30話 幸せの青い鳥 ②
30話です。目指せ50話。
「遠い所から遥々とよくお越しくださった。まさか有名なあの『砕剣』のアデルさんに来ていただけるとは。」
私たちは今回の依頼主、エルマンさんにお仕事の話を聞いていた。山のふもとの村の中でも一際目立つ豪邸だった。噂によると、村の子供たちを広い庭で遊ばせたり村人全員集めてパーティーを開いたりと、けっこうな人気者らしい。
そのイメージ通り、エルマンさん自身も中年の格好いいおじさんって感じの人だ。
左目に大きな傷があるのがちょっと怖いけど。
通された部屋には壁一面に武器が飾られている。武器マニアとかなのかな。それに旗のようなものも立て掛けてある。旗に描かれているあの模様、見たことあるような気がする。
「それで? 依頼内容はここで直接話すって依頼書に書いてあったけど、どういうことなの?」
アンジェは話を進める。ちょっと態度でかい。
確かに依頼書に書いてあったのは依頼主のエルマンさんの名前と報酬額だけだった。昨日、アデルとキトゥンが掲示板の前で目を瞑りながら勘でテキトーに選んでたけど、スカルケイジの件みたいに面倒な依頼にならないといいなあ。
「依頼書に書けなかった理由は、今回の件が他言無用だからだ。」
あ、やばい。なんだか面倒なことになりそうな予感。
真面目な顔になると、左目の傷が途端に怖く感じる。
「私が依頼したいことはただ1つ。『幸せの青い鳥』の捕獲。」
「幸せの青い鳥?!」
私以外の全員が驚きの声を上げた。
え、なに? どうしたのみんな?
「それは・・・ただの言い伝えで存在しないのでは?」
「いいえアデルさん、幸せの青い鳥は実在する。それもこの村の裏手の雪山に。それを探して捕まえてきていただきたい。」
アデルだけじゃない、みんな信じられないという顔をしている。話について行けていない私はキトゥンに耳打ちした。
「ねえ、幸せの青い鳥って何?」
「シェブールに伝わる伝説だよ。その姿を見た者は幸せになれるっていうありきたりな感じの言い伝えでね、獣人族にも伝わってて子供の頃から噂程度に聞かされるんだけど・・・もちろんボクも見た事なんて無いよ。ていうか見た事ある人なんていないんじゃないかなー。」
なるほど・・・UMAみたいな感じかな。
「昔、ここの近くの雪山に幸せの青い鳥がいるという噂を聞きつけた私は、仕事仲間全員で捜索に向かったんだ。山頂付近まで登り隅々まで探したが見つからず、やむなく下山しようとしていたところで信じられない光景を目にした。」
「その光景とは・・・?」
「一緒に捜索していた仲間たち全員が突然倒れ、命を落としたんだ。」
過去最高に帰りたくなってきた・・・。
「その時私は確かに見た・・・空の彼方へ飛び去って行く小さな青い鳥を。あれは間違いなく幸せの青い鳥だ。私は運よく助かったが、その光景が頭から離れない・・・。」
「その鳥がお仲間を殺したということですか?」
「そうだ。」
どこが幸せの青い鳥なの・・・死神か何かの間違いじゃ?
「では、依頼内容はその幸せの青い鳥の捕獲。その後はここに連れてくるということでよろしいですか?」
「あぁ、よろしく頼む。」
「・・・承りました。では、失礼します。」
私たちはエルマンさんの屋敷を後にした。
さっそく雪山に登るのかと思いきや、私以外のみんなは立ち止まり考え込んだ。
「妙だな・・・。」
「アデルもそう思うか?」
「ひぃちゃんもー?」
「やっぱり変よね、あのエルマンって男。」
ちょ、私を置いて行かないで・・・ちゃんと説明して・・・!
「何が妙なの? みんな何に引っ掛かってるの?」
「地味子、あんた鈍いわね・・・。」
「う、うるさい!」
でもみんな何かに気付いてるし、やっぱり私鈍い?
「まず、エルマンは仕事仲間全員と一緒に探索したって言っていたわよね。」
「うん。」
「おそらくエルマンは騎士で、仕事仲間っていうのは騎士団のメンバーよ。」
ごめん、もう意味わかんない。
どうしてそんなことがわかるの?
「部屋に飾られてた大量の武器は地味子も見たでしょ? あれ全部使用された形跡があったわ。それに立て掛けてあった旗。あれは世界政府直属の騎士団のものよ。エルマンはベテラン騎士ってところね。」
「そういうこと・・・でも、何が妙なの?」
「個人の独断で騎士団1つを動かすなんて無理よ。政府側から何かしらの命令が下ったに違いないわ。でも、存在するかどうかも分からない言い伝えにわざわざ政府が介入してくるかしら・・・。」
「妙なところはもう1つある。」
アデルさんも口を開いた。
「今回の依頼内容が捕獲だというところだ。」
「それが何?」
「彼がどんな理由で青い鳥を探しているかは知らないが、仲間の騎士たちを瞬殺するような怪物だぞ。それに彼は村人たちに良くする人気者だ。そんなやつを屋敷のある村に連れてくることを普通許可するか?」
「でも仲間の仇だし、自分の手で倒したいとかじゃないの?」
「だったらボクたちについてきた方が早いと思うよー。」
「でもエルマンはそうしなかった。つまりはそういうことだよ。」
うちのギルドって警察や探偵か何かだっけ? みんな鋭すぎっていうか、観察力すごすぎ。別に私が鈍かったわけじゃない、と思いたい。
ただ、格好いいおじさんだなーって眺めてただけの自分が恥ずかしい・・・。
「とにかく、エルマンが何かを隠していることは明確ってことだな。これからどうするアデル?」
「まずは、青い鳥が本当に存在するか確かめよう。雪山へ登るぞ。」
みんなは準備を整えるため、ひとまず用意された村の宿屋へと向かう。
「なんだろう、既に足を引っ張っている気がしてならないんだけど・・・。」
私も慌てて後を追いかけた。
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ほぼ同時刻、村から西へ5km地点。
鎧を纏った大勢の人間が集まり、テントを張ってキャンプをしていた。ところどころに騎士団を表す旗が見受けられる。
「準備はできたか?」
「はい、問題ありません。」
「では行くぞ。王の名のもとに!」
リーダーらしき金髪の青年の前には整列した戦闘部隊が並んでいる。青年は天高く剣を掲げ、声を上げた。
「今回の任務は『幸せの青い鳥』の討伐! 聖騎士団が1つ、聖典騎士団出撃だ!!」
地味な回ですみません。次回から本格的に幸せの青い鳥編が始まりますのでよろしくお願いします。




