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地味子の地味な異世界転移  作者: 汐とまと
第1部
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71/75

特別編 1周年!

地味子の地味な異世界転移1周年!

これまで読んでくれた皆さまに超絶感謝。。

※これでもかとメタ発言が飛び出します

苦手な方はご注意ください


夜中の0時すぎ。外はすっかり暗くなり、足元のおぼつかない酔っ払い以外に人通りはほとんどない。

ギルドの寮の最上階一番奥にある無駄に広い部屋、普段何に使われているかさっぱり分からない会議室に、ギルドメンバーが召集された。


正方形に並べられた机を囲っているのは、私、アンジェ、アデル、キトゥン、ヒューゴの5人。よくギルド内で顔を合わせるいつものメンバーではあるんだけど、これから一体何が始まるんだろう?

何故か私の隣の席が空いているけど、後から誰か来るのかな?


壁に掛けられた時計が49分を示す。

それとほぼ同時に口を開いたのは、議長のポジションに座っている妖精アンジェ。


「今日集まってもらったのは他でもないわ。ついに来てしまったのよ。」


アンジェ以外のみんなが顔を見合わせて首を傾げる。どうやらこの会議の議題を知っているのはアンジェだけみたい。

私たち全員の疑問を代弁したのはこの場で唯一の男子、『天翔』のヒューゴ。


「アンジェ、来たって何がだ?」

「良い質問ねヒューゴ。今日といえば当然、あの日よ。」


あの日・・・?

今日何かあったっけ? 誰かの誕生日? それとも野菜の特売日?


「わかったよアンちゃん。ズバリ女の子の日なんでしょー! あれすっごく痛いもんね。気持ちはわかるよー。」


真っ先に回答したのは元気いっぱいの獣人、『炎猫』キトゥン。さすがはギルド屈指の実力者、ドヤ顔も回答スピードも一流だ。

ただ、唐突なセクハラ発言はどうかと思う。


「妖精に生理なんてないわよ。前から気になってたんだけど、あれってそんなに痛いの?」

「うそぉ?! 同じ女の子なのにあの痛みを知らないなんて・・・それでもギルドの一員かー!」

「ごめん、意味が分からないわ。」


男の人もいるってのに何の話をしているんだろう・・・。


「まだまだだなキトゥン。今日といえばアレしかないだろう。」


次に発言したのはギルド最強候補の1人、『砕剣』のアデル。こちらもまた得意げに笑みを浮かべている。


「あら、アデルはわかっているみたいね。」

「ふっ、当然だ。3か月以上も前に発売が決定したがそれ以来公式からの発表は無し・・・今か今かと待ち続けついに本日発売! そう、今日は王国聖騎士団のマスコットキャラクター、ルリホワちゃん抱き枕の発売日だ!」

「ちげーわよバカ。」

「そういうわけで早朝から列に並ぶためにそろそろ寝たいんだが。」

「買いたけりゃ勝手に買いなさいよ。ただし寝るのはまだ許さん。」


アデルは本当に可愛いもの好きだなあ。ていうか聖騎士団にマスコットなんていたんだ。どんなキャラかイマイチ想像できない。


「あんたたち、これだけ人数いるくせに、今日が何の日か本当にわからないわけ?」


アンジェはそう言うと呆れたようにため息をついた。


「そろそろいいでしょ? 何の日か教えてよ。」

「まったく、仕方がないわね地味子は。耳の穴をかっぽじってよく聞きなさい。」

「うん。」

「今日は・・・。」


大きく息を吸い込み、やたらと焦らす。


「地味子の地味な異世界転移、1周年よ!」


「あー・・・。」

「反応薄っ! あんたたちわかってんの? 1周年よ、1周年。投稿開始から1年も経ったのよ? これほどおめでたい日は他に無いじゃない。」

「うーん、それはそうなんだけどあんまり実感ないなあ。」

「あんた主人公としての自覚足りないんじゃないの? シャキッとしなさいよ。」

「そ、そんなこと言われても・・・。」


よくわからない理由で叱られるも反論できない私。自覚と言われると、確かにほとんど無いかもしれない。なんだか自分が情けなくなってきた。


「主人公とか言われたって何すればいいかよくわかんないし、ギルドにはアデルみたいなカッコいい人やキトゥンみたいな可愛い子だっているし、わざわざ私が主人公やらなくたって、もっと相応しい人たくさんいるし・・・。」

「やばい、久々にネガティブ思考が再発しちゃってるわ・・・! 落ち着いて地味子、あんた以外に主人公なんてありえないわ!」

「ちょっと前まで7話もフルに使ってシャンメリの過去編とかやってたし、もうあの子が主人公でいいんじゃないかな・・・。私なんて地味だし。地味子だし。ゴミ子だしぃ・・・。」

