1215 よき出会い
「竜の生命力ってスゲーよな」
ワニガメを与えて四日。痩せ細っていた火竜が見事な体つきとなった。
「まあ、そのせいで種として終わってんだけどな」
種として完璧すぎると成長も進化の隙もなくなり、停滞し、種を残そうとしなくなる。
まあ、火竜の場合は竜として下位だろうから繁殖行為は他の竜よりは強いらしく、雌と思われる火竜が卵を一つ生んだ。あ、生殖行動はカットさせていただきます。
「卵、意外に小さいのな」
ダチョウの卵くらいだろうか? 十七メートルもあるのに卵は小さいとか生命は不思議である。
「そう言えば竜の幼体とか見たことねーな?」
「竜の幼体時間は短いですからね、見るのは難しいですね」
そうなんだ。あ、そう言えばリューコも成長が早かったっけ。
「どのくらいで生まれんの?」
「火竜なら八日から十日と言ったところですかね? わたしも知識でしかわかりません」
卵が孵る時間として早いのか遅いのかわからんので流しておくが、生まれる瞬間は見てみたいと思い、観察することにした。
テーブルと椅子を出して観察態勢を取る。
「巣を作って温めるんだな」
「本当は無人島に作るそうですよ」
海鳥かよ。ファンタジーの海はスケールが違うぜ。
恐ろしい火竜も子育て時は穏やかになり、なんか猫みたいに喉? を鳴らしている。
「子育て中はエサを食わないんだな」
「そうですね。寝もしませんし、天敵でもいるんですかね?」
あ、言われてみれば確かに。なんやろ? 天敵って?
「無人島で火竜の生態を観察したかったですね」
それは危険と感じるのはオレの勘違いだろうか? 火竜相手にする存在など碌なもんじゃねーよ。
「ベー様。ララ殿が来ました」
のんびり観察帳に記してると、ミタさんがやって来た。ララって誰や?
「名前に一文字もララが被らない黒髪の人魚です」
あ、ああ。あの黒髪美女の人魚さんね。すっかり忘れてたわ。存在そのものを。
「あいよ」
観察も飽きたので桟橋にいってみると、やたら装飾品をつけた白髪のおっちゃんがプラスされていた。
……人魚も白髪になるんやね……。
「遅くなってすまん」
「気にせんでイイよ。やることはいっぱいあったからな」
あなたを忘れるくらいにね。まあ、よそからは暇してると見られてるかもしれないけど!
「そう言ってもらえると助かる」
瞼を閉じて頭を下げる黒髪美女の人魚さん。礼儀作法的なものがあるんだな。
「で、そちらの男性は?」
えらい眼力のあるお方ですこと。ただ戦士って顔や体つきではねーな。政治家って感じだな。
「ジャウラガル族ランバラル家の家長、ダンルガウル様だ」
「ダンルガウルだ。言い難いのならダンと呼んでくれ」
よかった。また一文字も被らない愛称とかあるのかと思ったよ。いや、お前に関係ないじゃん! とか言っちゃイヤよ。
「そうかい。オレはヴィベルファクフィニー・ゼルフィング。ベーと呼んでくれ」
家長がどれだけの地位にいるかわからんので普段通りに接した。
「この距離じゃ話し難いし、陸に上がるかい? こちらがそっちに行っても構わんが」
浮き輪を使って陸にいる人魚を見ながら尋ねた。
「陸に上がろう。こちらがお願いする立場だからな」
お願い? 食料のことかな?
「場所を借りてる身ではあるが、歓迎するよ」
桟橋に設置している浮き輪の使い方を説明して陸に上がってもらった。
「これはよいものだな」
「海にいる人魚が使って改良したものだからな」
携わった方々に最大限の敬意を贈ります。
「不思議なものだ。陸にいると言うものは」
上がりたくても上がれない場所だろうに、おっちゃんに戸惑いはない。どちらかと言えば喜びに興奮してる感じだ。
「あんたらは酒は飲めるのかい?」
海の人魚に酒は作れず、魚人族か地上から流れているものが流通してるらしいよ。
「ああ。バルバラット族が作る酒を飲んでいる」
へ~。あのトカゲさんたちと交流があるんだ。共存共栄できてんだな。
キャンピングカーの前に案内し、テーブルを囲む。
「最近、バルバラット族に渡した別の大陸の酒だ」
ミタさんが二人にガルメリア酒を出した。
「まずはこの出会いに乾杯しようや」
オレはコーヒーカップを掲げた。ってか、乾杯の文化あります?
そんな心配は無用とばかりに二人は酒杯を掲げた。
「よき出会いに」
「ああ。よき出会いに」
三人でカップと酒杯をぶっけ合った。ここの淡水人魚は理性的で助かるぜ。




