表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/42

第42話:例の部屋

 1本道を歩き始め、体感的には20〜30分経った頃、僕らは開けた場所に出た。


 それは、だだっ広い円形の広場で、周りの壁には松明が灯されていた。その中心には宝箱。そして、さらにその先に3つの分岐口が広がる多重構造となったいた。


「うわっ、出たよ。また、このパターンだ……」


 僕は辟易へきえきしながら言う。


 そう、これは……エイネストのダンジョンの深層で親の顔より見せられた3つの分岐の構造だ。


 キティ救出を優先するなら宝箱はスルーするのが1番である。


 しかし3つの分岐にはそれぞれ鉄柵が下りていて、何か条件を満たさない限り先に進めない構造らしい。


「ルミナ、一応、駄目元で聞くけど、あの鉄柵の隙間、スライム(きみたち)だったら自由に通り抜けられたりしない?」


「望み薄ですが、念のため試してみましょうか。検証は大事ですからね」


 そう言って肩をすくめたルミナは入り口の1つに歩み寄ると、ゲル状にした腕を鉄柵の隙間に入れて通過できないか試みた。


「……駄目ですね。何か見えないバリアのようなもので隙間は完全に塞がれてます」


「んー、そうだよねえ。そうだとは思ってた」


 ――ますた、らくたん?


「いや、予想はしてたよ。ただ可能性の1つが潰えただけ」


 セラからの問いにそう答えると、僕と2人のしもべの視線は自然とあるものに引き寄せられた――中央の宝箱である。


「ククク……行くのか、我が王よ?」


「行くっきゃない。でないと先に進めない」


 僕は半ばやけっぱちになりながら宝箱の方へ進んで行った。


 セラアーマーを初めて運用した時とは違い、罠だとわかっている罠を踏みに行かなければならないことはひどく不本意なことではある。だからといって無視できない。どう見てもこれがトリガーなのだから。


 ええい、ままよっ!


 探索を進めたい僕はそう思いながら宝箱に触れた。瞬間、耳をつんざくアラームが広場一帯に鳴り響く。


 さて、鬼が出るか蛇が出るか……


 敵の襲来を待ち受けていると、広場の天井がぼこっと2箇所盛り上がる。


 ずしん、ずしーん、と僅かな時間差を経て、それらは地面に降ってきた。


 おい、嘘だろ!?

 そんなのありか!?


 予想外の敵の出現に僕の背筋は冷たくなった。


 死神騎士リーパーナイトとアイアンゴーレム――僕らを追い詰めた強敵2体が、なんと同時に出現したのだ。


「ルミナ! アンブラ!」


 僕はしもべたちの名前を叫ぶ。


死神騎士リーパーナイトは僕らがなんとかする! そっちの対処は任せていい!?」


「仰せのままに」


「ククク……案ずるなっ! 我が闇魔法を持ってすれば、こんな魔物は案山子かかしにすぎぬっ!」


 こうして戦闘が始まった。


 僕は死神騎士リーパーナイトの前でメイスをガンガンと床にぶつけ、目の前にそびえる敵のヘイトを無理やりこちらに向かわせる。


「来いよ、鎌野郎! 僕らが相手だ!」


 くいくい指を引き、挑発すると、案の定とでもいうべきか、死神騎士リーパーナイトは一直線にこちらに向かって駆けて来た。


 全身にフルプレートの鎧を纏う巨大な白骨の化身を、僕は壁際に後退しながらぎりぎりのところまで引き付ける。


 今だっ!


 僕は斜めにローリングして致命的な鎌の一撃をかわしたかわした。


 今からおよそ半年前、【鎧化アムド】を運用したてであったあの頃の未熟な僕とは違い、今の僕はより素早い動きでセラアーマーを操作することができる。


「うおりゃああああああああ!」


 僕は背後からメイスを振り下ろした。

 けれどガキンと硬い音がして、攻撃は鎧に弾かれる。


 くっ……駄目かっ!


 聖属性のセラメイスは、大体のアンデッドモンスターには天敵となる武器のはずだ。事実最弱のアンデッドであるスケルトンソルジャー程度であれば、今の一撃は確実にその身を灰にしたことだろう。


 でも、こいつの本体は身体じゃない!


 僕は以前の戦闘から戦況を冷静に分析する。

 死神騎士リーパーナイトの本体は、この魔物が持つ鎌である。そこに大量のヒールを流し込めば一撃で倒すことができるのだが、いかんせん膂力りょりょくが強すぎる。まともに鎌と打ち合うことは現実的ではないだろう。


 そこで僕は直接的な戦闘を避け、このアンデッドが隙を作る瞬間を慎重に待つことにした。


 突進攻撃が来るたびに僕は攻撃をローリングで避け、本体ではなく身体の方に地道にダメージを与えていく。


 そんな展開が何度か続くと、ついに死神騎士リーパーナイトは焦れたように本体の鎌をこちらにら向けた。


 よし、今だっ!


 僕は前回そうしたように、セラアーマーを一度解除して本体の鎌にまとわり付かせようとする。


 しかし、その時鋭い声で「我が王、伏せろっ!」と喚起があった。


 考えるより先に体が動く。


 僕がその場に体を伏せると、その頭上を呪力のこもったら鉛玉がすごい勢いで通過した――アイアンゴーレムの行動パターンの1つ、飛び道具攻撃である。


 玉は死神騎士リーパーナイトに全弾命中。大ダメージを与えたように思われたが、残念ながらアンデッドに対し呪力攻撃は効果が薄いといわれている。


 ゆえに頭上の敵は倒れない。


 だがしかし、僕は知っていた。

 この攻撃を行ったゴーレムは、反動によってしばらくの間、全く動けなくなることを。


「ルミナ、来てっ! 体を元のゲルにして、こいつの動きを止めるんだっ!」


 咄嗟に僕がそう叫ぶと、唐突な指示を理解した忠実にして聡明なメイドは、電光石火の勢いで死神騎士リーパーナイトに肉薄した。そして指示通り体を溶かして巨大な白骨にまとわり付く。


 当然、敵は体をよじってルミナを振り払おうとするが、そんな動きで彼女の拘束から逃れることは決してできない。


「今だ、行け! セラ、ハイパーヒール!」


 その隙にセラアーマーを解除した僕は、死神騎士リーパーナイトの本体にピンク色のゲルをまとわり付かせた。


 例のごとく鎌は芋虫のようにその身をよじってゲル化したセラから逃れようとするが、彼女のピンク色の体からは、天敵である聖属性の魔法がとめどなく流し込まれていった。


 哀れな鎌は硬直し、やがてぐにゃりと折れ曲がる。死神騎士リーパーナイトの身体は崩れ、さらさらと灰になっていった。


 倒すべき敵はあと1体!


「アンブラ来て! 【鎧化アムド】するよ!」


「ククク……任せろ! 我が王よっ!」


 こうして僕は彼女を纏い、漆黒の魔導士メイジのような姿になった。


 そして動けない隙だらけの敵に闇魔法を連打したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