「落ち着いてってば! 私が悪かったから! お願い泣かないでぇぇぇ!!」




________________________________________




「さて、地味子も泣き止んだところで・・・そろそろ本題に入るわよ。」

「ご迷惑をおかけしました・・・。」


キトゥンに撫でられ慰められながら、私は平常心を取り戻す。


「本題って何を話すんだ? 1周年だから、読者の皆様に感謝の言葉を伝えるとか?」


この場で唯一の良心、ヒューゴが話を進める。


「まあ、それも捨てがたいわね。」

「捨てがたいってことは・・・他にも何かやることがあるのか?」

「だから、それを今から決めるのよ。」

「まだ決まってなかったのかよ!」


だから会議室に召集されたのか。

地味子の地味な異世界転移、投稿開始は確か今日の0時49分。もうとっくに過ぎちゃってるけど・・・。


「さ、なんかテキトーに意見出しちゃってよ。アデルは何かやりたいこととかないの?」

「それはもちろん、ルリホワちゃんのぬいぐるみを・・・。」

「あんたは一旦ぬいぐるみから離れなさい。」

「はいはーい! ボクから1つ提案がありまーす。」


元気よく手を挙げるキトゥン。


「何かやりたいことでもあるの?」

「うん。こういうメタメタしい回ってさ、よく作者本人がゲストとして登場したりするでしょ? そういうのってどうかなー?」

「あぁ、汐とまとをここに呼ぶってわけね。悪くない提案だわ。」


・・・今更なんだけど、今回メタ発言多すぎじゃないかな? これ大丈夫? 作者の名前まで出ちゃってるけど。


「悪くはないけど却下。何故ならゲストは他にいるからよ。」

「他って、俺たち以外に誰か呼んでんのか?」

「もちろんよ。せっかくの1周年だってのに、いつものメンバーじゃつまらないでしょ? 今回は本編とは無関係ってことで、超大物に来てもらってるわよ。」


アンジェはそう言うとテーブルの上から飛び立ち、入り口のドアを開けた。


「もう入ってきていいわよ。」


部屋の外にいるであろうゲストを呼び込む。一体誰が来るんだろう・・・こういう場だし、やっぱりギルドマスターかな? それともアンジェが大物って言うくらいだから、シェブールで大人気の芸能人とか?


聞こえてきたのは地面に杖をつくような音と、綺麗な鈴の音。

ドアの陰から姿を見せたのは、全身を白で染めた小柄な女の子だった。


見覚えがあるなんてもんじゃない・・・。


「・・・お邪魔します。」

「1周年記念ゲスト、シャンメリよ!」


私、アデル、キトゥン。3人の心臓が一瞬止まりかけた。


「えっと・・・え?」

「うそ、本物なのー?」


私とキトゥンは驚きを隠せないでいる。アデルは何も言わずに大剣ティルウィングを構えた。


「どうしたんだお前ら? あの子誰?」


そっか、ヒューゴは面識なかったっけ。

私たちの目の前にいるのは国家繁栄の基盤ともいえる、シェブールにおける最重要人物、22人の世界秩序のうちの1人『女教皇』シャンメリ。魔界の精鋭部隊、七魔戒将を手駒にしシェブールの平和を脅かす・・・っていうか私たちの敵! 現状のラスボス候補!!


