木陰での約束
あの時、違う選択をしていれば――。
そう思ったことはありませんか。
これは、自分の選択を後悔した男が綴る、記録の物語。
「よかった、サツキは無事なんだな......」
彼女の母親に彼女の無事を聞いた俺はとても安心しきって病院を背にした
ーー1ヶ月後
キーンコーンカーンコーン
朝のHRのチャイムが鳴る
いつものように座る人のいないはずの席に目を移す
すると、約1か月前唐突にいなくなった姿がそこにはあった
「え?」
「あら、久しぶりね」
そこには以前と変わらない声、姿があった
「治ったのか?」
「えぇ......」
サツキは小さく頷いた
いつもの俺ならその違和感に気づいていただろうが 今の俺は安堵して気づかなかった
「今日お昼一緒に食べない?」
「私お弁当作ってきたの」
「俺なんかでいいのか?」
「あんたじゃなきゃ誘ってないわよ」
彼女は顔を赤らめながら言う
「場所はいつもの木の下でいいわよね?」
「もちろん」
俺はいつも以上に昼の休憩が楽しみになっていた
キーンコーンカーンコーン
「おなか減ったぁ......」
「楽しみにしてくれてた?」
彼女はワクワクしながら聞いてくる
「もちろん」
「がんばって作ったのよ」
「楽しみ」
彼女は嬉しそうにお弁当箱を出す
「どうぞ」
「ありがとう」
お弁当箱の中には、彩りのいいどこか家庭的なおかずが並んでいた。
胸を高鳴らせながら、一口運ぶ。
「おいしい......」
「よかったわ」
彼女は嬉しそうにほほ笑む
「セツ......」
彼女は顔を赤らめながら名前を呼ぶ
「ん?」
「口開けて......」
彼女の顔は耳まで真っ赤だった。
「恥ずかしいからあまり見ないでくれるかしら?」
「ほら、目を閉じて......」
「あーん」
俺はその言葉に反応するように口を開ける。
すると彼女は、そっと卵焼きを口に運んだ。
「うまい......」
「......」
サツキはどこか安心したように微笑んだ。
風が木の葉を揺らす。
「ねぇ、セツ......」
「ん?」
その時の彼女の表情は、とても真剣だった。
「もしもの話だよ?」
「なんだよ、急に改まって」
「もし、私がいなくなったら私のことは忘れて幸せになってね」
「約束だよ......」
「大好きだよ......愛してる......」
俺はその急な言葉を理解しきれなかった
「え?それって......」
俺は困惑して言葉が詰まった
「どういう意味だよ」
キーンコーンカーンコーン
タイミング悪く昼休憩の終わりを告げる
「セツ、行くよ......遅刻しちゃう」
そのあとの授業は集中していられなかった
俺は放課後再び木の下で彼女を待つ
夕日が木漏れ日の隙間から差し込む。
だが――
どれだけ待っても、彼女が来ることはなかった。
高校入学でしばらくバタバタしていましたが、久しぶりに書いてみました。
これからも不定期にはなりますが、「木陰での約束」を楽しんでもらえたら嬉しいです。




