反射
「ほっ」
飛んできたボールをダイレクトで打ち返す。ただそれだけの一瞬の出来事。だがその出来事が起こった瞬間、周囲の時間が止まった。打ち返したボールが誰もいない明後日の方向に飛んで行ったならここまではならなかっただろう。しかし、ボールは直線を描き、まっすぐ部員の足へ収まった。
「……すげぇ」
今声を発したのは柿原か、それともサッカー部の部員か。そんなこともどうでもよくなるぐらい私は動揺していた。
「…………やべ」
「山吹さん、サッカー部入んない?」
「いやっ……その……」
「絶対入るべきだよ! さっきのすごかったもん!」
あれからずっとこんな感じである。私の名前を知っているということはこの男子も一緒のクラス何だろう。
「お~い高宮ぁ。大和が困ってるだろ。勧誘はいいけどもっと落ち着いてやれってぇ」
勧誘自体を止めてほしいんだが。
「柿原、帰宅部のお前には関係ないんじゃないか? そもそもお前は学校の案内なんて親切するタイプじゃないだろ。まさか狙ってんのか?」
「なんのことだかさ~っぱりだな。お前のテンションは疲れんだよ。わかんないかなー、せっかくアドバイスしてやってんのに」
ん? なんか険悪な雰囲気になってない?
「も、もしかして二人って仲悪い?」
「「いや全然!!」」
少なくとも息は合うようだ。
「まぁ今決めなくてもいい。でも少しだけ見学してくれないか。うちの実力や雰囲気を知ってもらいたいからさ」
「ま、まあそれくらいなら……」
年中ベンチという苦い思い出があり正直サッカーはもうやらないと決めているのだが、そこまで言われちゃしょうがない。