469 部屋割り
フェリエの案内で、白木亭へとやって来た。
ちょっと高いと言うだけあって外観は綺麗であり、安い宿にいる呼子などもいない。いるのは馬車や馬で来た者を迎える馬番のじいさんと十六、七の少年がいた。
「いらっしゃいませ。当宿をご利用でしょうか?」
少年の方が前に出てフェリエに声をかけた。
「ええ。四人なんだけど空いてるかしら?」
これもフェリエにお任せ。オレは見てるだけ。
「はい。空いております。お客様は当宿をご利用されたことはありますか?」
「ええ。前に利用させてもらったわ」
「ありがとうございます。では、部屋割りはいかがなされます?」
ん? この少年、雇われでっちじゃなく、宿屋の息子か?
手慣れた感じと言い、言葉使いと言い、でっちには出せん振る舞いだし、宿の状況まで頭に入れてるぜ。
「上質な部屋を二つ。一泊で頼むわ」
「はい。畏まりました。では、お馬様はこちらで預からせていただきます」
「馬には新鮮な野菜と水をお願いね」
コユキから降りたフェリエは、そう少年に言うと、懐から大銅貨を一枚取り出して渡した。
へ~。ここはチップ制なんだ。これは初めて知ったわ。
「あ、ありがとうございます!」
チップとしては大金だったようで、少年が目を丸くしながら礼を言っていた。
「タムニャとタケルは馬小屋を確認。宿の周りの配置を覚えてきて」
その指示に二人は文句を言うことなく頷き、コユキたちと馬車を宿の裏へと連れて行った。
「前に決めてたのか?」
オレは教えてねーので、疑問に思い聞いてみた。
「報告、連絡、相談。それが大事と教えられたからね、朝と晩にやってるのよ」
「へ~。そんなことやってたんだ。全然気がつかんかったわ」
あ、いや、なんかやってると姿は記憶にあるが、内容までは気にしてなかった。
「コミュニケーションは大事だとも教えられたからね」
「それは大いに結構。その調子で頼むよ、リーダー殿」
オレのおちゃらけた言い方が気に入らないようで、オレの頭をチョップして宿の中へと入って行った。
いたいけな少女をからかい過ぎたかと反省してフェリエに続いた。
外観同様、中も綺麗で、これまでの宿とは月とすっぽんであった。
汚ない宿しか知らんので、物珍しさに辺りをキョロキョロ見回した(あ、カイナのホテルと一緒にしたらワリーだろう。この世界の宿にな)。
「これはフェリエ様。お久しぶりでございます。またのご利用、ありがとうございます」
その声に釣られてカウンターを見たら、品のよい女将さんらしき人がいた。
「よく覚えてますね。三日しか泊まってないのに」
「忘れませんよ、その綺麗な金髪は」
まあ、確かに言われてみればフェリエの金髪は目立つし、珍しいものだな。見慣れてるから気にもしなくなってたよ。
「目立ち過ぎるのも困るのだけどね」
肩を竦めるフェリエ。これも確かに言われてみればフェリエは美少女。まだ発展途上とは言え、充分育っている。アホな男はイヤでもよってくるだろうて。
女特有のおしゃべりタイムに入ってしまったが、客商売しているだけあって女将さんはきりのよいところで本題に入った。
「上質な部屋を二つですね。三階の一号と二号になります。案内いたしましょうか?」
「大丈夫。部屋位置は把握してるから」
鍵をもらい三階へと上がった。
三階にある上質な部屋は、確かにこの時代と文化では上質に入るだろう。が、やはりこれが精一杯か……。
部屋は約十二畳くらい。ベッドが二つあり、テーブルがあるくらい。まったくもって寝泊まりするところだった。
「……こんなもんか……」
最初から期待してなかったから落胆はねーが、なんとも質素。もうちょっとなんとかならんのか?
「ベーの家と比べる方が悪いわよ。ましてや貴族の館も顔負けのものになる始末。野宿さえも豪華とか、世の冒険者に謝りなさいよ!」
「なんに、だよ。意味わからんわ」
「そう言えるあんたが一番意味わかんないわよ!」
なにやら形勢逆転されそうなので、ベッドへとダイブして逃れた。
なんとも硬いベッドの上をゴロゴロ。寝心地ワリー!
「それで、どうするの?」
「うん? なにが?」
「部屋割りよ。女と男にわかれる? そ、それとも、タケルとタムニャ、わたしとベーにする?」
なにやら頬を染めるフェリエさん。
ん? ああ、なるほどね。タケルと猫耳ねーちゃんに遠慮してんのね。あの二人、できてるしな。
「人の恋路を邪魔するのもワリーしな、タケルとタムニャ、オレとフェリエでイイだろうよ」
どうなるかは二人次第。自分らで決めろ、だ。
「……そ、そう、ね。そう言ってくるわ……」
なんか逃げるように部屋を出ていくフェリエ。まだまだウブよの~。