「ほら、そんなに気構えないの。今日は敵味方無しに無礼講よ。」

「そんなこと急に言われても・・・そもそもどうやって呼んだの?」

「ナイショ。」


シャンメリは私たちの様子を見渡すとゆっくりと歩き出し、空いていた私の隣の席に座った。

しばらくの静寂。仮にもすぐ真横にいるのは、私が想像できない程の膨大な力を持つ敵。1つ間違えれば木端微塵は免れない。何を喋っていいかわからないよ・・・。


「・・・妖精さん。」


シャンメリが満を持して口を開いた。一体どんな発言が飛び出すのか。


「・・・私、ミルクティーでいいですよ。砂糖多めの。あとはケーキなどがあればより良いです。」


いきなり図々しいな。そんなものすぐに用意できるわけ・・・。


「地味子、何をボサッとしてるのよ! 早くミルクティーを淹れてきなさい!」

「はい・・・?」


シャンメリから注文を受けた瞬間、血相を変えて指示を出し始めるアンジェ。


「キトゥンはさっさとケーキ買ってきなさい!」

「えぇっ?! こんな時間に開いてるお店なんてないよー?」

「じゃあ作りなさい! 今すぐ!」

「わ、わかったよぅ。いくよひぃちゃん!」

「いやだから、あの子は誰なんだよ?!」


キトゥンはヒューゴの腕を引っ張りキッチンへと消えていった。


「アデルはティルウィングを片付けてじっとしてなさい!」

「え、あ・・・すまん。」


言われた通りに大人しく椅子に座るアデルを尻目に、シャンメリに聞こえないよう私はアンジェに耳打ちをする。


「ねぇ、何やってんの?」

「仕方ないじゃない! 冗談で声かけたのに、まさか本当に来るだなんて夢にも思わなかったのよ!」

「一番ビビってるじゃん・・・。」

「う、うっさいわね!」


とりあえず私たちは寮内のキッチンへと駆け込み、言われた通りのものを用意した。ギルドの事務担当兼メイド兼寮母、エルーの私物ボックスから拝借した高級茶葉のミルクティーと、ヒューゴお手製ショートケーキ。


「・・・ごちそう様でした。」


それらを綺麗に平らげたシャンメリは相変わらず無表情だけど、どこか満足げに見えなくもない。

それを感じ取った私はここぞとばかりに話しかける。キトゥンやアデルも後ろで見守ってくれている。

勇気を振り絞るんだ私! ファイト一発、私!


「えっと、シャンメリさん?」

「・・・なんですか、永瀬佑子。」

「今日は地味子の地味な異世界転移1周年ということでゲストに来ていただいたわけなんですけど、何か一言いただきたく・・・。」

「・・・なるほど、そういうことですか。」


あれ、まともな会話になってる? 私の言葉なんか耳を貸してもらえないと思ったけど、意外といける?


「・・・ところで、読者の皆様へのお礼はもう済ませたのですか?」

「え?」

「・・・まさか、まだなのですか? 信じられません。全員そこに正座なさい。」

「あの、シャンメリさん?」

「・・・早く。」


言われるがまま、私たちは床に正座した。


「・・・いいですか? 読者の皆様への感謝の気持ちは忘れてはいけません。読者様がいてくれるからこそ、私たちは今ここにいられるのです。物書きの才能皆無の汐とまとが小説を書き続けられるのも、読者様がいるからこそ。あなたたちはそれを自覚し、恥ずかしくない行動をですね・・・。」


えっと、何これ?

なんで私たち、敵に説教されてるの? どういう状況?

しかも一番まともなことを言ってるというか、正論過ぎてぐうの音も出ないんだけど。


「・・・大体あなたたちは主人公サイドとしてもっと・・・む、少しお喋りが過ぎたようですね。」


シャンメリは壁の時計を見ると説教をやめ、出口へと向かった。


「・・・私は早朝から本日発売の聖騎士団マスコット、ルリホワちゃんの抱き枕を買いに行かなければならないので、このあたりで失礼します。今度お邪魔する時はチーズケーキとハチミツ入りのホットミルクを用意しておいてください。」


そう言い残すと、煙のようにすぅっと消えてしまった。

怒涛の展開過ぎて、未だに思考がまとまらず頭がついて行けてない。夢、じゃなかったよね。現実だよね。

緊張が解けての安堵からか、今さら全身から汗が噴き出してくる。


「いやー、びっくりしたわね。どうなることかと思ったけど、何事もなく済んでよかったわ。」

「いいわけないだろう・・・。」


アンジェはアデルとキトゥンに挟まれる。アデルは大剣ティルウィングを手に、キトゥンは炎の魔力を解放している。


「なぜ私たちが敵から説教を受けなければならないんだ?」

「ていうかせっかくの記念日なのに、いいとこ全部シャンメリに持って行かれちゃったよー!」


2人とも珍しく怒ってるなあ・・・気持ちはわかるけど。


「お仕置きの覚悟はできてるな、アンジェ?」

「あつぅいお灸を据えてあげるねー。」


これはちょっと擁護するのは無理かな。


「まあまあちょっと待ちなさいよ。過ぎたことだし水に流して・・・。」

「問答無用!!」


夜のギルド寮に妖精の叫び声が響き渡る。

まあ、自業自得ということで。


「なあ地味子ちゃん。結局シャンメリって誰だったんだ・・・?」

「それはこの小説を読んでみればわかると思うよ。」


それにしても、せっかくの1周年がこのまま終わるのはなんだか納得いかないなあ。アデルとキトゥンはアンジェをお仕置き中だしヒューゴはまだ状況を掴めてないご様子。でもシャンメリの言ったことはもっともだし、私だけでも・・・。


私は読者の皆様へと向き直った。



「えっと、大忙しな特別篇になっちゃってごめんなさい。こんな私たちですけど、これからも応援してくれると嬉しいです。」


読者の皆様がいてくれるからこそ、私たちは・・・。


「2年目も精一杯頑張ります。これからもよろしくお願いします!」







これからも精進致します。

どうか優しい目で見守っていてください!

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