355 飛行機派
どうやらメルヘンズの巨大化は上手く行ったようで、家ん中を飛び回っていた。
まあ、こーゆー状況は人魚で慣れてるから驚きも感動もねーし、家ん中も結界は施してある。そんな光景を見ながらマ〇ダムタイム。
……にしても、ここまでデカくなると、メルヘンってジャンルから逸脱してるよな……。
じゃあ、なんだと問われたらわかんねーとしか答えられんが、これがオレの今生。あるがままに受け入れろだ。
「……ほんと、ベーは非常識ですよね……」
別の世界から転生してきたオレにしたら、この世界が非常識だわ。
「しかし、やっといてなんだが、タケルの許可とかなくても良かったのか?」
これでも船長であり、責任者。ないがしろにはできんだろう。まあ、実質カーチェが権限持ってるけどな。
「そこは大丈夫です。船長もターナたちが大きくなればなと言ってましたし、ベーは最高司令官なそうですからね」
「なんだい、最高司令官って?」
いつからオレは軍人になったんだよ。
「なんでも船長は、この家の海軍だそうですよ」
「はぁ? 意味わからんのだが?」
「好きなことを好きなだけやれと言われたから、ベーがいつでも海に出れるように船長はベーの私設海軍になることを決めたそうです」
益々もってわからんが、まあ、タケルがそうしたいのなら勝手にしろだ。
「自称でもなんでも自分が決めてやると言うならオレは応援するよ」
もうタケルはうちの子。好きに生きるのが我が家のルールだからな。
「それより、こいつら邪魔だから港に行かせろ。さすがにうっとうしいわ!」
二十畳もねー部屋ん中で一メートル六十ものメルヘンが八人も飛んでられてたら気になってしかたがねーよ。つーか、頭に乗んな!
「ターナ。せっかく大きくなったのだからシミュレーターをやってきたらどうです?」
「そうだった! 大きくなったから使えるんだった!」
三つ編みさんの叫びに他のメルヘンズも『そうだよ!』と合唱し、突撃とばかりに家を飛び出して行った。まさに文字通りにな……。
「謎だな、メルヘンは……」
「わたしから見たらベーが一番謎ですが、まあ、その世界に入ったら後戻りできなさそうだから謎のままにしておきましょう。それより、外の一派もよろしくお願いします」
なに気にオレの周りにいるヤツは失礼なことを言うよな。こん畜生どもが。
肩を竦めるだけにして外に出た。
「まだ張り付いてのかよ」
なにが楽しいのかジェット機に張り付くメルヘンズ。オレには亀虫にしか見えんよ……。
「アマリアたち。ちょっと良いですか?」
家にいた潜水艦派同様、こちらの一派もすんなりやってきて敬礼した。もうなんでもイイよ……。
「それで、ベー。この子たちも大きくするのかい?」
「いや、こいつらはこのジェット機──」
「──バルキリアアクティーです!」
本気と書いてマジと読むような目でオレを見るメルヘンズ。本気と書いてマジと読むくらい怖いんですけど。
「あ、あー、その要は、このバ……」
「バルキリアアクティー」
「に乗ることが出来て、潜水艦に積めればイイんだろう?」
潜水艦の荷物室(?)の大きさとメルヘンのサイズを考えて、このジェッて──バイキン、じゃなくてバルキリアアクティーを小さくすれば余裕で入る。搭載機らしいジェット機は別のところに入っているらしいからな。
このバルキリアアクティーなるジェット機が全長十八メートルくらいだから、八分の一……は小さ過ぎか。四分の一くらいかな?
「あー、こんなもんか?」
部屋に飾るには邪魔だが、庭のオブジェにするくらいにはイイ感じにはなった。
「なんでもありですね……」
まったくもってごもっとも。ジャンル、ファンタジーからSFにした方がイイかもな……。
「最初はグー! 続けてグー! あいこが出たら負けよ、ジャンケンほい!」
なんとも懐かしいジャンケンの掛け声。それが普通かと思ったけど、意外とローカルルールなジャンケンや掛け声があったりする。あ、そう言や、今生にジャンケンってなかったな。
なんてメルヘンジャンケンを見ていたらあっさり勝敗が決まった。一番手は、水色の髪と水色の羽根を持つ童顔なメルヘンだった。
「アムネ、行きまーす!」
あらやだ奥さん、突っ込みませんわよ。ウフフ。
コクピットに乗り込み、エンジンを掛けた。つーか、やけに静かなエンジン積んでんな? それともアニメな動力機関か?
なんて突っ込んでもしょうがねーので軽く優雅にスルーです。
そのまま遠くに飛び立ってくれと願っていたら、突然、飛行機が二足歩行のロボットに変形してしまった。
アニメな変形ロボなんだか可能な動きなんだろうが、飛行機の状態からロボットになるって、理不尽にしか感じねーな。
「人の形体になるとは聞いてましたが、本当にベーは非常識ですよね」
「いや、そこはオレのせいじゃねーよ!」
そこだけは突っ込んだ。




