第15話 勝利に酔うことなかれ、我が鼓動!
再び電車内に戻ると、もうそこには誰も乗っていなかった。
当然のことだろう。
俺たちを代わりに待っていたのは困惑する客ではなく、武装した警官の集団だった。
「確保ーっ!!!」
一斉に叫び声をあげた警官隊が、俺に襲い掛かる。
すると瞬時に、老人が後ろから、いや、正しくは勝手に天井のつり革に逆さにぶら下がり、口から何かを吐きだした。
ブシューーーーーーーーーという霧状になって老人の口から吐き出されるそれは、もはやうるおいを保つことが難しくなって異臭を放っている彼の口臭と絶妙に絡み合い、警官隊を襲った。
彼らの目には涙、涙、そして涙。
おそらく催涙スプレーをまいたのだろう。
「はーはっハハハハハハハ! たわけめが! ずらかるぞゼノムス、ハルクト、ロフィロイ! そしてラズ…。」
「くたばれーーーーーーーーっ!!」
彼女のこぶしがものすごい速さで老人の脳天を直撃した。
「いやー。 もう少しで逮捕されるところでしたねーっ!」
なぜか嬉しそうな表情でゼノムスが言った。
「何言ってんのよ。 おじい様がいなくなったらどうするのよ。 困るのは私たちなんだからね。」
おじい様、と呼ぶラズリの声に俺は疑問を覚えた。
この老人はただのホームレスではないのか、と。
河川敷に戻った今も、その疑問は俺についてまわり少しもすっきりしなかった。
すっきりした男はいるようだが。
「ありがとうございます! おかげですかっとしました。 朝の通勤の皆様にもショーをご満悦していただいたと思います!」
もはやすっかりフレクシスワールドのゆがんだ考えに染まりきっているロフィロイがにやりと笑った。
「今の気持ちは…とても言葉では表しきれません!」
するとゼノムスがむくっと立ち上がった。
「そうですね…言うなれば粘り気マックスの土壌であるチェルノーゼムに負けない、しつこく言い寄りまくるティッシュくばりのオネイサンの腰のようなくねりを効かせたそばを開発すべく、鋭い愚痴の衝撃波でかち割ったような竹に小麦粉末を9.4秒以内にぶっ放すなぜかシワより手のひらにこびりついた手垢によって増殖した微生物を多く有しているババアのごとくさわやかですねーっ!」
「すでにこの季節にパリパリになって乾いた鼻の皮膚を、気持ちよく剥がそうとしているゼノムスのように少しは反省しろー!」
ラズリが今日二人目の戦士の死に際を看取った瞬間、無様度を検知する機械が反応を示した。
あなたはまだ知らない…この小説の真の恐ろしい後味を! (ちなみに辛いものが好きなので後味を語れるほど素敵な食事はしておりません。)
もう15話も行ってしまった…早い。20話も行ってしまった…と言えるころまでこの小説が生きていることを祈ります。
「肉離れしても再生する筋肉のようにこの小説は…