48話 幽闇に揺蕩う白の少女 ②
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@shiotomato_jimi
幽霊探しに乗り出したアンジェ。それに渋々ついてきた私とアデル。ただでさえそういうの苦手なのに自分から見つけ出そうとするなんてありえない・・・。
しかもまだ正午過ぎ。清々しいくらいの快晴で幽霊なんて出そうもない。
それに何か・・・。
「地味子、どうかしたの?」
「なんて言えばいいんだろう。町の様子が・・・変?」
「そう? いつも通りに見えるけど。」
なんだか人がいつもより多いっていうか、ガラの悪そうな男の人が多い気がする。気のせいならいいんだけど、なんだか嫌な予感。
「ねぇアンジェ、そろそろ帰ろうよ。まだお昼だし今ならまだ引き返せるよ?」
「なーに言ってんのよ。おばけに会えるなんてことそうそうないわよ? もし会えたらサイン貰わなきゃ!」
アンジェのテンションが無駄に高い。今からアイドルのコンサートにでも行くのかってくらいワクワクしてる。どうやら怖いもの好きらしい。
一方のアデルはというと・・・。
「・・・な、なんだ地味子。なぜこっちを見る? もしや私の背中に背後霊でもいるのか?! だ、大丈夫だ、塩持ってきたからな! こうやって塩を塗れば・・ふふふ・・・。」
超びびっていた。
真っ青な顔で薄ら笑いを浮かべながら、手掴みで持参した塩を肩に擦り込ませている。もう片方の手はギルドを出てからずっと私の制服の裾を掴んでいた。
「怖いのはわかるけどちょっと動揺しすぎじゃないかな?」
「ど、動揺などしていない。これは何時如何なる方向からの攻撃も対処するために警戒をだな・・・。」
震えながらも必死に強がっているアデルが可愛い。からかいたくなってきた。
「あ、アデル! 後ろに恐ろしい顔の男の人が・・・!」
「ひっ! いや・・・こっちに来るなあああ!!」
「もう、大袈裟なんだから・・・ってうわあああ?!」
恐怖のあまり街中で大きな叫び声を上げたかと思えば、ティルウィングを掴み振り回し始めた。鋭い刃が私の前髪を掠める。
「どこに行った?! 姿を現せ悪霊! 切り刻んでワイバーンのエサにしてくれる!!」
「ちょっ、危ない! 何てことしたのよ地味子!」
「ま、まさかこんなに取り乱すなんて・・・アデル落ち着いて~!」
白昼堂々大剣を振り回すアデル。周りにいた人々もそれを見て慌てて逃げ惑う。このままじゃいつか怪我人が出ちゃうかもしれない。
「ストップストップ! これ以上はまずいってば!」
「止めるな地味子! 悪霊の存在など許すわけにはいかない・・・この手で叩き斬る!」
「その前に通行人を叩き斬っちゃうよ! こうなったら・・・!」
危険を承知でしがみついてでも止めようと、私が心を決めて暴れるアデルに近づこうとする。
その時・・・。
ゴンッ。
鈍い音が響き渡った。
「あっ・・・。」
アデルもその音と感触で何が起こったかわかったらしく、すぐに我に返った。
近くにいた男の人がうつ伏せに倒れた。気を失ってピクピクしている。大剣を振り回すアデルの腕が男の人の頭にぶつかったみたい。
やっちゃった・・・。
「ちょっとあんた、大丈夫?! しっかりしなさいよ!」
私とアンジェは慌てて倒れた男の人に駆け寄る。
すると街中にいたガラの悪い男たちが一斉に私たちを睨んだ。ざっと見ただけでも20人以上はいる。
な、何・・・何が起こったの?
「おいそこの女! 物騒なもん振り回しやがって、どう落とし前つけてくれんだテメェ!」
「わ、私はわざとやったわけでは・・・。」
そのうちの1人がアデルに詰め寄る。
「誠意を見せろっつってんだよ!」
「だから謝っているだろう・・・?」
「おい、あまり俺を舐めてると裏ギルドの連中が黙ってねぇぞ?」
「・・・何?」
裏ギルドって何だろう。そのワードを聞いた途端、アデルの顔つきが変わった。申し訳なさそうな表情から一転、敵を見るような鋭い目つき。
「貴様、今裏ギルドと言ったか? 話を聞かせてもらおうか。」
「ま、まさかテメェ・・・表の人間か? それとも警備隊?!」
「ご想像にお任せしよう。」
アデルが男の首根っこを掴み持ち上げると、周りに群がる不良たちが血相を変えて怒鳴り声を上げ近づいてくる。私たちはすぐに囲まれてしまった。
「何しやがんだコラァ!」
「痛い目見ねぇとわかんねぇようだな!」
顏近い、ていうか怖っ・・・。
「むさ苦しいわね、こんな奴らさっさとぶっ飛ばしちゃいなさいよ!」
「いや、ここで戦闘を行うのは危険だ。町民を巻き込む恐れがある。ここは・・・。」
アデルは私の手を取りアンジェの身体を鷲掴みにし、男たちを掻き分けて走り出した。
「どこ行くの?! それに裏ギルドって・・・。」
「ちょっと、なんで私は全身手掴みなのよ! まるで物みたいに・・・わわっ、振り回さないで!」
「とりあえず人気の無いところに逃げるぞ。このまま撒くのもアリだが、裏ギルドと聞いて黙っているわけにはいかない。迎え撃つ。」
いや、だから・・・裏ギルドって一体なんなの?!
