41話 幸せの青い鳥 ⑬
少し遅くなりましたが、累計10000PV突破しました。ありがとうございます!
これからもマイペースにゆるりと更新していきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします!
「俺を倒す・・・アデルも妖精も戦闘不能の状態で、お前が?」
2人とも地面に倒れたまま動かない。アンジェは生きているかどうかも・・・。
そこは神様に祈るしかない。
怒りにまかせてクライスにタンカを切った私。奇蹟の模倣者の光は私の感情に比例して大きくなっていく。
彼の魔力を掌握することに成功したら、たぶん勝ち目はある。
あとは・・・私が彼を捉えるだけ。
「それは無理だろうな。」
「うっ・・・!」
これまでにないくらい集中していた。わずかな動きも見逃すまいと精神を研ぎ澄ませていた。それでも・・・。
「反応すらできないなんて・・・!」
一瞬で背後にまわりこまれ、背中に打撃を受けた。
速い、重い、強い・・・!
「アデルは俺の打撃の直前、本能で体を捩り急所を外していた。それすらできないお前がまともな勝負をできるとは思えないが。」
「っ・・・! まだまだ!」
私じゃ身体能力も戦闘技術も、経験だって全然敵わない。だから考えろ! この不思議な力しか持たない私に何ができるか・・・!
クライスはこの力を恐れて魔法を使ってこない。スピードを活かした肉弾戦。それなら・・・。
「奇蹟の模倣者、解放。」
今ならちゃんと使いこなせる気がする。
いや、使いこなさなきゃだめなんだ。
今やらなきゃもうチャンスはない!
「掌握、再構築・・・。」
私が頭の中で想像した通り、白い光が薄い膜になり私を中心としてドーム状に広がった。
本当に成功した! あとは少しでも私から近づく事ができれば・・・!
「なるほど。その膜に触れると妙な力が発動し、俺の魔力が掌握される仕組みか。」
「これで、あなたは私には手出しできないはず・・・。」
「多少は考えたようだな。それに想像した通りだ。」
私の足元が突然光り出した。これは・・奇蹟の模倣者の光じゃない! アンジェの羽を傷つけた雷魔法が脳裏に浮かぶ。
やば・・・!
「本当に戦闘経験が乏しいようだな。ついさっき見た技も忘れるとは。」
足元から一閃、金色の雷撃が私の右腕を掠める。直前で気付いたからなんとか直撃は避けた、けど・・・。
「な、何これ・・・?!」
右腕に激しい痛みが走り、痺れて動かなくなる。
ちょっと掠っただけなのに・・・!
だめ・・・集中を途切れさせちゃだめ! 一瞬でも気を抜いたら隙を突かれる! 隙を見せたら攻撃される!
絶対に負けられない・・・!
「必死だな。何度攻撃を受けても集中力を切らさないよう耐え続けている。逃げる事ではなく俺を倒す術を頭の中で考えている。だが・・・。」
一瞬、意識が飛んだ。
「俺を相手にするには、遅すぎるその思考すら足枷だ。」
さっきの攻撃による痛みで集中力が一瞬途切れたせいか、いつの間にか光の膜は消えていた。
クライスの魔法攻撃が直撃した。
高濃度の魔力を帯びた雷が私の肌の上を走る。焼けるような熱が全身を駆け巡り、皮膚の感覚が麻痺して力が入らなくなる。
視界がぼやけて歪み、立っている事すらできない。
私は膝を付き、その場に倒れた。
「ようやく終わったか。エミリエットの方も王国を発動しているようだし問題無いな。幸せの青い鳥を始末するとしよう。」
それはだめ・・・!
