40話 幸せの青い鳥 ⑫
最近超絶マイペース気味で申し訳ありません。
40話です。目指せ50話。
「だーかーらー! ボクとひぃちゃんでラヴリィハートシュート撃てば勝てるでしょ!」
「あれ1日1回しか撃てねえよ! これ以上は魔力過多で閃天翔が暴発する!」
「たった1回?! この役立たずー!」
エミリエットの相手を任された俺ときぃ。合体技の破壊力で一気に勝負を決めようと提案されたけど、閃天翔の性能ではこれ以上負荷に耐えられない。
ちょっとがっかりするきぃ。
でも1回限りの必殺技ってかっこいいだろ、と言うときぃは喜んで納得した。
「あの、喧嘩終わりました・・・?」
見かねたエミリエットは仲裁に入ってくれた。
「では申し訳ありませんが、団長の目的達成の為に少しばかり寝ていてもらいます。」
「やだよ、こんなところで寝たら凍えちまうだろ。」
「いえ、寝るというのは倒させてもらうという比喩的なもので・・・。」
「わかっとるわ!」
「大丈夫だよー。ひぃちゃん寝ちゃってもボクが温めてあげられるしー。」
「お前はちょっと黙ってなさい。」
即興のショートコント(不本意)を終えると、エミリエットは再び魔本イデアを開いた。大量の文字が溢れ出し辺りを覆い尽くす。
「これは・・・Fire! きぃ!」
「オッケー!」
溢れかえったFireの文字が全て同時に発火し、激しく燃え上がる。高温が俺たちを包んだ。
「この炎は幻想書架による魔力で構成されています。水では消えな・・・。」
「おまたせひぃちゃん、消えたよー。」
わずか数秒でエミリエットの炎は文字ごと消えた。いや、きぃが全て自身の魔力として吸収してしまった。
「なっ・・・どうして?!」
「きぃに炎の攻撃は効かねえぞ。むしろパワーアップだ。」
きぃが魔力を解放した。聖騎士団の副団長の魔力を吸収したからなのか、いつもより遥かに高い魔力を感じる。
「それじゃあいっくよー! 戯れの撃鉄!!」
「・・・っ!」
膨大な炎の魔力をまとったきぃの鉄拳が炸裂する。威力に合わせてちゃっかり技名を変えているところがきぃらしい。
もう辺りの雪は完全に溶けきってしまっていて、雪山にいるということを忘れてしまうくらいだ。
「あ、あれ・・・?」
「私の魔力を使ってもその程度ですか。」
きぃの拳を止めていたのはGuardの文字。今度は防御魔法ってことか。あの攻撃を止めるなんてとんでもなく硬いな。
俺の出番みたいだ。
「ひぃちゃんどうしよう! 今ので魔力8割方使っちゃった!」
「計画性ゼロかお前は。ちょっとそこから動くなよ。」
頼むぜ相棒!
「閃天翔・・・千鳥!」
相棒から放たれた魔弾は一直線にエミリエットへと向かっていく。
「スナイパーライフル、ですか。そのような玩具では私に傷など・・・。」
「玩具だぁ? 節穴かよその目は。」
魔弾とエミリエットの間にGuardの文字が浮かび上がる。だが、そんなことは関係ない。
俺の魔弾は曲がる。
「ぐっ・・銃弾がガードを避けた・・・?!」
エミリエットの肩にヒットした。さすがにスナイパーライフルのスピードで直前で曲がる弾には反応できなかったようだ。
「なるほど、魔力の込められたライフルですか。厄介ですね・・・ならば大人しくしていてください。」
俺は外の世界と遮断された。
これは・・・今日散々見せられた透明のキューブか。
一度は俺たちの命を救ってくれたキューブだが、こういう状況だと滅茶苦茶面倒だな。これも書架魔法ってやつなのか?
というか・・・これどうやって出るんだ?
「あれ? 俺、詰んでる・・・?」
「ひぃちゃん、もしかしてまた戦力外パターンなの?」
「またって言うな!」
どうする・・・エミリエット相手にきぃ1人じゃ勝ち目は薄い。
「2対1は面倒ですが、1人ずつだと楽ですね。」
きぃの周囲に浮かんだのは、Bombの文字。
Bomb・・・爆弾!
「吹き飛びなさい。幻想書架・榴雷。」
エミリエットが指を鳴らすと文字は大きな音を立てて爆発する。きぃの辺りを煙が包み込むが、きぃに炎系の魔法は効かない。
「それは当然知っています。」
煙に包まれたきぃをさらに取り囲んだのは、鋭く尖ったSpearの文字。
「獣人族は身体能力が高いですから、最初に放ったFireのように簡単に躱されてしまいますからね。視界を遮ってからの方が効果的なのです。」
「おいおい、だとしてもこの量は・・・!」
Spearの文字は魔本から噴水のように溢れ出し、辺り一面を覆い尽くすくらいに増えていく。
これ全部Spear・・・槍だってのかよ!
