541 似た者同士
ハイ、町の名が決定しました。
クレインの町です。拍手~!
なんの捻りもねーな、おい。との突っ込みはノーサンキュー。オレの名をつけようとしたから全力で阻止したわ。
つーか、誰も発音できねー名前を町の名にするとかアホだろう。んじゃ、ベーの町でとか言ったあんちゃんはクレイン湖に放り込んでやったわ。
「なら、ゼルフィングでイイじゃねーか」
「お前、絶対おれに丸投げする気だろう。んなもん却下だ!」
勘のイイ親父殿に見破られて即終~了~!
で、すったもんだの末に、湖の名ではと青年団から出たので、満場一致でクレインの町に決定したわけですよ。
「んじゃ、あとはあんたらに任すな。しばらくはあんたらの力でやってみろ。どうしてもあんたらで解決できないときは、オレかリリーがなんとかする。だが、それは最終手段。軽々しく使うようなら、追放処分にする。これは、青年団にも言ったが、オレらが創ろうとしている異種族国家は、非公式であり、侵略だ。ここがバレることはあんたらの命に関わるってことを衆知しとけよ。一応、この国の兵が巡回してるが、余所者が紛れ込んだときは捕まえろ。ただし、殺しはするな。オレかリリーが尋問する。イイな?」
主要メンバーがわかったと頷いた。
まあ、そうそう人が立ち入れる場所ではねーが、絶対にないとは言えねー。冒険者なんかは平気で入って来るから心構えをさせておかねーとならんのだ。
「親父殿。これから先生の家を造りに行くから、帰るときは飛空船のどれかに乗っけてもらって帰れな。あんちゃんも。黒髪の乙女さん。飛空船の船長にそう話を通してくれや」
「わかりました。では、二名を護衛につけます」
「護衛はいらねー。今日は先生の家に泊まるからな。また明日の朝来てくれ。あ、船団はこのクレイン湖を拠点とするので、ここにいてくれってことも伝えてくれ。なにか必要なものがあるんなら戻ってもイイともな」
「……わかりました。指示に従います」
理解ある人で助かるよ。
「んじゃな」
と、リリーさんの腕を……つかめないので、裾をつかんで先生のもとへと向かった。
「わ、わたしもですか?」
「右も左もわからんリリーを一人にさせておくにはいかんだろう。もしかして、先生が憎いか?」
あの先生のことだから、なんの説明も、リリーの承諾もなしに連れて来て改造したはず。生前の記憶があるなら憤慨の一つもしてて当然だ。
「……憎しみは、あります。わたしの死を弄んだのですから……」
「確かに。そんなことされたらオレでも怒るわな」
と言ったら、なぜか驚かれた。なんで?
「あなたは、あの吸血鬼の生徒ではないのですか?」
「生徒だよ。でも、それとこれは別だ。例え先生でもオレの人生を邪魔するんなら排除するまでだ。だが、幸運なことに、お互いの人生は尊重する主義でな、こうして良好な関係を築けてるよ」
オレ同様、自分が好きなことをしているのだから他人も好きなことをしろ派である。
互いの目標が重なることや、意見が違わなければ、まあ、仲良くしようや、ってな関係なんだよ、オレたちは。
「さっきも言ったが、リリーの人生はリリーだけのものであり、譲れない思いがあれば貫けばイイ。復讐したいってんなら止めもしねー。好きにしろ。ただ、やるんなら周りに人がいないことを確認してからやってくれると助かる。あの先生、昔ははっちゃけてたらしく、準魔王級の扱いだったらしいんでよ」
吸血鬼のクセに魔砲(手から魔力を収束させたやつ)とかメッチャ好きときてる。前に一度見せてもらったが、山が一つ吹き飛んだよ。
「まあ、年をと――じゃなく、大人になって落ち着いたから、滅多なことでははっちゃけねーとは思うが、自分の楽しみを奪うヤツには容赦しねー。なんで、やるんなら寝込みを襲うとか、罠に仕掛けるとかにしてくれ。家ができたらしばらく寝るようだからよ」
正面から挑むよりは勝機はあると思うぜ。
「……殺しても、いいの……?」
「――ああ。やれるんならやるがよい。ただし、もっと素敵に華麗に改造してやるがな」
と、先生が忽然と現れ、リリーの首に腕を回して物騒なことを口にした。
リリーは、恐怖で動けない……と言うよりは、先生に強制拘束されているようで、指先すら動かせないようだ。
……まあ、戦わないことが賢い選択ってもんだがな……。
「先生。あんまりからかうなよ。リリーには楽しく働いてもらいてーんだからよ」
「フフ。あんまり可愛いことを言うんでな、ついからかってしまった。それにしても薄情な生徒だのぉ。そこは先生を庇わんか」
「先生を庇うくらいなら復讐者を庇った方が有意義だわ」
この鉄血鬼にして熱血姫の悪行三昧は、魔族の大陸では超有名。魔王も恐れる準魔王とか言われている。
「まったく、可愛げのない生徒だ」
「ふん。そりゃ先生譲りさ」
皮肉に皮肉で応えた。
まあ、そんな深い付き合いじゃねーが、似た者同士。嫌でも似てくるんだよ。
お互い、睨み合うが、そこに邪気はない。
似た者同士、こんな関係が結構気に入っているのだ。




