571 夢と魔法の茶番劇
どこからか取り出したタブレット(って言ったっけか、これ?)には、クイーンなんとかって言う豪華客船が写っていた。
「こちらなどいかがですか? 三十億円とお安くなってます」
高いわっ! いや、安いんだろうけど、村人に売る金額じゃねーよ!
つーか、なに豪華客船勧めてんの、この店員……ん? このサキュバス、以前見たな。名前は……忘れたが、店長とか言ってなかったっけ?
「豪華客船なんて海にしかおけねーよ。オレは本店を求めてんだよ」
いや、無茶言ってるのはわかるが、それを無茶で返してくる店長(?)さん。これを素でやってたら回れ右して逃げるぞ。
「そうですか? では、こちらなどいかがでしょう。百億と少々お高くはなりますが、地上約二百メートル。素晴らしい景色が見れますよ」
タブレット(的な?)の画面が変わり、なんか見たことがあるビルが写し出された。
あ、オレ、これ知ってる。丘の上に六本の木がなってるとこにあるやつだよねっ☆
「──アウトだわっ!」
タブレット(?)をつかみ取り、床へと叩きつけた。
「お気になさりませんか? では、二百億の──」
床に叩きつけたのに、なぜか壊れてないタブレット(的な)を取り上げ、懲りずに画面を変えやがった。って言うか、心臓、つえーな、こいつは。表情一つ変えやがらねーよ。
「──なんで高くなっていくんだよ! 買えねーよ! 九億しかねーよ! つーか、誰が買うんだよ! じゃなくて、んなもん村に建てられるか! 村にあったもんを出しやがれ!」
なんなのこいつ? なんだって言うの? オレ、からかわれてんの? バカにされてんの? もうおうちに帰りたくなってきたよ……。
「村ですか?」
なに今初めて聞いた的に首を傾げんの? あんた、カイナからなに聞かされてここに来たんだよっ?
「そうですね~。規模は小さくなりますが、これなどいかがでしょうか?」
出されたタブレット(的な)の画面には、トキョーにある搭が写っていた。アウトなもんしかねーのかよ……。
「……もっと規模の小さいやつでお願いします……」
「そうですか? 九億の予算では最高の物件なんですが……」
いや、なに不可解な顔してんの? お前の考えが不可解だわ!
「村、村、村、ですか~。では、このようなお城ではいかがですか? 値段も五百万円とお安いですよ?」
これってないくらいのアウトな物件だよ。
「もう充分すぎるくらい夢と魔法の村になってます」
「はい?」
「却下って意味だ」
つーか、この店長(?)さんは、オレを破滅させたいのか? オレ、簡単に葬られるよ?
「村って言ってんだから城とかあり得ねーだろうが!」
「そうですか? 広場にはありますが?」
うぐっ。い、いや、そーだけど、そうなんだけど、あ、あれは広場だからイイのっ。村だけど村の外れにあるからイイのっ。
クソ。なんか無駄にイイ笑顔を見せる店長(?)がムカつくな。わざとだったら覚えてやがれ……。
「小さいのでイイんだよ。十から二十部屋で応接室や会議室があって、仮眠室や食堂があったりするもので」
だったら最初から言えよって話だが、今気づいたんだからしょうがねーだろう。
「はぁ? そうですか。少々お待ちください」
困ったお客さんだわ~的な顔をする店長(?)さん。あんたの方が困ったちゃんだわ。
「では、これなどいかがですか?」
出されたタブレット(的な)には、三階建てのビルが写し出されていた。
規模的には手頃だが、村の外観には一ミリグラムもそぐわないよね。って言うか、これも今更だが、なぜに前世のものを勧めてくんだよ。
この世界のこの時代にあったものはねーのかよ?
「え、ありますけど?」
「だったら最初からだせやっ!」
なに当然のように返しちゃってんの、あんたは? オレ、本当におちょくられてたの?
「オーソドックスにこれなどいかがですか?」
ファンタジーな住人なクセにオーソドックスなんて使うなや! なに世界のなに時代だかわからなくなるわ!
暴れる感情を押さえつけ、タブレット(的な)を覗く。
木造建築の普通な館が写し出されていた。
これだよ! これを求めてたんだよ! つーか、なぜ最初に豪華客船を出してきたのか今さらながらに気になってきたよ!
「……で、これいくら?」
「五千円です」
「安っ!」
なんなの、この店? どんな価格基準なんだよ!
「……こんな安いものばかりじゃ今月のお給料は望み薄ね……」
小さくぼやく店長(?)さん。
売り上げが給料になるのはわかるが、いきなり豪華客船とか売りつけてくんなや。ぼったくりバーより悪どいわ!
「……ちょっと聞くが、この店って札じゃなくこの辺の貨幣でも買えるのか?」
「いえ、サービスカウンターで換金していただければ大丈夫ですよ」
だったらそのシステムを店先に書いておけよ! と、怒りのまみに叫びたいが、オレが見なかった可能性の方が大きいので、根性で堪えた。
「……そ、そうかい。なら、今度、豪華客船を買いに来るよ……」
「はい、ありがとうございま~す」
その笑顔が本当にムカつくが、もう一秒たりともここにいたくねー。もうこれでイイやと館を購入した。
「お持ち帰りしますか? お届けの場合は別料金となりますが?」
館をお持ち帰りとか誰がすんだよ! ってオレでしたね。ハイ、スンマセーン。
なんかもう、スケールの大きいことがあったが、スルー拳、二千倍で流させてください。思い出したくないんで。
館を小さくして収納鞄へと入れた。
その言葉で、いろいろ想像して納得してください。
「ありがとうございました~!」
店長(?)さんに見送られ、カイナーズホームをあとにした。
……まったく、こんな疲れた買い物は初めてだわ……。
「うん。なかなかおもしろい茶番劇だったわ」
頭の上の住人がなんか言ってるが、もう突っ込む気力もねーよ。
はぁ~。本当の夢と魔法の国にいきたいよ……。