こうなったら・・・!
「煙ばっかで全然見えないよー! 周りどうなってるの? 超たくさん魔力感じるんだけど! 怖い怖い!」
「きぃ、とりあえず落ち着いて俺の言うことを聞け!」
「ひぃちゃん・・・?」
「そのまま体を屈めて、思いっ切りエミリエットへ向かって突っ走れ!」
エミリエットはクスッと笑った。大量の魔力に囲まれている中、そんなことを行動に移す奴なんていないと思ったんだろう。
いるんだよなあ、これが。
「随分無謀なアドバイスですね。幻想書架・槍舞!」
合図とともに、Spearが一斉にきぃに迫る。
「考えるのは後だ! 」
「なるほど、言う通りにすれば攻撃を避けられるってことだね! オッケーひぃちゃん!」
きぃは昔からバカだった。落ちてる食べ物を拾って食うし、知らないおっさんについて行くし、他人の言うことをすぐに信じ込んでしまう。
でもダメなことばかりじゃない。
だからこそ、なおさら俺の言うことは何の迷いもなく信じてくれる。
「腐れ縁舐めんじゃねえぞ! 全力で行け、きぃ!」
「魔力全解放! 戯れの獣刀!!」
「うそ・・本当に突っ込んでくるなんて・・・!」
煙の中から姿を現したきぃは、長刀を模った炎を纏っていた。
パワーアップしたきぃの大技がエミリエットの腹を捉えた。
まあ・・・大技というかただの頭突きだが。
エミリエットの華奢な体が勢いよく地面を転がり雪の中に突っ込んだ。粉状の雪が舞い上がる。
俺を取り囲んでいた透明なキューブも消えたようだ。これは、倒したってことでいいんだよな?
「今回は珍しくひぃちゃんがいてくれて助かったよー。」
「珍しくとか言うなよ。割とマジで落ち込むだろ・・・ってうおおおお?!」
何か違和感を感じ視線を下げると、大きな2つの果実がそこにはあった。
きぃはいつの間にか真っ裸になっていた。
即座に両手で目を覆う。
「お、お前・・・体に巻いてた毛布はどうしたんだよ!!」
「あー、たぶんさっきの技のときに燃えちゃったんだね。ほら、ボクの服って魔力のこもった特別製だから燃えないんだよー。」
「それは知って・・・ていうか男に裸見られてなんでそんなに冷静なんだよ?!」
「別にいいじゃん、ひぃちゃんだし。」
それでいいのかお前は。とりあえず俺の上着を着せた。
「それにしてもだよ、まさかエミリちゃんに勝てちゃうなんてねー。」
「あぁ、ヤバい相手かと思ったが思ってたより・・・。」
俺の言葉はそこで途切れた。
凍りつくぐらいの寒気、全身から脂汗が噴き出るほどの威圧感、そして殺気。
全てが同時に俺たちに襲い掛かった。
「強い信頼関係下において2人が合わさることで単純な足し算以上の力になる。なるほど・・・勉強になりました。」
この声はエミリエット・・・だが雰囲気が違う。
「民間人が相手と思い気をつけて戦っていましたが、その心配は無用なようですね。幻想書架・天輪。」
純白色のWingの文字を背中に生やしたエミリエットが、まるで天使のごとく宙に浮かんでいる。これが聖騎士団副団長の本気ってやつなのか・・・?
こんなバカげた大きさの魔力は感じたことが無い。
肌で感じる魔力だけで押し潰されそうだ。天使というより、マジで怪物かもしれない。
俺1人じゃ相手できる気がしねえ。きぃも魔力を全解放したおかげで最早ただの猫耳の女の子だ。
今度こそ詰んだか・・・?
そう思った時だった。
きぃが俺の手を握った。
「きぃ・・・?」
「だ、大丈夫だよひぃちゃん。ボクがついてるから・・・。」
強がるきぃの手は俺以上に震えていた。
言ってることと真逆じゃねーか。少し笑える。
「ったく、やっぱりお前は俺がいないと何もできねえな。」
その小さな手を強く握り返してやった。その震えを強引に止めるかのように。
「あはは、やっぱりそう思うー?」
「保護者ってのは必要だな。」
「唐突な子供扱いやめてよ!」
むすっとし頬を膨らませるきぃ。やっぱり子供だ。
「腐れ縁の底力、見せてやろうぜ。」
「もちろん!」
俺たちに降りかかる魔力と威圧感はさらに増していく。
「私との差を痛感しても向かってくるなんて、蛮勇ですね。いいでしょう。」
エミリエットが魔本イデアを天に掲げた。
「私の本気でお相手いたします。」
溢れた文字は地面を、宙を、その地一体を埋め尽くす。
「幻想書架・王国。」
ここ数話、キトゥンは常時半裸です。このド変態めが。(ブーメラン




