第24話 会話
「まあ、薬屋で話した通り、私は勇者様がウイルスに
感染した原因と、ウイルスを作った人を知っている。
…それは、私もそれを研究していた1人だからだ。」
…驚きは無かったが、研究している姿を、
想像できないな…と少し思った。
「今、私が研究者とか意外だとか思ったか?」
「…お、思っていないです。」
「…まーそれはいい、話が進まないからな…。
んで、まあ、そのウイルスを生み出したのは、
サーバって奴なんだが…。」
「…サーバ。」
その名前…なんだか聞いたことがある気がする。
…どこで聞いたんだろう…。…思い出せそう。
「…少々お待ちください。サーバ、というのは、
この世界の情報技術を発展させる研究をして
いた…今、行方が分かっていない研究者の、
あの、サーバさん、ですか?」
「…そうそう、そのサーバだよ。」
…俺が考えている間に、リプラはイーネさんに
そう聞いていた。
…思い出した、そう言えば、歴史博物館で
そんな名前があった気がする。
…ん?え?…博物館に名前があるくらいの
功績を残しているのに、22歳であるイーネ
さんが知っている…のか?
「…サーバ…さんって、一体何歳で…何者
なの?」
「…年齢は、私もハッキリとは知らないが…
行方不明になる前までの歳は、40歳は
いっていた気がするなぁ…。
…そうか、君はサーバ…が、行方不明になる
前に何をしていたのか知らないんだねぇ。」
…イーネさんは、俺と目を合わせながら
そう言った。
「…あー、うん。この世界の情報技術が
発展した中で、功績が1番認められた人だと
しか…。」
俺がそう言うと、イーネさんは何故か、ふっ、と
乾いた笑みを浮かべた。
…何だか少しムカつくなぁ…。と、俺は少し思った。
「…この世界の情報技術は、昔…というか、
数十年前までは、そんなに発展してなかったん
だ。…しかし、サーバがきっかけで、情報技術は
どんどんと発展していった…らしい。」
「数十年…!?」
俺は、その言葉に驚きを覚えた。
…俺は、あまり情報技術についてくわしくは
ないのだが、そんな時間でこれほどまでに
発展する事が出来るのだろうか、という
疑問が生まれた。
…よく分からないが、地球では、
おそらく、今の情報技術に発展するまで、
かなり苦労があったんだろう。
…こちらの世界では、数十年で
ここまでという事は…それだけ、サーバさんや
研究技術者がすごい人…なのか、それとも
本当にすごいのは魔法なのか、それはわから
ないが、今まで見てきた町や村の景観が、
あんなにチグハグだったのは、急な情報技術の
発展が影響してるということは間違いない
だろう。
…しかし待てよ?…確か歴史博物館では、勇者にサポートアンドロイドが付けられた、と、表記されていたような…。
…その時、勇者がいたのは数百年前だった気がする。
…アンドロイドは、ある程度の情報技術が無くては、生み出せないのではないだろうか…?
「…まあ、そっか…うん…。」
しかし、その辺に突っ込んでも俺の頭ではよく理解できないと思うので、取り敢えず受け入れることにした。
「…まあ、その辺は私がまだ生まれていないか、
生まれていても記憶が無い時期だから、
その話は、リアルタイムじゃあなく、私が
研究者になった後に聞いた話だから、
本当かは分からないけどなぁ。」
「…えっ?本当かどうか分からないの?」
「…ああ、『サーバがきっかけを作った』という
所はな。…情報技術が発展したスピードは、
嘘ではねぇぞ。…っていっても、サーバは、
年上の人にも尊敬されていたみたいだから、
きっときっかけを作ったのも本当だろうよ。」
イーネさんは、真剣な顔でそう言っていた。
…まあ、サーバさんは、それくらいの人だ、
という事だろう。
「…よろしいでしょうか。」
…と、イーネさんが話を切った時に、リプラが
そう聞いていた。
「…ん、何?」
「…そのウイルスにかかる人が現れ始めた
のは、サーバさんが、“行方不明になる前”
ですか?それとも、“行方不明になった後”
ですか?」
イーネさんは、リプラのその問いを聞くと、
「なるほど…」と、笑みを浮かべた。
「…ふふ、どっちかなぁ?
…どっちだと思う?…『AI化病』が出来る原因を
作ったのは、サーバだと思う?それとも、
別の誰か…だと思う?」
イーネさんは、フッと目を逸らした後、
もう一度こちらに向き直ってニヤリと笑った。
「それは…また…有料…?」
「有料。」
イーネさんは、俺の言葉にそう、即答した。
…やはりそうだ、結局は、有料に繋がる。
…俺がかかっているウイルスについてなんて、
教えて貰える事は…。
「…まあまあ、勇者様、諦めるのはまだ
早いよー。」
…イーネさんは、俺の考えを読んだように
そういった。
…くっ、やっぱり少しムカつくな…。
…と、俺はそう思いつつ、じゃあ、続きをどうぞ。
とイーネさんに言った。
「…はいはい、じゃあ続きね、で、まあ、
サーバがどんなやつかは分かってくれたかな。
…その、今行方不明のサーバが、ウイルスを
作った訳だけど、なんで勇者様が、感染したか、
心当たりはあるかな?」
俺は心当たりなんてあるわけない、と言おうと
したのだが、その前にイーネさんは、まあ
ある訳ないだろうね、もしあるって言われたら
困っちゃうけど。…と、わざとらしく言った。
…ないと分かっているなら、聞かないで
欲しいな、と俺は密かに思った。
「…ウイルスは、誰かに打ち込まれなければ
感染しないって言ったよねぇ?
