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君がくれた明日

あの時、違う選択をしていれば――。

そう思ったことはありませんか。


これは、自分の選択を後悔した男が綴る、記録の物語。

それから数週間サツキはまた学校から姿を消した


数日までなら俺も体調不良で気にも留めてなかったが......


数週間となるとそれは違う


あいつと関わってから知ったことや最後にあった時の


ーー「約束」が頭に引っかかる


俺は覚悟を決めて前回サツキの母親に出会った病院へ歩みを進める


病院についたが病室がわからなかった


「あ......」


声の方向に目を向けるとどこか気まずそうなサツキの母親がいた


「お久しぶりです......」

「久しぶりね」

「サツキさんってまた入院してたりします?」


突然のこと過ぎて失礼だろうけど今の自分にはそんなことを気にしている余裕はなかった


「えぇ......」

「何号室ですか?」

「322号室よ」

「ありがとうございます」


感謝をして向かおうとするが彼女の母が引き留める


「行くなとは言わない......」

「けど......行くなら急いであげて......」

「あと、覚悟とね」


俺はその一言でほとんどを察してしまった


急いで322号室に向かう


心臓の鼓動が早くなる


階段を駆け上がり322号室のあるフロアに着く


いやな予感がした......

いやな想像もしてしまった


そうこうしてる間に部屋の前に着く


扉に異様な重さを感じた


夕日が差し込む病室。


そのオレンジ色の光の中。


ベッドに腰掛ける、一人の少女。


気づけば俺は息切れを起こしていた


「はぁはぁはぁはぁ......」


そんな俺を見て彼女は苦笑する


「落ち着きなさいよ」

「まさかここまでくると思ってなかったわ」


以前と変わらない口調。


なのに、どこか違う。


無理に平気を装っているような、そんな声だった。


部屋の中では無言が続いた


ピッピッピッ


心電図の音だけが流れる


「あんたそんなんで約束守れるの?」


彼女は少し困ったように笑う。


俺は答えられなかった。


約束。


忘れて幸せになること。


そんなの、できるわけがない。


「ゴホッ......ゴホッ......」


突然、彼女が苦しそうに咳き込む。


白いシーツに、赤が滲む。


「お、おい......!」


駆け寄ろうとすると、彼女は小さく笑った。


「そんな顔しないでよ......」


「私、今......幸せだから」


息が苦しそうなのに、それでも笑っていた。


「セツ......」


「ん?」


「約束、守ってね......?」


俺は何も言えなかった。


言葉が出ない。


嫌だ、行ってほしくない、まだ話したい。


そんな言葉だけが喉につかえる。


「少し......眠たくなってきたわ」


彼女は、安心したように目を細めた。


「おやすみなさい......」


そして、少しだけ間を置いて。


「大好き......愛してる」


ピーーーーー。


彼女は目を閉じる


まるで、安心したみたいに。


そこからの記憶は覚えていないが


数日間は家に引きこもっていたのは覚えている


食事も喉を通らなかった。

水族館の写真を見るたび、息が苦しくなった。


その後は卒業するためだけに空っぽの高校に向かい


ーー卒業する


卒業式が終わり高校最後の時間が流れる


クラスメイト達は友達と写真を撮ったりアルバムに寄せ書きをしたりしているが


俺は木の下に向かっていた


木の下に穴を掘り俺の文字でありがとうと寄せ書きを書かれているアルバムと

先生にわがままを言って作ってもらった卒業証書を入れる


先生も俺の心境を理解してそっとしておいてくれた


土をかぶせ、静かに立ち上がる。


木漏れ日が揺れる。


あの日と同じ場所。


でも、隣にサツキはいない。


「卒業、おめでとう」


小さくつぶやく。


返事なんて、あるはずない。


それでも――


風が少しだけ優しく吹いた気がした。


「卒業おめでとう」


その声に驚き、振り返る。


――誰もいない。


風が木の葉を揺らしていた。


いつもなら、気のせいだと思っただろう。


でも。


その声は、確かに彼女に似ていた。


「......ありがとな」


空を見上げる。


まだ約束は守れそうにない。


まだ忘れられない。


ーー数年後

「いってきます」


俺は何とか前を向いて歩けるようになった


酒やたばこもやめた


でも、約束はいまだに守れそうにない


彼女との写真の前には指輪がおいてあり自分の右手の薬指にも同じものをはめている


「行ってらっしゃい」


俺はその言葉に微笑み言う


「愛してるよ」

「行ってきます」


その言葉に返事はない。


それでも――


玄関の扉は、あの日より少し軽く感じた。


差し込む朝日が、前を照らす。


外へ向けて、一歩。


また一歩。


まだ忘れられない。


きっと、この先も。


それでも――


俺は、歩いていく。


悲しいことも、苦しいこともあった。


それでも、サツキと出会ったことを後悔したことは一度もない。


あいつがいたから、今の俺がいる。


だから――


君がくれた明日を、


生きていく。

長い期間を経て、『木陰での約束』もついに最終回を迎えることができました。

ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます!

もしこの作品が好評だったら、番外編で本編では描ききれなかった話も書こうと思っています。

ぜひ感想や、「次はこんな作品が見たい!」などあればコメントで教えてくれると嬉しいです。

改めて、ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!

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