620 入港
小人族の浮游島が見えて来た。
「結構進展してんな」
殿様がいる浮遊島ではなく、カイナが創った農業用の浮遊島がかなりの発展を見せていたのだ。
農業用なので面積があるのは当然なのだが、なかなか立派な港が二つもあり、竜機まで飛んでいた。
「……軍港か……?」
まあ、小人族の飛空船はだいたいが軍艦。民間船なんて僅かしかねーしな。
「ベー様。小人族より連絡が入り受け入れ先を変えるそうです」
「わかった。指示に従って入港してくれや」
どこに入るかは最初から聞いてねーしな、あちらと船長どのにお任せするよ。
入港もそれほど興味がねーので、展望甲板でマン〇ムタイムを続行です。
「旦那様。あの浮かんでる島に畑がありますよ」
「そうだな。あれは麦か?」
「あっちにあるのは果樹園ですかね? まだ苗木を植えた感じですが」
二人の会話からして農業用の浮遊島へ行くようだな。
コーヒーの香りを楽しみながら親父殿とオカンの会話を聞いていると、ヴィアンサプレシア号の速度が落ち、船首を右に回頭させた。
……バックで入るのか……?
普通、飛空船が入港するときは前進で入れ、タグボート的なもんが舟で回頭させる。なので格納庫や倉庫は左舷側か右舷側の扉から入れるようになっている。
だから、ヴィアンサプレシア号も両舷に扉を造ってあり、前後には緊急用の扉しかつけてない。
ちょっと気になり、椅子から立ち上がり、手すりに体を預けた。
「……ヴィアンサプレシア号ごと入れるのかよ……」
小人サイズでも飛空船はデカい。なんで、桟橋に着けるか水に浮かべるかだ。中に入れるなんて建造するくらいなもんだ。
しかも、ヴィアンサプレシア号は人類サイズ。百メートルはある。そんなもの入るんかい?
と、見てたらすっぽり入りやがった。
「……最初からそう造った感じだな……」
とは言え、ヴィアンサプレシア号一隻が入るのがやっと。プロキオンや他の船は違うところに停泊させたか。
タグボート的なもんが幾つも出て来てヴィアンサプレシア号を固定していく。
「あれもイイな」
二人乗り用のタグボート的なもの、ちょっと移動にイイかもな。生産頼もうかな?
ゼロワンを普及させるより、あのタグボート的なもんをちょっと改造した方が早いぜ。
「ベー様。下船の用意ができたそうです」
「あいよ。今いくと伝えてくれ」
メイド長さんに言い、親父殿とオカンに目を向けた。
「親父殿、オカン。二人はどうする? ここに来たのはオレの用だが、もし興味があるんなら下りてもイイぜ。まだ寝るには早いだろうしよ」
いつもより一時間以上も早く夕食はとったので、まだ明るいし、寝るまでには軽く三時間以上はある。そんだけあれば見学もできんだろうよ。
「どうするシャニラ? おれは下りてもいいと思うが?」
「そうですね。ちょっと畑を見たいです」
オカンの興味はそこか。まあ、らしいと言えばらしいがよ。
「だそうだ。ベー」
「わかった。頼んでみるよ。メイド長さん。護衛に何人かつけてくれや」
「はい。畏まりました」
展望甲板を出て搭乗口に向かうと、メイドさんが一人現れ、左舷側の搭乗口へと案内した。
搭乗口を潜ると、小人族がたくさん整列していた。
「皆。小さくするから驚くなよ」
桟橋を進みながら全員を徐々に小さくして行き、小人族のサイズに合わせた。
「お久しぶりです、ベー様」
この集団を代表してか、いかにも好青年と言った感じのあんちゃんが敬礼した。
「確か、殿様の次男だったよな?」
長男とは何度も会ったので顔は覚えているが、次男は二度か三度くらいしか会ってないので、顔がうろ覚えなんだよ。
「はい。カトラです。ベー様の案内を父から承りました」
殿様に似てねーが、嫁さんが三人……四人だったっけか? まあ、何人かいるので母親似なんだろうよ。
「大佐だったっけ? そんな高官に手間かけさせてワリーな」
名前はすっかり忘れたが、階級だけは辛うじて覚えているよ。
「お気になさらず。ベー様は、我が国の恩人。本来なら父が相手しなければなりませんが、仕事が立て込んでおりまして来ることができません。父に成り代わり謝罪します」
「そいつはご苦労さんだな。まあ、よろしく伝えてくれや」
「はい。お伝えします」
「そうだ。うちの家族を紹介しておくよ」
と、親父殿、オカン、サプル、モコモコガール羊バージョン、プリッつあん、猫型ドレミと紹介して行く。
「ワリーが、親父殿とオカンが畑を見たいって言うから、誰か案内をつけてくれるかい?」
「はい。サリオ、サナ」
と、二十代後半の男と二十代前半の女が現れた。
「ベー様のご両親を案内したまえ」
「「はっ!」」
そちらはその二人とメイド長さんが選んだメイドさんにお任せします。
「頼んでおいたもんはできてるかい?」
「はい。ですが、まだ完成とは行きません。もう少し実験をしてからの方がよろしいのでは?」
「構わんさ。本格的に使うわけじゃねーし、性能実験はこちらでやるよ。何機か造ってるんだろう?」
成功すれば輸出するものだ。一機や二機だけじゃねーだろう。
「はい。試作に二十機は造りましたので、気にせずお使いください。ただ、回収できる程度にはお願いします」
了解。その辺は理解してるよ。
「んじゃ、さっそく見せてくれるかい?」
「はい。ではこちらに」
「あ、フミさんたちが下りて来たら来るように伝えてくれ。一応、知っておいてもらいてーからよ」
大佐とメイド長さんに向けて言った。
頷く二人にオレも頷きで返す。
では、水竜機を見せてもらいましょうかね。