…勇者様が、冒険中に、誰かに注射でも
されたんなら別だけど、そんな心当たりも
ないなら、一体いつのタイミングだと思う?」
「………俺が意識を失ったタイミング…ですか?」
「…うーん、うん!まあ、そうだね、間違いじゃ
ないよ。」
「…間違いじゃ、ない…?」
「ツイト様、ダメですよ。」
…じゃあ一体何が正解なんだと考え始めた時、
リプラが、俺にそう言った。
「…先程から様子を伺っていましたが…
イーネさんは、少しずつ情報を出してはいますが、
肝心な所をぼかそうとしています。
…きっと、ツイト様に頭を使わせて、病状を
進めるのが目的なのでしょう。
…もうこれ以上、話に付き合う必要はないと
判断しました。
…ツイト様、行きましょう。」
「…えっ?ちょっと待って、行くってどこに…。」
リプラがそう言ったと思うと俺の腕を
引っ張って、廊下に出ようとした。
「…分かりません、しかし、何か、嫌な予感
がします。」
リプラは、表情を曇らせながら、小さな声で
俺にそう言った。
「…なるほど、防衛本能か…もしくは、
そう言うプログラムか…。」
イーネさんも、小声で何かをブツブツと呟いていた。
「…まあ、待てよ、勇者様?
…そんなに頭を使わなくても正しい答えが
分かる、大ヒントを出してあげようじゃないか、
もちろん、無料でね。」
イーネさんは、そう言って俺たちを引き止めたが
リプラは、それを聞く様子もなく、俺の腕を
ずっと引っ張り続け、俺を廊下に出そうとしていた。
「……待って…イーネさん。」
俺は、少し悩み、イーネさんの方を止めた。
「…リプラが、聞きたくないみたいだから…
いいよ。」
「…えっ?ああ、そう?…こっちを止めちゃうの?
…いいの?もう、聞けないかもしれないよ?」
イーネさんは、驚いた様子だった。
「…うん、いいんだ、リプラが、こんなに
必死に訴えかけてくる時なんて…なかったし…
…………それに、もう、何となくわかったから。」
俺は、イーネさんにそう言い残し、一旦
廊下に出ようとした。
…イーネさんは、ため息をつきながら、
また、何かを話そうとしていた。
「…じゃあ、最後に一つ、言っておこうかなぁ。
…勇者様、君は、初めてこの世界に来た時、
どんな状態だったかな?」
俺達は、イーネさんの最後の一言を聞くか
聞かないかのうちに、廊下に出たのだった。
「………………。」
廊下に出た後、俺達は、出てきた部屋
から二部屋分くらい距離を開けて、
そこで止まり、リプラは話を始めた。
「…申し訳ないです、ツイト様…。
…一応、話だけでも聞いておいた方が
良かったのでしょうか…。
…しかし、何故か、あの話は聞いてはいけない
ような気がしたのです。」
「…うん、大丈夫だよ、リプラ。
…リプラがそう思ったなら、無理に聞かなく
ても、問題ない。」
「……そう言えば、ツイト様は、イーネさん
に話しかけられた時、『何となく分かった』
…と、言っておりましたが…何が分かった
のでしょうか?」
リプラは、未だに曇った表情のまま、
俺にそう聞いた。
「…えっ?ああ、まあ、何となくなんだけど、
俺が『AI化病』にかかった理由が分かった
気がして…。」
「…そう、ですか…。
…ツイト様は、一体いつ、誰にウイルスを
打ち込まれたのだと予想しておりますか?」
「…えっ?いや、いつ、誰に打ち込まれた…
とかは、まだよく分かっていないけど…
分かったのはほら、かかった理由だよ。
…その、誰かが、何で俺を『AI化病』に
したかったかっていう理由。
…ほら、やっぱり、まあ、一応…俺は、
ゆ、勇者な訳だから、その、勇者である
俺を、『AI化病』にする事で、得する
人が居たんじゃないかな…って。」
「………そうでしたか、確かにそうですね。」
俺の話を聞いたリプラは、頷きながら
そう言った。…表情の曇りも、段々と無くなって
いった。
…俺は、よかった、と安堵し、そして同時に
俺はリプラに心の中で謝罪をした。
…俺がリプラに言った事は、3分の2くらい嘘だ。
…本当に気付いたのは……ウイルスを打ち込んだ
犯人についてだ。
「…えっと、それで…リプラ、廊下に出て
来ちゃったけど、やっぱり、戻らない訳には
行かないよね…。」
…そして、イーネさんが言いたかった、
ウイルスが打ち込まれたタイミング、という
のは…おそらく、俺がこの世界に召喚された…
1番最初の時だろう。
「…そうですよね、また、戻りづらく
してしまって、申し訳ないです、ツイト様…。」
「…ああ、いや、問題ないよ…。」
…この世界に来た時、俺は…眠っていた。
