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小さな約束  作者: 如月イヴ
季節、イベント番外編
8/8

trick or treat

10月31日。



「trick or treat!」



委員会があって、帰るのが遅くなる颯を教室で待っていた私。

ようやく颯が帰ってきたので帰ろうと席を立ち上がると妙に発音よく言われた。



「え、えーと、今日はそう言えばハロウィンだったね。」

「うん。翔悟に言われて”あぁ、そう言えば”って思い出した。で、思い出したついでに紗枝に言ってみた。」



満面の笑みを浮かべながら颯は私を見る。

すごく期待している目だ。

確か、飴がカバンの中にあったはずだ。

だけど、その飴は私の大のお気に入り。売っている店は少なく遠い。

一番近い店でも自転車で30分はかかる。途中にある坂は急で行くのがとても大変なのだ。

あげるのは少しもったいない気がする。

よし。ここは気をそらしてなかったことにしよう。



「そ、そういえば、翔悟に会うなんて珍しいね。HR終わったらすぐ帰るでしょ、あいつ。」

「うん。僕も珍しいなーって思ったんだ。なんで残ってるのか聞いたけどはぐらかされた。」

「へぇー。変なの。明日、雪でも降るんじゃないの?」

「あはは。大げさだよ。翔悟だってたまには残ることもあるだろうし。」



よしよし。このままいけば、なかったことに出来そう。



「まぁ、いいや。そろそろ帰ろっか。」

「うん、そうだね。…ところで、紗枝?無かったことにしようったってそうはいかないよ?母さんか、父さんに頼んでまた連れていってもらって買えばいいでしょ、飴を。」

「うっ。ば、バレた…?」

「ばればれ。何年、そばにいると思ってんの?それぐらい、お見通し。」



無かったことには出来なかったみたいだ。…残念。

仕方なく、カバンの中にある私の大のお気に入りの飴を…飴を…。

…あれ?

カバンを探って見たけど、ない。

飴が、ない。



「紗枝、どうしたの?」



颯の問いかけを無視して、カバンの中を探る。

制服のポケットも探ってみるが、ない。



「…あ!」



思い出した。

昼休憩、弥生があまりのこってない飴のほとんどを食べてしまったのだ。なんか、無性に甘いものが食べたいとかいって。



「えぇっと…。ない。」

「え?」

「ないの。飴。昼休憩に弥生と全部食べちゃったから、一つも。だから、あげれるお菓子がない。」

「んー、じゃあ、”trick”…イタズラしないとね。」



悪戯っぽく微笑む颯。

ど、どんないたずらされるんだろう…。



「お、お手柔らかに…。」

「そんなに、身構えなくても…。そうだなぁ…。」



颯が、顎に手を当てて考え込む。

と、いい案を思い付いたらしく私に近づいてきた。



「じゃ、イタズラするね?」



そういって、私の耳に口を寄せて囁く。

囁いた言葉に私が顔を真っ赤にすると嬉しそうに微笑んでキスをしてきた。



「どう?」

「う、うぅ…。」



真っ赤な顔を隠すようにしゃがみこむ。

恥ずかしすぎるよ…。



「紗枝?さーえー?」

「と、trick or treat!」



ヤケクソ気味に言う。

こうなったら仕返しする!



「え?あー、お菓子持ってないや。」

「じゃ、じゃあ、イタズラするね!」



立ち上がって、深呼吸。

仕返しすると決めたものの恥ずかしい。



「椅子に座って。」

「え?うん。」



不思議そうに私を見つめながらも、席に座って私のほうを向いてくれる。

また、深呼吸して颯に近づき颯の足の間に膝をたてる。

そして、さっき颯がしたのと同じように颯の耳に口を寄せて囁く。

そして、目を見開いてビックリしている颯にキスをした。



「ど、どう?」

「え、えーっと。恥ずかしいけど、嬉しい…かな。」



颯は、目を少しそらして恥ずかしそうにはにかむ。



「あの日以来、全くいってもらえないから嬉しかった。」

「う、うぅ…。だ、だって、恥ずかしいんだもん…。」



嬉しそうに、微笑む颯。


あの日以来、一度も口にしなかった”好き”。

恥ずかしくて、颯に”好き”って言われても”私も好き”なんて、言えなかった。

でも、ずっと言いたかった。”私も好き”って。



「恥ずかしかっただけだもん!恥ずかしくて言えなかっただけで…。」

「うん。でも、今度からはいってほしいな。やっぱり、言葉にしてもらうのは嬉しいから。」

「う、うん。頑張る。」

「じゃ、帰ろうか。」



机の上のカバンを持って、教室をあとにした。

少し前を歩く颯に向かって、小さな声で呟く。



「大好き。」



 *  *  *



後日。

弥生と翔悟がハロウィンの日の教室でのやり取りをこっそりみていたということを知り、弥生と翔悟に遊園地で使うお金を全部出させ、とどめにお気に入りのカフェで一番高い物を奢らせた。翔悟が金がなくなったと嘆いていたのを見てざまぁみろと思った。



颯がこっそりと教えてくれたが、弥生は私が持っているお菓子を全部食べて”treat”を選べなくすること。

翔悟は、颯に入れ知恵をするなど色々仕組んでいたらしい。


本当に、お節介な人たちだ。




初、番外編。

ハロウィンなので書いてみました。

イベントごとに書きたいと思います。



~覗き見中~

「意外とやるわね、紗枝。」

「そ、そうだな…。ヤケクソ気味っぽいけど。」

「まぁ、いいじゃない。いいもの見させてもらったわ。」

「…俺も、彼女ほしいなぁ。」

「ど、どうしたの!?弓道一筋のあんたが。

弓道は俺の嫁。弓道さえやっていればそれ以外はいらないとまで言うあんたが。」

「そこまでいってねぇよ!?弓道一筋なのは認めるけどさ!…いや、だってさ。あんなに毎日毎日颯にのろけられるとねぇ。」

「あー。大変ね。私は、紗枝をからかうのが楽しくて仕方ないわ。」

「いいよな、お前は楽しそうで。あー、羨ましいぜあいつらが。リア充爆発しろ。」

「…でも、幸せそうで何よりよ。」

「…そう、だな。」



※紗枝たちが通う高校には弓道部はありません。翔悟は家の近くにある道場で行っています。そのため、早く帰るわけです。

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