半分意識の無い状態の中、私は倒れたままクライスの足首を掴んでいた。
「・・・なぜそこまであの鳥を庇う? お前のペットでもないし、ましてや友達でもないだろう。」
「本当・・・だよね。何やってんだろ、私・・・。」
必死に食い下がろうとする自分自身に、少し笑えてくる。
「部下を、仲間を失ったあなたの悲しみは想像もつかない。だけど、あなたがその子に手を出したら・・また悲しみが生まれる。」
「・・・。」
「そんなこと誰も望んでない・・・エミリエットも聖騎士団の皆さんも、あなた自身も・・・。」
「っ! 知ったような口を!」
再び全身に衝撃が走った。
「あぎぃっ・・・!」
さっきよりも強力な雷。手足が痙攣しまともな思考もできなくなってきた。呼吸が苦しい。体が燃えるように熱い。
これと同じ思いを、アンジェも・・・。
「なぜだ・・・?」
私を見るクライスの目が変わった。
駆逐すべき相手を見る目から、恐怖の眼差しへ。
「なぜ動けるんだお前は?!」
私は立ち上がっていた。雷魔法の直撃を2度受けた体で。
「俺の魔法が効かないのか・・・?」
「そんなわけ、ないでしょ・・・体中痛いし立ってるのもやっとだよ。辛く苦しいのは・・自分だけじゃないって思った・・・。1人じゃないって思えると、意外と何でもできたりするんだよね・・・人間って。」
「くっ・・・雷霆の鉄槌!!」
初めて焦りを見せたクライスは大技を放った。
これがラストチャンス・・・!
「お願い、奇蹟の模倣者!!」
3度目の白い光。私を優しく温かく包み込んだその光は、巨大な落雷を受け止め掌握し自身の魔力へと変換していく。その力はクライス本人にも及び、魔力を吸い尽くそうと襲いかかる。
「これが青い鳥を倒した力か・・・!」
徐々に意識が朦朧としてきた。手元が震え、うまく力を制御できなくなってくる。
ダメージの受けすぎ? それとも力の使い過ぎ?
まずい、ここで倒れたらせっかくの勝機を失う・・・しっかりしないと!
集中、集中、集中・・・!!
その時、頭の中でプツリと糸の切れるような音がした。
「あっ・・・!」
身体がバランスを崩した。奇跡の模倣者の光がクライスから離れ、近くで戦っていたキトゥンたちの方へと向かっていく。
「地味子ちゃん?!」
「な、なぜ光がこっちへ・・・くっ!」
光はキトゥンとヒューゴだけじゃなく、エミリエットまでも巻き込んで魔力を取り込み始めた。それだけじゃない。倒れているアンジェや聖騎士たちの死体からも魔力を奪おうと私を中心に広がっていく。
だめ、制御が効かない・・・!
周囲の魔力を吸い尽くしてしばらくすると光は収まっていき、次第に消えていった。
安堵と同時に私は疲れ果ててしまったのか、そのまま眠るように意識の底へと沈んだ。
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目が覚める。
辺りは真っ白。ここは雪山?
それにしては寒くない。むしろ温かくて心地がいい。
クライスから受けたダメージが嘘のように身体は動くし、いつもより元気なくらいだ。
「おはよう永瀬佑子。じゃなくて・・・今は地味子だっけか?」
久しぶりに名前で呼ばれた気がする。
振り返るとそこには、私よりも少し年下ぐらいの女の子が佇んでいた。
長い黒髪に丸く大きな目。華奢な体。白のワンピース・・・シェブールには珍しい日本人の女の子って感じ。
「誰・・・?」
「だめだよ~、神通を1日に3回も使っちゃあ。体持たないよ? 現に地味子、気絶しちゃってるし。」
「えっと・・・?」
本当に誰だろう。随分フランクに話しかけてくるけど会ったことないし、ギルドにもこんな子いなかったよね。
「・・・ちょっと待って。どうして私の力のこと知ってるの?」
このことはアンジェとアデル、キトゥン、ヒューゴ、そして聖騎士団の2人しか知らないはず。それと・・・シャンメリ。
「そりゃ知ってるに決まってんじゃん。」
「どうして・・・?」
「そうそう、アンジェは元気にしてる? あの子大食いだしさ、迷惑かけてないかなって気がかりなの。」
だめだ、この子全然人の話聞かない・・・。私の質問全スルーなんだけど。
「あ、あの! 君は誰なの・・・?!」
「え? あれ? そっか、私は知ってるけど地味子とは初対面だっけ?」
ようやく通じた。どうして私のこと知ってるんだろう。
「それじゃ自己紹介するね。」
この子は一体、何者?
「私は神。」
「・・・・・・え?」
神・・・?
「私が108の全世界を統括する神様で、地味子をシェブールに転移させた張本人だよ。」
神降臨。




