俺の名前をピヨールと呼ぶといろいろややこしくなるようだ
ミノア国境からコリントスに入るレヘオ街道は北レヘオ街道、中央レヘオ街道、南レヘオ街道の3本だ。
それらはミノア王国の王都で一旦一つにまとまり、再び別れて行く。そのミノアの王都以外で、この3つの街道が一つにまとまる場所が他に一つだけ存在する。
それがビックブリッジだ。
ロンダは、ここでミノア軍を待ち受けると言う。俺はすぐに反対した。どう考えても3つに別れた部隊を各個撃破した方がいいからだ。ロンダもそれは直ぐに認めた。だが個々に撃破するだけの時間がない。ならば疲れ切って伸びきった隊列の先端を叩くのが一番だと言う。
確かに俺たちがいるのはミノアと反対のマセの街だ。ここからコリントス中央を流れるオリア川付近まで来ているであろうミノア軍を各個撃破するのは間に合わないだろう。
普通ならな。
「俺とピヨール、つまりこの犬でビッグブリッジに集結する前のミノア軍を叩く」
俺がそう言うと俺の肩に乗っていたピヨールが吠える。
「ワン!」
ピヨールが吠えるなら大丈夫だ。
「お前! ピヨールの癖に! それなら俺が行く!! そっちの方が楽しそうだ!」
ロンダには戦も狩りも同じなのか? 物凄く楽しそうだ。
「だめだ。ロンダにはビッグブリッジを守ってもらう。あれを落とされたらコリントスは終わりだからな」
俺は既に立ち上がって店を出て行こうとしているロンダに言った。アンとマリアは、何かを思い悩んで黙っている。
「嫌だ。面白く無さそうだ」
ロンダは全く言うことを聞きそうに無い。俺は仕方なくアレを使う事にした。
「それは違う、ビッグブリッジが一番面白い。何故なら俺が狙うのは北か南かのどちらかの部隊だけだからだ。つまり残りの2つはビッグブリッジに同時に到達するだろう。ミノアの部隊が2つ集まればその数は5000はいるだろう。それとまともに対峙出来るものなどこの世に居ない……その……」
俺は口ごもる、アレを使うには相当の心構えがいるからだ。俺は深呼吸をして覚悟を決めた。
「お……お……お姉ちゃん……以外には……」
俺が言ったその言葉に場の空気が一変する。
「ピヨール……お前……俺のこと、今、お姉ちゃんって……」
手に持ったボウガンを落としフラフラとこちらに近づいてくるロンダ。俺はこの後、確実に抱きしめられるだろう。だがそれも覚悟している。ロンダを止める方法がこれしかないなら我慢しよう。
「ピヨール!!」
「ワン!!」
ロンダの呼びかけに犬のピヨールが反応してロンダの肩に飛び乗った。そして何故か体を光らせる。
「おお! なんだこれは!! 何だか力が湧いてくる様だぞ!! はははは!!」
ロンダの筋肉が見る見るデカくなる。
え? そんなん出来んの?
久しぶりにピヨールに驚いた。ピヨールにその力があったと言うよりはピヨールの神的な力によって、ロンダの願いが叶っているという感じだ。
「じゃ、俺、行ってくる。ビッグブリッジはお前らが何とかしろ」
ロンダはそう言って店を出て行った。




