470 レッツゴー!
硬いベッドの上で何度もゴロゴロしてたら、タケルたちがやって来た。
「お疲れさん。なんかあったかい?」
ゴロゴロを止め、ベッドに寝っ転がったまま声をかけた。
「いえ、これと言ったことはなかったです」
「そうかい。それはなにより」
またベッドの上をゴロゴロを再開する。
「……ベッド、そんなに気持ちいいんですか?」
タケルにはこのゴロゴロが気持ちよく見えるよーだ。
「やってみな」
装備を外し、ベッドにダイブするタケルくん。どうだい?
「……硬いんですが……」
非難する目を向けてきた。
「ああ、硬いな」
求めていた答えに満足してゴロゴロ。あーかてー!
「……いったいどんな意味があるんです?」
「このベッドに体を慣らしてんだよ。食事は結構なんでも食えるし、不満に思ったこともねーんだが、ベッドにはなぜか不満が出てな、こうして体を慣らしてんだよ。やっぱ、旅はキツいな……」
小さい頃は硬い床の上でも寝れてたのに、フカフカベッドに寝るようになってから体が貧弱になりやがったぜ。もうちょっと鍛えねーとダメだな。
まあ、それはおいおいやっていくとして、今やるべきことを片付けますかね。
「よっこらせっと」
ベッドから起き上がり、三人を見る。
「フェリエ。部屋割りは言ったのか?」
「ええ。説明したわ。タケルたちもそれでイイって」
目でタケルらに確認を求めると、ちょっと顔を赤くしながら頷いた。
まあ、二人が納得してんならそれで構わんさ。
「んじゃ、夕食まで自由時間な。好きに……そうだ。なあ、タケル。この朧──拳銃の弾って持ってるか? 弾の換えのことすっかり忘れてたんだわ」
「モーゼルのですか? えーと、確かあると思いますよ。ちょっと待ってください」
タケルに渡した収納鞄をがさごそして、小箱を数個取り出した。
「モーゼル貸してください」
と言うので朧を渡した。
朧から弾倉を取り外し、慣れた感じで弾を込め──ようとして?顔になった。どーしたん?
「なんでサイズが合わないんだ?」
「どうかしたのか?」
「え、ええ。この弾でいいはずなのにマガジンに入らないんです。ん? そう言えば、このモーゼル、小さくないか?」
また収納鞄に手を突っ込み、朧と同じ拳銃を取り出した。
「……やっぱり小さくなってる……」
「あ、そう言や、オレの手に合わねーから小さくしたんだったわ」
すっかり忘れてた。ワリーワリー。
「……これって何ゲーです?」
なんかよくわからん突っ込みをするタケル。これもジェネレーションギャップってやつか?
入れ方を教わり、残りの弾を朧サイズに小さくして収納鞄に仕舞った。
こんだけあれば土魔法で創るのも簡単。いや、朧が壊れたときようにもう一丁創っておくか。
と、タケルの腹から盛大な虫の鳴き声が発せられた。
「お前の腹って妙に正確だよな」
なぜか知らんが、タケルの腹は決まった時間に鳴るんだよな。
「つーか、なんで腹減るんだ? 潜水艦、別に壊れてねーだろう?」
自己修復はタケルのエネルギーから、とかなんとか言ってなかったっけか?
「え、えーと、その、なんと言いましょうか、おれの第三の願いが関係してまして……」
「ワリー。今のはなし。忘れてくれ」
能力を隠せと言ったのはオレ自身。バカなこと聞いてんじゃねーだ。
「よし。夕食にしよう。フェリエ、夕食は頼んだのか?」
「いいえ、断ったわ。ここ、味はそんなに悪くないんだけど、味がちょっと薄いのよね」
まあ、フェリエんちにもオレが集めた調味料やサプルの考案した調味料も流れている。その味を覚えたら他の料理はどれも薄味だろうよ。
「なら、外に食いにいくか。バリアルの街にも屋台広場があるって言うしよ」
行ったことはねーが、あるとだけは聞いている。その聞いた話の中では結構旨いとか。王都の広場を考えたら一見の価値はあるかもな。
「屋台、ですか? 美味しいんですか?」
「わからんが、ものは試しさ。いろいろ買って食ってみればイイさ。食えないならオレの鞄に入れておけばイイんだからよ」
タケルの舌に合わなくても、他の誰かの舌には合う。無駄にはならねーさ。
「わ、わかりました」
この時代の料理に絶望したタケルはあまり乗り気じゃねーようだが、オレの中で買い食いってのはちょっとしたお祭り気分。なんか屋台巡りとか結構好きなんだよな。
「なら、装備を街用にしろ。あと、無闇に撃つなよ。オレの力で防御すっから」
これも修行だと結界を纏わせず行け、と言いたいところだが、夕食は楽しくしたい。殺伐とした状況で食うメシなどゴメンである。
「フェリエ。宿に出かけると伝えてくれ。オレもいつもの服に着替えるからよ」
やはりいつも着ている服が一番楽。目的地についたんだし、着替えてもイイよね。
「了解。そう伝えるわ」
任せ、いつもの村人スタイルに着替えた。
自分らの部屋に戻り、着替えてきたタケルと猫耳ねーちゃんを見て、オレの頭の上に?が咲いた。
「どうしたんです?」
「いや、なんか忘れているよーな気がしてよ。なんだっけ?」
考えてはみるものの、なんなのかが思い出せん。
「まっ、イイか。そのうち思い出すだろうさ」
思い出せないのはどうでもイイことだと、昔の人は言っている(ハイ、オレの勝手な妄想です)。必要ならそのうち思い出すだろうて。
「ほんじゃ、夕食にレッツゴー!」




