1263 コーヒーを飲みながら暗躍する村人
オレがハヤテと一緒に爆走している間に働き者さんたちがバルザイドの町へいくための準備を進めていた。アザース!
「あなたはどこまでも他人任せなのね」
委員長さんからのキッツいお叱り。なんか学生気分になるな。
「その他人にはちゃんと利を与えてるぜ」
他人任せなのは認める。甘んじて受け入れよう。だが、オレは一度たりとも責任を放棄したことはない。ちゃんと任せたヤツを全力で守るぜ?
「あんたらだってイイ経験できただろう? 南大陸での伝もできたしよ」
帝国にいてはこんな経験はできなかっただろうし、それぞれの能力も向上しなかったはず。なに一つ損はしてない。なによりザイライヤー族とも繋がりができたしな。あ、苦労は別会計となっておりますのであしからず。
「……知って、いたのね……」
「人の考えることなんて大差ねーさ。ましてや叡知の魔女さんの考えることなどお見通しさ。まあ、叡知の魔女さんもオレの考えなどお見通しだろうけどな」
ほんと、敵にしたくない相手である。
「オレといるのが嫌だと言うならいつ帰ってもらってもイイし、別のヤツと交換してもイイんだぜ」
オレは丸投げはするが強制はしてねー。嫌だと言うなら丸投げしたりしないぜ。
「……断れないのを知ってるクセに……」
「ああ、知ってる。だってそう言う方向に持っていってるからな」
こんなファンタジーな世界でスローライフをするって本当に大変だ。考えなしには到底無理な話だ。
皆さんのガンバりのお陰でオレはコーヒーをゆっくりまったり飲める時間がある。
「オレは、こうしてコーヒーを飲める価値を知っている」
まあ、知れたのは前世の記憶があるから。怠惰に無気力に生きたから。人生の辛さ虚しさを知ったからだ。
「オレは申し訳ねーくらい恵まれている」
神(?)から三つの能力をもらい、優しい家族に恵まれ、たくさんの友人たちがいてくれる。
「年下のオレが言っても説得力はねーが、若いうちの苦労は買ってでもしな。充実した人生を送るためによ」
苦労しない人生もまた恵まれたもんだろうが、そんな人生を送れるヤツは極少数。悲しいかな、そこにオレは含まれてねー。こうして働いている者を横目にコーヒーを飲めるのは、そうできるよう築いて来たからだ。
「オレはコーヒーを飲める価値を知っている」
あんたは、学べる価値を知ってるかい? と言う目で魔女さんたちを見た。
「……あなたって本当に憎たらしいほど生意気よね……」
「アハハ! よく言われる~」
生意気上等。オレはこれからも生意気でいくぜ!
「オレに構ってる暇があるなら猪の解体でも手伝って来な。帝都に置いたフュワール・レワロはここよりもっと過酷だぜ」
おそらく、フュワール・レワロ──生命の揺り籠では大量に人が死ぬ。魔女もだ。それは叡知の魔女さんも理解しているだろう。アホくさとは思うが、帝国には帝国の利益があり、柵がある。オレが口出すことじゃねーが、利用はさせてもらうがな。ゲヘヘ。
「……あなたの目的はなんなの……?」
「オレ程度の考えを見抜けないようでは一生叡知の魔女さんには追いつけないぜ」
叡知の魔女さんには見抜かれているだろう。が、それを突っぱねることはできない。なんせ、たくさんの命を払ってでも生命の揺り籠から得られる利益は膨大なものになるんだからな。
「まだ名もなき未熟な魔女よ。今は周りに目を向けるより先だけを見て進むがよい。生意気なクソガキからの助言だ」
オレも叡知の魔女さんから得られる利益を突っぱねることはできねー。なら、どちらも利益を得られるよう動くだけ。少しでも有利になるよう策を張り巡らせるだけである。
「ほんと、憎たらしいほど生意気!」
これまでにない感情を出す委員長さん。若いな……。
「ふふ。じゃあ、名もなき未熟な魔女を成長させるためにもっとガンバらんとな」
それもまたオレの利益となる。どんどん生意気にならんとな。
「皆。いくわよ!」
肩を揺らしながら去っていく委員長さん。
「あの若さが羨ましいよ」
「十一歳が言うセリフじゃありませんよ」
中身が十一歳じゃないんだからしょうがないじゃん。もう二度と手に入らないものなんだからさ。
「もう世界征服したほうが早いんじゃないですか?」
「世界征服するメリットがあればするさ」
デメリットしかないのだからする気にはなれんよ。
「こうしてゆっくりまったりコーヒーを飲める。これ以上の至福はねーよ」
そのための苦労ならなんら喜んでするさ。




