1/2
序
想像してみてほしい。
どこまでも続く黄金色に染まった田んぼのただなかに、忘れ去られたようにぽつんと立つ、一本の木。
あるいは、山間の線路沿い、生い茂る森林や縦横無尽に生い茂る藪の合間に、唐突に現れるぽっかり開けた草原に。
車窓をとぎれとぎれに流れる景色の中に、記憶の底に佇んでいる一本の木。
丈は大人くらいで、けして高くはなく、中心にある何かを守るように、外界に向かって枝をまるで腕の様に伸ばしているその木。
私は見たことがある。そして覚えている。
名前も知らないその木の、三つに分かれた又には赤い着物の女の子が身をもたれかけて眠っている。風はゆりかごみたいに枝を揺らし、葉が子守歌を歌ってる。
そんな、景色。