アデルは男たちが見失わない程度にスピードを調整しながら走り、路地裏に逃げ込んだ。アデルにとっては抑えてるつもりなんだろうけど、正直私はそれについていくのに必死だった。
私たち以外誰もいない埃っぽい路地で息を整える。この奥は行き止まりになっている。
「はぁ、はぁ・・・な、なんとか・・追いついた・・・・。」
「ここまでくれば人もいないし大丈夫だろう。地味子、アンジェ。戦闘準備をしろ。」
戦闘準備って言ってもアデルいるし、私必要ない気がする。
「それより裏ギルドって何なの? 私にはただのヤンキーの集団にしか見えないんだけど。」
「政府に認められた私たち正規ギルドとは違い、裏社会で秘密裏に活動しているギルドのことだ。舞い込む依頼も表のそれとは違い、暗殺や誘拐など法で禁止されているものが多い。シェブールの汚点であり抱える闇の1つだ。」
ただの不良集団じゃなかったんだ・・・。
「それも問題だが、今はそんなことはどうでもいい。」
「どうでもいいの?!」
「厄介なのはシェブールに現存する10以上の裏ギルド、それら全てを統括する1人の魔人族の男だ。」
魔人族・・・。
シャンメリと七魔戒将たちの姿が頭に浮かぶ。彼女たちと対峙した時の息の詰まるような緊張感と威圧感。肌を突き刺すような底知れない力。
「複数のギルドを1人で仕切ってるっての?! かなりヤバい奴じゃない・・・さっきのアデルの粗相で目付けられちゃったらどうすんのよ!」
「私も噂に聞いただけだが、その手腕はかなりのものらしい。」
嫌なこと思い出しちゃったな・・・。
「名前はデュジョン。『幽闇の死霊王』と呼ばれる七魔戒将の一角だ。」
そう、その七魔戒しょ・・・・・・。
・・・・・・ん?
・・・聞き間違いかな?
「ねぇ、アデル。今なんて?」
「自分の耳を疑う気持ちもわかる。随分と豪華な二つ名が付いたものだな。死霊王などと・・・。」
そこじゃねーよ。
「し、七魔戒将って・・・。」
「見つけたぞコラァァァ!!」
聞き間違いを正す間もなく裏ギルド軍団の怒声が静かな路地裏に響き渡り、私の声をかき消した。
「もう逃がさねぇぞ! いい加減大人しくしやがれ!」
「まったく、しつこい男はモテないわよ! アデル、やっちゃいなさい!」
アデルがティルウィング片手に、私と男たちの間に立つ。裏ギルドって言っても見たところ雑魚っぽいし、アデルなら大丈夫だよね?
けど、なんだろう・・・あの人たち、目の前で大剣を構えて臨戦態勢にまで入っているアデルを見ていない?
私やアンジェでもない、もっと別のところを見てるような・・・。
大勢のうちの1人が前に出る。
「ようやく追い詰めたぜ。そろそろデュジョン様の元へ来る気になったか?」
「・・・何の話をしている?」
「もう何年も探し続けたが、この町にいるとわかってからは見つけるのは簡単だったぜ。デュジョン様のお力のお陰でな。」
違和感は確信へと変わった。
違う・・・この人は私たちに話しかけてるんじゃない!
私たちがこの路地に入った時には、確かに他に誰もいなかった。でも今はいる。私とアデルとアンジェ、裏ギルド軍団・・・それ以外にもう1人。
この先は行き止まりなのに、他にどこからも入れないハズなのに・・・。
絶対にもう1人いる!
「だって背後に気配が・・・。」
「地味子、どうかしたの?」
昨日の夜も感じた、まったく同じ悪寒。
まだお昼だよ? まだ明るいよ・・・?
心の中で何度もそう呟きながら、勘違いでありますようにと祈りながら、私はゆっくりと振り返った。
「・・・タスケテ・・・。」
目の前にあったのは、女の子の顔。昨日の夜遭遇した幽霊の女の子。目が虚ろで青白く、半透明な・・・。
私はとりあえず深く息を吸った。より大きな声で叫ぶために。
「いやああああああっ!!」
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ミツバの町の郊外に佇む廃れた洋館。荒れた部屋の真ん中に大きな椅子を置き、まるで王様かのように鋭い目つきの男が座っている。
「おい、シャルの奴は見つかったのかよ! 小娘1人見つけるのに何日かかってんだよ役立たず共が!」
男は激しい罵声を辺りへと撒き散らす。その周りに倒れているのは血まみれになった魔人族の兵。気絶しているのか死んでいるのか、ピクリとも動かない。
「も、申し訳ありません・・・すぐに捕らえますので、どうかもうしばらくお待ちください! どうか、ご自身の部下への手出しだけは・・・!」
「ちょっと苛めただけで壊れちまうコイツらが悪いんだろ? それにこれ以上待てるわけねぇだろ。こうなりゃ町ごと破壊してやろうか?」
「そうすればシャンメリ様に今回の件がバレてしまいますよ!」
「チッ・・・面倒くせぇなあ。そうだ、いいこと思いついたぞ。」
意気揚々と男は立ち上がった。
「妖怪たちを使う。もう出し惜しみはしねぇ・・・邪魔する奴は全員消すのみだ!」
「まさか、彼らの攻撃は私たちまで巻き添えに・・・!」
「お前、さっきからうるせぇよ。」
男が睨みつけた瞬間、部下の身体が無数の見えない斬撃によって粉々に切り刻まれる。悲鳴を上げる暇もなく塵と消えてしまった。
「俺もそろそろ動くとするか。この七魔戒将、デュジョン様がな。」
ようやく七魔戒将が出てきました。物語が進む予感です。




