警視庁にて-2-
森慎吾殺人事件の容疑者は三人に絞られた。そのうちの一人、倉本沙織に事情聴取を行う枝野と梶。
彼女は果たしてこの事件の犯人なのだろうか。
登場人物
枝野章平:警視庁捜査一課の刑事 梶宏人:枝野の部下 倉本沙織:森慎吾殺人事件の容疑者
森慎吾殺人事件の容疑者は三人に絞られた。一人目は田中哲平。そして二人目は倉本沙織という女性である。
警視庁捜査一課の枝野章平と梶宏人は倉本沙織が働いているという都内にあるカフェへと向かっていた。
「枝野さん、今回の事件永島先生はなんと仰られましたか」「また散々文句を言われたよ。
あの無駄に長い嫌味ったらしい言い方でな。事件については情報が少なすぎる。だってよ。」
梶には永島と枝野の会話が容易に想像できた。「ここがそのカフェか。なんだかパッとしねえな。」
「枝野さん!お店の人に聞かれたらどうするんですか!」「ふん。」
枝野の無遠慮な発言と鼻で笑う癖は梶が唯一尊敬できないところだ。
二人は店が閉店し、残った客が出ていったのを確認にして店に入った。
「倉本さんですね。お疲れのところ申し訳ありませんが、お話を伺ってもよろしいですか。」
嫌とは言わせない口調で枝野は言った。「はい。森さんの件ですよね。」
「そうです。森慎吾さんはこちらのカフェを贔屓にしていたとか。間違いありませんか?」
「はい。森さんは週に三回は必ず来てくださいました。まさか旅行前にあんなことになったなんて。」
「森さんが旅行に行くことをご存知だったんですか?」しまったという顔を一瞬見せたことを当然、
歴戦の猛者である枝野は見逃さなかった。今回は梶も気づいたのを目で確認する。
「森さんとは何度かお話しさせて頂きました。その時に旅行の話を聞いたんです。」枝野はここで鎌をかけた。
道具の手入りをしているマスターにこう尋ねた。「マスターは森さんが旅行に行くことご存知でしたか?」
「いやあ知らなかったです。森さんは少し変わった常連さんで店に入ったら奥の席に行くなり、ブラックコーヒーと一言だけ注文して、ずっとパソコンで作業されてましたから。あまり話をした記憶はございません。」
マスターがそう話したとき倉本の顔に激しい動揺が走った。
彼女は平静を装おうと心の中で何度も深呼吸しながら「確かに森さんは無口な方でしたが、
たまにお話しをすることもあったんです。」と答えた。
どうもご協力ありがとうございましたと告げると枝野と梶の二人は車に戻った。枝野は上機嫌だった。
「倉本が犯人だとすると大抵のことに説明がつく。お前に一つでかい話を教えてやろう。
これはついさっき入った情報だが倉本には小学生の娘が一人いて、夫は5年前に病気で他界。
経済的にかなり苦しんでるらしい。」枝野がそう言うと梶はまだ、
枝野が伝えようとしている意味がよく分からない様子だった。
「まだ分からないのか。森は二週間アメリカ旅行に行くと言っていたんだろ。間違えなく金はある方だ。
そして、倉本の家に森が何度も訪れているのを見たことがあるという近隣住人の目撃証言が多数あったんだ。」
ここまで言ってようやく梶は分かったらしい。
「でも、仮に森さんが倉本さんに関係を迫っていたとしても殺すでしょうか?
だって彼を殺してしまったら娘を育てていけないんじゃないですか?」
梶の言葉に出鼻をくじかれた枝野はやさぐれながら「人を殺すなんてそもそも合理的じゃない。
たった一度の行動で人生を棒に振るんだからな。つい耐えきれ無くなってってことも十分ありえるだろ。」
枝野はそう言いながら「完璧な容疑者」が見つからないことに苛立ちを覚えた。
今回は森慎吾殺人事件の容疑者に事情聴取をしにいきました。ぜひ誰が犯人か予想しながら読み進めていってください。お気づきの方もいるかもしれませんが、この小説は警視庁パートと探偵パートが平衡して話が進んでいきます。どちらのパートが好きかなどさまざまな感想お待ちしています。
読んでくださりありがとうございました。続編をお楽しみに。




