地獄
静岡では見慣れた光景でも新しい土地で見るサッカーはどこか新鮮だった。
サッカー。秋田に来るまで私が多くの時間を費やしたスポーツだ。
サッカー部の部員は見た感じ九人。今は四対四のミニゲームをやっていた。
(この人数じゃあ試合にも出れないな)
サッカーの試合は基本的に十一対十一。まともにサッカーをしたいなら最低でもあと二人は必要だ。
「大和ってサッカーやるのか?」
「う、うん。ここ来る前にやってた」
サッカー部のゲームをしばらく見ていると柿原が話しかけてきた。
「ほぉ、そうなんだぁ。じゃぁサッカー部入んのか?」
「……いや、無理」
もともとサッカーはやめるつもりだったが部活の雰囲気を感じて決意が固くなった。
「(ザ・陽キャみたいな会話)」
「(大声でミスをした部員をいじり倒す発言)」
「(下品な下ネタ)」
…………地獄?
そういえばそうだった。サッカー部なんてどこもこんなもんだった。純粋なサッカー少年ばかりいるサッカー部は漫画やゲームだけの話だ。絶対入りたくない。
「こ、ここはもういいかな」
そういって私はさっさと立ち去ろうとした。……が、そうはいかなかった。サッカーの神様なんてものがいるなら私はそいつを許さない。
部員がボールをコート外へ蹴り飛ばしてしまい……よりにもよって私のところへそのボールが飛んできた。




