31話 幸せの青い鳥 ③
なんだかお祭り編より長くなりそうな予感・・・。
「うお・・・風が強くなってきたな。飛ばされそうだ。」
「キトゥン、そんな薄着で大丈夫なのか?」
「ボクら獣人族は寒さに強いからねー。」
「そういうものなのね。あれ、地味子どうしたの?」
いやいやいやいや、どうしたのじゃなくて・・・。
「・・・めっちゃ寒くない?」
有り得ないくらいの猛吹雪だった。霰に近い雪の粒が高速で飛び交い、私の全身に打ち付ける。
「そりゃ寒いわよ、雪山だもん。」
「雪山ってちょっと雪が積もってるくらいかと思ってた・・・ていうか気温差ありすぎじゃない?!」
「確かにちょっと風強いかもね。」
依頼主の家の近くに雪山があると聞いて、出発前にエルーからブーツを借りてきた。今回の私準備いい~とか思っていたのも束の間、制服に黒のブーツという妙な格好で吹雪の中凍えることになってしまった。
「その格好なかなか可愛いじゃない。似合ってるわよ。」
「えー、そう? ブーツなんて初めて履いたしよくわかんない・・・。」
「ところで地味子・・・。」
「おやつは無いからね。」
「ちっ。」
(主にアンジェの大食いのせいで)万年金欠の私たちに間食できる余裕なんてない。
今回の依頼を完了したらしばらく生活が安定するから気合入れたいんだけど、これは無理かも・・・。
「風邪ひいちゃうといけないから、私だけ帰っちゃだめ?」
「別に構わないぞ。お前の分の報酬は無しだが。」
「うっ・・・。」
「地味子ちゃん寒いの? じゃあちょっとこっち来てみてー。」
そう言うキトゥンは私へ向けて両手を広げている。
私の胸に飛び込んでおいでと言わんばかりのポーズだ。
「いや、でも・・・。」
「いいからいいから!」
「わわっ・・・!」
有無を言わさず強引に引っ張られ、そのまま抱きしめられた。キトゥンの胸についた2つのたわわな果実が私の顔に押し付けられる。
柔らか・・・というか温かい?
「獣人族の体温はね、人間よりも高いんだよ。温かいっしょー?」
「う、うん・・・なんだか・・・。」
「どしたの地味子ちゃん?」
眠くなってきた。
「寝るなー! こんなところで寝たら死ぬぞー!」
「いったぁ!!」
ネコビンタをくらった。肉球ではないけど、割と本気で痛かった。
「ねぇアデルちゃん、まずは山頂を目指す感じなのー?」
「そうだな。ただこの吹雪だと今日中に登りきるのは無理だろう。洞窟か何かを見つけてそこで寝るしかないな。」
野宿ってことね。初めてだし、ちょっと楽しそうかも。
「因みにこの山の洞窟は魔物の住処になってるから気をつけろよ。」
あー・・・ですよね。
徐々に辺りが薄暗くなってきた。吹雪と相まってかなり歩き辛い。アデルやキトゥンもさすがに疲れてきたみたいで、さっきから会話もなく静かだ。ヒューゴと私も息を切らしながら必死に2人の後をついて行く。
脚が棒みたいでもう限界・・・。
アデルに至ってはどう見ても重そうなティルウィングを背負ってるのに。どんな体力してるんだろう。
とりあえず、私の肩に座って楽をしてるアンジェをぶん殴りたい気分。
「よ、よし・・・アデル、きぃ、そろそろ・・寝床をだな・・・。」
「私も・・・ヒューゴに賛成・・・。」
「えー、ひぃちゃんも地味子ちゃんもだらしないなあー。」
「とはいえそろそろ暗くなる。洞窟でも探すか。」
やっと休める・・・。
「まだ山頂まで遠いわよ? もうちょっと頑張りなさいよ。」
「うるさいクソ貧乳妖精。お前も歩け。」
「うっ・・地味子ってたまに口悪いわよね・・・。」
すっかり日が暮れた。当然明かりはないので辺りは何も見えず、洞窟の外から不気味にも思える吹雪の音だけが聞こえてくる。
キトゥンが魔法で点けてくれた火で焚火をし、それを囲むように私たちは座った。アンジェが作ってくれた野菜たっぷりのスープが美味しい。
「あれ、アデルちゃんいつの間にかいなくなってるー。」
「あいつなら洞窟の奥へ行ったぞ。魔物がいないか確認してくるってさ。」
「それって焚火の前に確認することじゃないの? アデルちゃんってたまに抜けてるよねー。そこが可愛いんだけどー。」
「アデルが可愛いって・・・お前頭がどうかしてるんじゃないのか?」
「なんでよー! ねぇ、地味子ちゃんもそう思うよねー?」
スープを飲んで和んでいた私に話が振られてくる。
「アデルはすごく綺麗だと思うけど、ヒューゴは違うの?」
「いや、そういうことじゃなくてさ・・・。」
「そういうことじゃなくて・・・?」
私は事情を知ってそうなキトゥンの顔を見る。だってやたらとニヤニヤしてたから。
「ひぃちゃんは前にアデルちゃんに襲われたんだよねー。」
「バカ! それ言うなって・・・!」
明かな動揺。それに襲われたって・・・。
「おや? あんたアデルとそういう関係だったのかしら~?」
「そうなのヒューゴ・・・?」
「ちっげーよ、そういう意味じゃねえ! ていうかきぃも誤解を生むような言い方すんな! 別に嫌いな訳じゃねえし人としてはむしろ好きだ。ただ、あいつは時々頭がおかしいんだよ。」
「頭がおかしいって、それはちょっと言い過ぎだと思うけど・・・。」
聞くところによると、ヒューゴは数か月前に、とある親子からの依頼で子供が失くしたぬいぐるみを探す仕事をしていたらしい。無事見つけて親子の家に向かってたところでアデルに遭遇、自分の部屋からぬいぐるみが盗み出されたと勘違いしたアデルにフルボッコにされたとか・・・。
「だ、だからそのことについては謝っただろう・・・?」
「うおっ、アデルいつの間に?!」
気付けばアデルは洞窟の探索を終え帰ってきていた。
「アデルちゃんおかえりー。魔物いなかったの?」
「いや、いたぞ。寒い地域にしか生息しないツンドラベアだ。」
「ツンドラベアってあの狂暴な? 呼んでくれれば助太刀したのにー。」
「お前たちならそう言ってくれると思ってな・・・。」
アデルの背後、洞窟の奥で何か赤く光ってる。微かに人間のものじゃない足音も聞こえる気がする。
まさか・・・。
「連れて来たぞ。」
赤い光の正体は焚火によって照らされた魔物の眼。背中に氷の棘を生やした巨大な白いクマが何頭もこちらへ向かってのしのしと歩いてくる。
まるで私たちをエサと認識しているかのように。
「ちょっ、何考えてんのバカー!!」
アンジェとキトゥンと私はウィーンの少年合唱団並に綺麗にハモった。
ヒューゴはやれやれとため息をつく。
「そんな奴らあんた1人でどうにかしなさいよ!」
「洞窟の奥は思ったより狭くてな、戦いにくいんだ。ひとまず外に出るぞ。」
「外は猛吹雪よ! 魔物たちは慣れてるかもしれないけど私たちには障害物でしかないわ!」
「まあ、なんとかなるだろ。」
「清々しいくらいの無責任!」
やっぱりアデルって頭おかしいかも・・・。
次回もまた読んでくれよな☆
はい、すみません。