…目を覚まして、その後、意識がハッキリ
とした時に、リプラに「お目覚めですか?」…と、
聞かれた記憶がある。
…つまり、俺が表示された質問に答え、部屋に
魔法陣が現れ、リプラが居た所に飛ばされた時
から、俺が目を覚ますまで、どのくらいかは
分からないが、時間があった可能性はある。
…その時にウイルスを打ち込むことが出来た
のは…リプラしかいない。
…いや、厳密に言えば、俺がかなり長い間
眠っていて、俺が起きる前にリプラ以外の
何者かが打ち込んだ、という可能性も、
100%ない、と否定できる訳では無いが、
それならリプラが平然としているのは
おかしい。
「…じゃあ、少しだけここで待機して、
落ち着いたら、戻ろうか?」
「…そうしましょう。」
…ウイルスが、打ち込まれたタイミング
としては、間違いはないと思う。
リムさんは『kantsumire』で見た時、
何かに気づいて、俺がどこにいるか調べて
追っていた、と言っていた。
…リムさんが『kantsumire』で見た俺は、
きっと、リプラが「ネットで魔王を倒して
もらいます」…と言っていた時、魔王に
送ったあの写真の俺だと思われる。
そうでなければ、ネクステ村で俺に
追いつく事など、不可能に近いからだ。
…もし、他に俺が意識を失った時か、
寝ている時に打ち込まれたのだとすれば、
リムさんが気づいたと思っていたことは、
気のせいだという事になる。
「…す、座れる所とか、ないかな…。
ないよな…。」
…しかし、俺は、リプラがウイルスを
打ち込んでいたとしても、それは、
リプラの意思ではない、と思う。
…そして、もしかしたらリプラが
ウイルスを打ち込んだかもしれない
という事を、何となく、本人には、
聞いてはいけないような気がした。
…リプラ自身も、何かを感じとって、
聞かない、聞かれないようにしている
ようだし。
…まだ、真実は分からない、俺は、
それまでは…信じていたいと思った。
「…ツイト様?」
「…ん、ああ、いや、大丈夫…。
…あ、リムさん!ブロックさん!」
リプラに話しかけられた瞬間、俺は
焦り、周りをキョロキョロと見渡した。
…すると、廊下の向こうに、リムさんと
ブロックさんがいるのを見つけた。
…俺は、さっきまで考えていた事を誤魔化す
ように、すぐに2人の元に駆け寄った。
「……………ああ、勇者か……。」
ブロックさんは、少し疲れた様子で、
俺にそう言った。
…こっちは、一体、何があったんだろう。
「…あ、あの…リプラ…さん……。
改めて…話したいと言えばいいのか…
なんと言えばいいのか…ええと、分からない…
けれど…その、地下では…まだ、言っていなかった
言葉を、言いたいと、思うのだけれど…。」
…リムさんは、ばつが悪そうにしながら、
リプラにそう言った。
「…ええと、つまり、だから……。
…ちょっと、ブロック、リプラさんと
2人にして欲しいのだけれど、いいかしら?」
リムさんは、両手でブロックさんを押していた。
「…えっ、2人って事は俺…。」
「……………だそうだ、行くぞ、勇者。」
「…ええ!?」
ブロックさんは、そう言うと、前回同様、
腕を引いて、俺をさっきの部屋に連れて行った。
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「…えっと、ブロックさん…リムさんと、
一体何を話していたんですか?」
…部屋に戻る途中、俺はブロックさんにそう聞いて
みた。
「……………ああ、まあな、色々……話していた
訳だが、取り敢えず、改めてその、謝っておいた
方がいいんじゃないかと………提案したんだ。
……………『自分が悪いとは言ったようだが、
きちんと謝罪は、出来ていないんじゃないか?』
…と。………その後、リムからの話を受け止めて、
そうね、謝る、と言ってくれて……そういう訳だ。」
「そうだったんですか…。」
俺は、大変だったんだろうな…。と、心の中で
ブロックさんを労った。
「…あ、着いた。」
…と、ブロックさんと話している間に、
元の部屋にたどり着いていたようだった。
…しかし…若干気まずいな。
…さっき、イーネさんと別れたばかり
なんだけどな…。
…と、思いつつ、俺はブロックさんの後に
続き、部屋に入ったのだった。
今回も読んでくださりありがとうございました。
何かに気がつく主人公…。
(数十年で発展した事にして、未来の自分は
困らないのだろうか…。)
変わっていたら、困ってしまったという事で
見逃してください。
次回も良かったら見て下さい。




