部屋着は同じ仕様で、また俺はいつものようにチェルシーの隣に座った。
「疲れはとれたか、フィリア?」
「ああ。けど、お腹も空いた。早く夕飯にしよう」
俺たちは夕食を注文すると、とりあえず夕餉を楽しんだ。
「しかし、チェルシーはドロップが早かったよな~」
「あぁ、それならなんだか『女神の加護』のおかげらしいですわ。そうですよね、ライトさん?」
フィリアの問いに応える形で、チェルシーが俺に水を向ける。
俺は頷いた。
「そうなんだ、『女神の加護』は『幸運をもたらす』固有スキルだ。そのおかげで、飛竜も多分、テイムできたんだろう」
「そうなんですか! チェルシー、凄いですね!」
エリスが驚いて、声をあげた。
「そんな固有スキルがあったのか! 結局、どのくらい倒して三回のドロップだったんだ?」
「う~ん、多分……50匹くらいかしら」
「マジかよ! あたしなんか、120匹くらい倒してるぞ! う~ん、この幸運の差は痛い――」
フィリアがそう言って苦い顔をするので、俺は笑って言った。
「いいじゃないか、その分、剣技が磨けたんだと思えばいい。運がいい者は、その特性を活かして強くなればいいし、それがない者は、その分、努力して強くなる――そういうことだよ」
俺がそう言うと、三人の顔が一瞬真面目な顔になった後、ほころんだ。
「そうだな。あたしはあたしなりに強くなる!」
「うん、私もです」
「わたしはぁ……強くなるより、癒せるようになりたいですわぁ」
俺は三人の顔を見て微笑んだ。
「そういえば、チェルシーには固有スキルがあったが、お前たちはどうなんだ?」
「どうって……それ、何処を見れば判るんだ?」
「職業適性の欄の詳細を見ると書いてあるぞ」
フィリアとエリスは、自分のステイタス画面を見て確認してる。
と、フィリアが声をあげた。
「あ! あたしもあるぞ! 固有スキル!」
「私もです。――今まで、見落としてました」
なんと。二人とも固有スキル持ちだったか。
「俺にもあったが、こんなに固有スキル持ちがいるなんてな。珍しいと思うんだが――」
「そうなのか?」
そうじゃないのか? 俺のゲームの常識では、固有スキル持ちなんかほとんどいなかった。
けど、このアザルドでは、案外、そうじゃないのかもしれない。
「――で、フィリアの固有スキルはなんだ?」
「なんか……『剣士の意地』らしい。効果は――『HPが残り一割以下になった時、攻撃のダメージを三倍にできる』……だ、そうだ」
聞いて俺は驚いた。
「おいおい。なんか凄いスキルだな。ダメージ三倍!?」
「けど、HP一割以下って、かなりヤバい状況じゃないか。あんまり発動できないぞ」
「確かに――扱いは慎重にしないとな。しかし、ここぞという時に役に立つかもだぞ。かないカッコイイぞ」
「そ、そうか」
なんかフィリアは、少し神妙な顔で赤くなった。
「それで、エリスのはなんなんだ?」
「私のは――『分身』です」
「「「分身!?」」」
俺たちは皆で一斉に驚いた。
「それってあれか――? 忍者的なやつか?」
「なんですか、ニンジャって?」
「い、いや……いい。それで――詳細は?」
俺はエリスに改めて訊く。と、エリスが答えた。
「え~と、『一日一回、HPを半分にして分身できる。HP以外のステイタスは変わらず、どれも本体』」
なるほど、HPを半分にしてね――って、待てよ?
「おい、今から使ってみろ」
「え、えぇ!?」
「二人以上に増えるかどうか、実験してみるんだ」
「え、あ~はぁ……じゃあ『分身』!」
いきなり、座っているエリスが二人になる。
――と、さらにその二人が四人に! そして八人になった!!!
「「え~っっっ!!?」」
フィリアとチェルシーが驚きの声をあげた。
「ちょ、ちょっと! 席が狭いんですけど!」
「判りました、戻ります」
そう言うとエリスの分身が一人に戻る。
「なるほど……一日一回と言っても、二人になれるだけじゃないんだな。凄いスキルだぞ、これは」
「けど八人になったら、HPは八分の一でした。結構、危険です」
「そうだな、これも考えて使わないとな」
俺はそう言って笑った。
――なんか、凄いじゃないか、こいつら。
なんだかよく判らない感じで異世界に来て、本来のスタイルじゃない形のパーティーを組んだが……こいつらとなら、うまくやれる気がする。
俺は笑い合う彼女たちを見て、ふとそんな事を感じていた。




