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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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463 ノーコメント

「え? 波乱は?」


 突然、プリッつあんが変なことを叫んだ。


「どうした、プリッつあん。怖い夢でも見たのか?」


 今は荷車台の上でマン〇ムタイム。移りゆく景気を眺めながらのコーヒーはまた格別。あーコーヒーうめー!


「じゃなくて、なにこの平和? なんにも起きないじゃないのよ!」


「ワリー。プリッつあんがなにを言ってるのかわからんのだが?」


「旅と言ったら盗賊の襲撃があったり、魔物が大群で襲って来るんじゃないの? もしくは冒険者といさかいが起こるとかさ。あるでしょう!」


「いや、ねーよ」


 なに言っちゃってんのこのメルヘンさんは? 


 いくら弱肉強食な世界で、ファンタジーな世界とは言え、ここは天下の往来。人が暮らす上で欠かせない大街道。ライフラインと言っても過言ではない道は国が守っていて、定期的に国の騎士団やら冒険者が刈り取っている。


 それに、冒険者のいさかいってなんだよ。冒険者にも善し悪しはあるが、基本、信頼がものを言う商売。護衛の途中で問題起こすとか自分の首を絞めるようなもの。依頼だって成功させなきゃランクに響く。いろいろ柵のある職種なんだぜ、冒険者って。


「え、あ、だって、隊商の二割は失うって言ってたじゃん!」


「そりゃ全てを失わずなんていくわけねーだろう。馬だって人だって長旅をすれば気候やら疲れたやらで体調を崩す。水が合わずに腹を壊して死ぬなんてよくあることだ。旅は計画的に無理はしない。これができてこそ一流の商人だよ」


 その点、この隊商のリーダー……おっちゃんは優秀だ。ボブラ村を発って四日目だが、馬も人も順調にしていた。


「それに、だ。上空でメルヘン機が先行偵察して、魔物がいたら排除している。波乱なんてまず起きねーよ」


 とは言え、この世に完璧はねー。ましてやメルヘン機で捉えられねーもんもある。いや、捉えたとしても敵かどうかわからんものもある。


「フェリエ。前方注意。フレンドットがいるぞ」


 今日の馬車の護衛担当殿に教えてやる。


「フレンドット? ……わかったわ」


 なにか言いたそうだったが、否定する愚をおかす前にコユキを走らせた。


「ベー。フレンドットって?」


「植物の魔物さ。まあ、所謂食虫植物だな。ただ、魔物なだけあって移動することができて、三年ものになると人すら食っちまう。十年級のものを一度見たことあるが、あれはオーガですら食ってたぜ」


「オ、オーガを? 滅茶苦茶危険じゃない!」


「移動はすると言っても正面から襲うほど強くはねーし、フレンドットは捕食型だ。姿と臭いを知ってりゃ先に見つけられ、離れたところから風の魔術でサクっと切っちまえばなにも怖くねーよ」


 フレンドットの食虫酸は、鱗や甲殻を溶かすこともできるので、魔物系の防具を作るときに重宝されるのだ。


「フェリエ、ちゃんと食虫酸を溢さないで倒せるかな?」


 追い込まれると食虫酸をかけてくる。そうなる前に確実に倒さなくちゃならねー。結構難易度が高いんだよな。


「猫耳ねーちゃん、馬車を止めろ」


「タムニャだよ」


「ハイハイ、タムニャな。覚えた覚えた。馬車停止だ」


「すぐ忘れる言い方だー!」


 否定はしねー。だから早く馬車止めろや。


 ぶつぶつ言いながらやっと馬車を止めた。


「タケル。後ろの連中にフレンドットが出たからしばらく止めると伝えてくれ」


 フェリエと交換して戻って来たタケルに、隊商のリーダー……おっちゃんに言伝てを頼んだ。


「フェリエ一人で大丈夫なんですか?」


「まあ、苦戦はするだろうが、これも修行。ガンバレ、だ」


 フレンドットごときに手こずるようでは冒険者なんてやってらんねーよ。


「それならおれも行った方がいいんじゃないんですか?」


「冒険者はただ倒すだけでは生きて行けねー。魔物の使えるところを剥ぎ取れてこそ一人前。そして、大事な収入源。銃でボロボロにされたらたまらんよ」


 銃は殺傷用兵器。兵士の武器だ。冒険者の武器ではねー。


「……わかりました。伝えて来ます」


 去っていくその背中を見て、自然と笑みが浮かんだ。


 まだ、前世の常識や考えに捕らわれてはいるが、事の優先順位や感情を制御できるようになっている。順調に育っていてなによりである。


「ベー。片付けたわよ」


「ご苦労さん。で、ちゃんと採れたかい?」


「もちろんよ」


 と、瓶に詰まった食虫酸を突き出した。


「ふふ。銀貨六枚で買ってやろうか?」


「いいえ、冒険者ギルドで買い取ってもらうわ」


 オレの引っかけには乗らないフェリエ。冒険者ギルドにも横の繋がりがあったり流通があったり、いろいろ利権やら柵がある。


 必ずしもギルドを通す決まりはないが、冒険者ならまずギルドを通すのが義理であり、暗黙の了解でもある。枠に入ったのなら枠で生きるのがこの時代の処世術であるのだ。


 フンと鼻を鳴らして先頭へ向かっていった。


「ベー! フレンドットが出たんだって!?」


 隊商のリーダー……おっちゃん自ら様子を聞きにやって来た。


「ああ。一匹だけな。たぶん、巣別れのヤツだろう。そう言う時期だしな」


 フレンドットは群生植物でもあり、生息する場所は水場である。こんな街道まで出て来るのは巣から出て来たのがほとんどだ。まあ、例外でフレンドットを主食とする土竜が異常繁殖したときに逃げ出したってことは聞いたことはある。


「そうか。やはり、ベーがいると安全で助かるよ」


「オレはなにもしてねーんだがな」


「なにもしないのが安全な証拠さ。今後もそうであることを願うよ」


 と言って戻っていった。


「……どう言う意味です?」


 タケルの疑問に肩を竦める。


 それはノーコメントです。

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