表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春アレルギー男、恋愛脳女を嘲笑う  作者: 十日兎月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/23

二十二話 やっと平穏が戻ってきた……と思いきや



「はい、結果発表~。どんどんパフパフ~♪」



 あの恐喝未遂事件から数日が経った、とある平日。

 そして部室を懸けた勝負の最終日でもある今日の放課後……俺と光守たちは佐伯先生に呼ばれて、文芸部の部室に集まっていた。

 そうして呼ばれて来てみれば、椅子に座って優雅に足を組んでお茶(しかも当然のように用意した覚えのない湯呑で)を飲んでいた佐伯先生に出迎えられたのだが、開口一番に聞かされた言葉が、先のあれだった。

「いや、どんどんパフパフって。俺らの年代にしてみれば、それってけっこうな死語ですよ? 今となっては『死語』という単語自体が死語と化してきているのに、思わず口にしてしまったくらい、なかなかに化石じみた──」

「黙れ影山。次にジェネレーションギャップを感じさせるような発言をしたら、あんたの骨を二百六本へし折るわよ」

「ほぼすべてじゃないですか」

 ほとんど殺すと脅しているのと、なんら変わらない。

「それはともかく。みんな、ひとまず座りなさい。いつまでもそこで立っていたら疲れるでしょ?」

 俺はさっきのやり取りだけですでに疲労を感じているのですが。

 なんて愚痴は当然漏らさず、溜め息をつきながら自分の椅子に座る。それを戸惑うように見てから、光守たちも適当に椅子を引っ張りだして壁際にそれぞれ座った。

「ん? どうしたの金髪ちゃん? そんな微妙そうな顔をして。なにか気になることでもあるの?」

「……気になるっていうか、この間の事件があってから、影山と顔を合わすのは少し気まずいっていうか……」

「この間の事件って、前に電話で金髪ちゃんが話してくれたやつ?」

 こくり、と俺から視線を逸らしながら佐伯先生の問いに首肯する光守。

「影山を見ていると、どうしてもあの時の事件を思い出しちゃって……。ていうか先生、勝負の結果を伝えるだけなら、電話だけでもよかったんじゃないの?」

「まあまあ。その話は金髪ちゃんからも聞いたけれど、あれからみんなの顔を見れていなかったし、こうしてちゃんと元気な姿を見たかったのよ。あとでネットニュースでも見たけど、なかなかひどい連中だったみたいだし」

 その記事なら、俺もあの事件があった翌日に読んだ。



 簡潔に事件の顛末だけ話すと、ゴミ女とその二股相手であったクズ(とその手下)は、俺が通報したのもあって、全員警察に逮捕された。



 逮捕と言ってもゴミ女だけは全身打撲と骨折によって警察病院にて入院中らしいが、クズどもの方は未だに取り調べを受けているらしい。

 というのも、調べている内に他にも余罪が山のように出てきたようで、すぐに裁判とはいかなかったらしい。

 記事だとゴミ女の方も治療が終わり次第、詳しい事情を訊くとのことなので、こいつもこいつで色々と余罪が出てくることだろう。今回が初めてではないようなことを嬉々として語っていたくらいだし。

「なんにせよ、みんな無事に済んでよかったわよ。もしも金髪ちゃんたちの身になにかあったら、世間からバッシングされて酒も飲めない日々を送っていたかもしれないし……」

「おいこら、不良教師」

 この期に及んでまだ酒にこだわるのか、このダメ人間は。

「じょ、冗談よ。半分冗談!」

「半分でも冗談になりませんよ。見てくださいよ、こいつらの白い目を」

「や、やめて! そんな下等生物を見るかのような目をあたしに向けないで!」

 光守たちの冷ややかな目に、顔を背けて非難から逃れようとする佐伯先生。本当にダメな人だ……。

「ていうか! それを言うなら影山だって人のこと言えないじゃない! 最初から影山がデートに行かなかったら、危ない目に遭わずに済んだのに!」

「それ、こいつらにも言われましたけど、そもそも先生がこんな勝負を持ち出さなかったから、こんなことにはならなかったとは思いませんか?」

「思いませ~ん。だってあたし、影山と金髪ちゃんとの争いを取り持っただけだも~ん」

「でもこの勝負、ぶっちゃけ先生の匙加減ひとつでどうにでも結果を捻じ曲げられましたよね? 俺が恋をしようがしまいが、結局のところ、先生の判断次第で勝敗が決まるんですから」

「あ。言われてもみればそうかも。影山に恋をさせろとは言われたけれど、先生に言質を取れとまでは言われてないし」

「つまり私たちって、先生の気分次第で結果が変わるような、曖昧な勝負をしていたってこと? それって……」

「なんか、今までの苦労ってなんだったのって感じよね。部室を勝ち取るためにあれこれ頑張ったっていうのに……」

「うん……。鳴ちゃんなんて男装までして、それが紗雪さんに気付かれちゃったりしたのにね……」

「あの時は大変だったっスねー。まさか紗雪先輩が助けに来てくれるとは思わなかったので、色々と落ち着いたあとに男装していない自分の姿を指摘された時は、どうしようかと返事に困っちゃったスよー」

 あー。そういえばそんなこともあったな。幸いと言うべきか、これまでの事情を吐露したあとに全員で頭を下げたことでどうにか許しを得たが、大空が女子だと発覚した途端、見るからに落ち込んでいた紗雪の姿が今でも脳裏から離れない。

「まー、女子とバレた今でも仲良くさせてもらっているので、自分としては結果オーライって感じっスけどね」

「ケモミミちゃん、すごく良いこと言った!」

 と、さっきまで我関せずとばかりにそっぽを向いていた佐伯先生が、ここぞとばかりに声を張り上げた。

「最終的にはお互いに納得のいく勝負が付いたわけだし、結果オーライってことでいいじゃない! 大団円ばんざい! だから、あたしはなんにも悪くない!!」

 うわ。開きやがったよ、このダメ教師。

「さて、話も一区切りついたところで、そろそろ結果発表に戻るわよ!」

「露骨に話を逸らしましたね」

「影山、シャラップ! はい、どぅるるるるるるる~!」

 しまいには口でドラムロールを始めてしまった。なんでこんなにテンションが高いのやら。さてはもう飲酒済みか?

 などと嘆息する俺をよそに、佐伯先生は焦らすように長々とエアドラムをやったあと、締めに「じゃじゃん!」とシンバルを力強く叩くような音を口にして声高に告げた。



「勝者、影山ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



「……まあ、そうでしょうね。元からそこまで期待してなかったけれど」

「うん。私もそんな気はしていたかな」

「というより、わざわざ言われるまでもないことっスよね」

「あれ!? みんなして反応が薄い!? なにゆえ!?」

 いや、なにゆえって。逆にこっちが訊き返したいくらいなのだが。

「だって、あんな事件があったあとだもの。いくら先生の気分次第で決まる勝負だったとしても、あの状況から逆転勝ちできると思えるほどバカじゃないわよ」

 と、もはや口を開く気分にもなれなかった俺の代わりに、光守が至極真っ当な意見を言ってくれた。

 お前もたまにはまともなことを言うじゃないか。いいぞ、もっと言ってやれ。

「そもそも、影山が非協力的すぎたのよね。ウチたちがなにをしても嫌そうな顔ばかりで全然積極的になってくれなかったし。これならそのへんにいる虫にでも恋をさせた方がまだ楽なくらいだったわよ」

「麗華ちゃん、さすがにそれは言いすぎだと思うよ? 種類にもよるけれど、虫でも求愛行動くらいは普通にするから。だから影山くんと虫を比べるのは失礼じゃないかな」

「つまり先輩は虫以下ってことっスね。あれ? 先輩ってなんで生きているんスか? 惰性っスか?」

「おいこら。黙って聞いていれば、好き勝手なことばかり言ってんじゃねぇよ」

 しまいには、男女平等パンチをお見舞いしてやるぞ、てめぇら。

 まあなんにせよ、と軽く自分の肩を揉みながら俺は佐伯先生に視線を向ける。

「どうにか俺の勝利に終わってホッとしましたよ。もしもこれで俺の負けだったら荒ぶっていたところでした」

「えー? なんかつまんなーい。そういう淡泊な反応じゃなくて、もっとみんなが一喜一憂する姿を面白可笑しく見たかったのに~。あたしが求めていたリアクションはこれじゃない~っ」

「……先生って、本当にいい性格していますよね」

「でしょー? よく褒められるわ~」

 と、先ほどまで唇を尖らせていたと思えば、ふふんと子供のように胸を張る佐伯先生。

 いや、そういう意味で言ったわけではないし、むしろ貶したつもりだったのだが……まあいいか。ツッコミを入れるのも面倒くせぇ。

「とにもかくにも、これで文芸部は存続ってことでいいですよね? 余計な付属品まで付いてきてしまいますが、そこは大目に見るってことで許容しましょう」

「ちょっと。付属品って、もしかしなくてもウチたちのこと?」

 などと半眼で見てくる光守に、

「逆にお前ら以外のだれがいるって言うんだ、この付属品ども」

 と嘲笑と共に言い返す。

「こいつ、マジでムカつく! なんでそこまで言われなくちゃいけないのよ!?」

「仕方ないよ、麗華ちゃん。勝負に負けたら部員になるって約束だったし。仮にも部員に対して付属品扱いはどうかと思うけれど……」

「うわー。これから毎日、先輩に嫌味を言われるかもしれないなんて、軽く地獄っスね」

「はっ。好きに言え。どれだけ文句を垂れたところで、今さら判定は覆らねぇよ。ですよね、先生?」

「ん? まあ、そーね」

 ほら見ろ。くけけけ。所詮は負け犬の遠吠えよ!

 さーて。これでめでたく文芸部の存続が決まったことだし、これからは腰を据えて部室に入り浸れるな。

 懸念事項があるとしたら付属品もとい光守たちの存在ではあるが、俺という仇敵がいる以上、そうそう頻繁に部室で過ごすような真似はしないだろう。鍵は部長たる俺が保管することになるし、部室の中を光守たちの好きにされる心配もない。

 目障りであることには変わりないが、これも気楽な孤高ライフを送るためだと思って、潔く譲歩してやろうじゃないか。我ながらなんて寛大な対応だろうか。



「あ、そうそう。みんなには言い忘れていたけれど、ここ、新しく申請する関係で部活名が変わるから」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