542 錬金の指輪
清々しい朝がやってきた。
って言うのはウソで、目覚めたらフランケンなメイドさんの部屋で、なぜか棚の上にいた。なんでだよ!?
「おはようございます、マスター」
訳がわからず茫然としていたら、棚の下からドレミの声がした。
「え、ああ、おはよーさん。オレ、なんでここで寝てんだ?」
昨日、夜遅くまで先生の家を創っていたのは記憶にあるが、棚の上に来た記憶はねーぞ。って言うか、地下室を創っていたところで記憶が途切れてるんだが、なんでなん!?
「リリー様が先生様と戦いまして、それに巻き込まれました」
そー言や、なんか上が騒がしいなとは思ってたが、そんなことやってたのかよ。リリーもチャレンジャーだな。
「申し訳ありませんでした」
と、ドレミが突然謝ってきた。なんだい、いったい?
「マスターをお守りしようとしましたが、二人の戦いにわたしも巻き込まれてしまい、体の八割を失ってしました」
なんでも回復するまで動くことができず、フランケンなメイドさんにお願いして棚の上に運んでもらったそーだ。
で、なんで棚の上かと言うと、せっかく創った先生の家が崩壊し、寝せれる場所がなく、唯一残ったフランケンなメイドさんの部屋の棚の上にしょうがなく寝かせたんだとよ。
「……アホどもが……」
やるんなら家の外で……やっても同じか。自重とか知らねー先生に、戦闘聖女リリーだもんな……。
まあ、なっちまったもんはしかたがねーと棚から下り、フランケンなメイドさんの部屋から出た。
ちなみにだが、フランケンなメイドさんに意思はなく、どちらかと言えば操り人形に近い。まあ、フランケンなメイドさんを操る意思を持つ指揮者がいるらしいが、それが誰かなのは聞いてない。親しき仲にも礼儀あり、だからな。
フランケンなメイドさんの部屋は地下に創ったので、階段を上がって一階へ……と思ったらなんもなかった。
「崩壊じゃなく消滅かよ」
先生の実力を知っているからそんなに驚きはねーが、自分家なんだから少しは手加減しろよな、まったく……。
「ん?」
荒野と化した敷地の隅っこに、なにやら見たことがある人型のお城が立っていた。
「プリ……なんだっけ?」
なんか物理法則とか無視しちゃった、プリッつあんの……セカンドハウス的なものだった。
なんでここにと近づくと、気がつかなかったが、プリなんとかの前に黒焦げのカバが転がっていた。
「……容赦ねーな……」
戦闘聖女の実力はわからんが、勝ち目ないのは最初からわかっていた。こうなる結果も見えていた。そして、覚悟もできていた。
「が、こうなると哀れでしかたがねーな」
一日も経ってねーが、オレの代わりにともらったカバ。ちょっとは愛着が生まれていた。そんなちょっとの愛情に墓でも作ってやるかと黒焦げのカバに手を伸ばそうとしたら、黒焦げのカバが突然むくりと起き上がった。
「……負けた……」
なにやら悔しそうに呟くが、こっちは心臓が口から飛び出すかと思うくらいびっくりしたわ!
「……あら、生きてたのね……」
そりゃこっちのセリフだわ! なんで生きてんだよっ! 黒焦げカバがっ!
「……どうしたの?」
「……いや、なんでもねー」
スルー拳、四百倍で目の前の悪夢から目を、意識を反らした。
「湖で体を洗ってこい。あと、これを持って行け。服の代わりだ」
収納鞄からカイナーズホームで買ったバスタオルを出し、リリーに合うサイズに大きくして渡した。
「……ありがとう……」
礼を言ってクレイン湖へと走って行った。
ため息一つ吐き、プリなんとかに乗り込んだ。
「静かだな?」
玄関ホールには誰もいず、しんと静まりかえっていた。
コーリンたちは、花月館へと引っ越したので、いねーのらわかっているが、プリなんとかの中からはプリッつあんと先生につけた結界の反応がある。
よーわからんが、取り合えず反応がある場所へと行ってみる。
リビング的な部屋に来ると、ソファーベッドの上で先生がプリッつあんを侍らしていた。
……いや、怯えるプリッつあんを可愛がってる、ってわけ感じ、かな……?
「なにやってんだ?」
「おう、ベーか。プリを妾にくれんか?」
うん、イイよと言いかけるのを阻止するかのようにプリッつあんが先生の腕から逃れてオレに抱きついた。
「ベー、助けて!」
自分でなんとかしろよと言いたいが、プリッつあんの能力がなくなるのはちょっと痛い。いろいろ役に立ってきたからな。
「この城をやるから諦めろ。プリッつあん、イイよな?」
「あげるから、わたしを捨てないでー!」
なに人聞きのワリーこと言ってんだ、この腐れメルヘンは? 話がややっこしくなるからリリーの面倒でもみてろと言ったら、喜んで逃げて行った。
「いいのぉ、あれ……」
「欲しいんなら自分で捕まえろ。それより、家ができたんだから、オレは行くぞ」
「ああ、わかった。すまぬな、無理を言って。この借りはいずれ返すよ」
「別にイイよ。オレが好きでしてんだかな」
したいことはする。その行為に感謝など求めてねー。全てはオレのため。オレが満足したらそれでよし、だ。
「そうだったな。なら、妾もしたいようにするさ。ほれ」
と、金色の指輪を放り投げてきた。なにこれ?
「お前が以前、欲しがっていた錬金の指輪だ。邪魔だからお前にやる。使うも捨てるもお前が決めろ」
まったく、可愛げのねー先生だ。だが、嫌いじゃねーのがオレの悪癖だな。
「あいよ。オレが決めるよ。またな」
そう言って先生と別れ、外に出る。
プリなんとかを巨大化させ、なんか仲良くなったメルヘンとカバのもとへ向かった。
ベーにまた新たな力が加わった。のか?




