356 安らぎが欲しい
「今更だが、潜水艦に飛行──バル……バルキリアアクティー? って、必要なんか?」
「本当に今更ですね」
そう言うところを見ると、カーチェも不要とは思ってんだ。
「まあ、不要だとは思うのですが、なにやら船長とアマリアたちの精神と言いましょうか、好みと言いましょうか、わたしには良くわからないものが合致したようで、こうなりました」
はしょった説明だが、言わんとしているところはわかる。いや、メルヘンの趣味主張はわからんけどさ。
「まあ、タケルが許してんならオレは構わんけどな」
タケルがメルヘンズを家族と見てるならメルヘンズはうちの子だ。好きなことを好きなだけやれだ。
「アムネ! いつまで乗ってるのよ! 代わりなさいよ!」
「そうよ。代わりなさいよ!」
ロボットになったバルキリアアクティーを操る三つ編みさんに、順番待ちのメルヘンズがブーブー文句を言ってる。
「まだちょっとしか乗ってないじゃないのよ!」
スピーカー越しの三つ編みさんの声が響き渡る。
……オレもロボットは普通に好きだし、ロボットアニメは見た方だが、なんでだろうな。目の前でロボットが動いてんのに、まったくこれっぽっちもときめかねーよ。つーか、引くわ、この光景はよ……。
「まあ、願いも叶ったようなんで、あと──」
「──ベー! バルキリアアクティーもっと欲しいー!」
「欲しいー!!
「なんとかしてよ、ベー!」
顔にまとわりつくメルヘンズ。逃げ遅れたか……。
……ほんと、うっとうしいわ、このメルヘンどもは……。
「なんとかならないのですか、ベー?」
「カーチェまでなに言ってんだよ。オレは出来ることしか出来ねー村人だぞ。なんでも出来ると思うな」
「いや、ベー自身はできなくても出来る方法を思い付くのがベーですからね。本当に出来ないのですか?」
その問いに出来ねーと言えねーのが腹立たしい。自分の無駄にイイ閃きが憎いわ……。
「ふふ。それでこそベー。頼りになります」
無駄に付き合いが長いから隠し事も出来ねーな、まったく。
「あるにはあるが、あまり勧めたくはねー」
家族を売るようで心が痛いわ。
「難しいのですか?」
「いや、方法は至って簡単だ。簡単なだけにオレの良心が痛てーんだよ」
汚物を釣るのにエサなど不要。ただ、タケルとカーチェがいればイイ。まったく、想像しただけで吐血しそうだわ……。
「ベー! 方法があるなら教えてよー!」
「教えて教えて」
だから顔にたかるな、羽根虫どもが!
「ベー。あるのなら教えてください。ベーの責任にはしませんし、我々が望むのですからベーが心を痛める必要はありません。と言うか、毎日顔にはりつかれるならなんでもします」
……カーチェさん、あなたも結構酷いこと心の中で思ってますよね……。
「はぁ~。わかったよ。教えてやるよ。だが、なぜかは聞くな。お前らのためではなくオレのために。それが守られるのなら教えてやるよ」
これはオレの平穏のため。それ以外にないものだ。
「わかりました。守ると誓います」
「わたしたちもー!」
メルヘンどもは微塵も期待してねーが、カーチェが守ると言うのなら信じるまでだ。
「わかった。教えてやるよ」
天を仰ぎ、心に溜まったモヤモヤをため息とともに吐き出した。
「港でエリナ──喪服がきたら壁際でタケルと向かい合い、なんか適当に話せ。もし、その喪服がお前たちを見てたら脈はある。そしたら喪服のところに行ってタケルにバルキリアアクティーをもらえないか言わせろ。カーチェはちゃんとタケルが言えるか心配してろ。あと、バルキリアアクティーを空の防衛に使いたいと、オレも言っていたと言っとけ。それで大丈夫なはずだ」
なんのことかさっぱりな顔をするカーチェだが、なぜとは聞いてこなかった。
世の中、知らない方が良かったってことはある。それがせめても救いと信じよう。
はぁ~。安らぎが欲しいよ、まったく……。
毎日残業カーニバル。帰宅日なのに八時まで残業。家に着く頃は日付が変わっているだろう。
また日曜日から主張。残業カーニバル。投稿できたらします。




