1201 まさに勇者
「レイコさん、事件です。種が滅びそうです」
「いや、わたしに言われましても……」
滅んでしまった方の助言をいただきたかったのに。
「勇者さん。どうする?」
なにをだよ? なんて目を向けられてますが、負けてはならぬ。目を逸らしたら食われてしまう。
「……いや、ボフガットはすぐ増えるから問題はない……」
それはよかった。ワニの未来はまだあるようだ。
ウパ子による暴れ食い。クラーケンに脅えていた頃が懐かしい。すっかり捕食者になりやがって。違う意味で涙が出て来るぜ……。
「しかし、よく食べるよな。もう二十匹は食ってるぞ」
骨も残らず食い尽くす。本当に胃にブラックホールでも飼ってないと説明がつかんぞ。
「ウパ子さんも竜ですからね」
あ、ウパ子、竜だったね。オレのなにかが拒否してたから忘れてたよ。
「ってか、竜って魔力があれば生きられんじゃねーの?」
リューコはそうだったじゃん。あ、皆、リューコって覚えてる? オレはチラッとしか覚えてないから追及しないでね。
「竜もいろいろですよ。魔力を食らう竜は希少ですね」
そうなんだ。まあ、どうでもよさそうだからすぐ忘れそうだけど。
「竜が少ないのはあの食欲のせいですね。あんなに食べられたら食料不足になりますし、脅威と思われて狩られるから」
言われてみれば確かにそうやな。ほんと、種として終わってるよな、竜ってよ。
「ワニ、飼えたらイイんだがな」
つーか、ワニってどんな味するんだろう? 前世では鶏のササミに似てるとか聞いたことがあるが。食ってみるか?
「ミタさん。あれ、一匹狩って。食うから」
オレがやってもイイのだが、仕事を与えるのも雇い主の役目、かどうかはわからんけど、メイドの誇り(説明しろと言われたら困るけど)を大事にしましょうね、ってことだ。
「畏まりました。タエコさん、ベー様をよろしくお願いします」
「は、はい! お任せください!」
ビシッと敬礼する青鬼っ娘さん。あ、タエコって言うんだ。まあ、オレの中では永遠に青鬼っ娘さんだがな!
ミタさんたちがピータたちから飛び降り、ウパ子を避けて沼地を駆け抜け、ちょっと小さめのワニを瞬殺。なんで三人でいったか意味がわからない。
「狩りました」
四メートルくらいのワニを引きずって来たミタさんがお淑やかに笑った。うん。サラッとスルッとスルーだぜィ☆
頭がないワニを結界で吊るして血抜きをする。
「勇者さんらはコレを食うのかい?」
血が抜ける間、勇者さんと世間話。コミュニケーションは大切だからな。
「いや、食わんな。皮は売れるので剥ぐがな」
「じゃあ、皮はやるよ」
オレは肉さえあれば充分だしな。
「よいのか? 人の間では人気があると聞くぞ」
なんとも誠実な勇者さんだこと。いつか人に騙されるぞ。
「使い道を見つけるのメンドクセーからいらないよ。そちらで使ってくれ」
不慣れなオレでは皮に傷つけると思うので勇者さんに剥ぎ取りを任せ、肉をいただいた。
場所を移して肉を料理する、と言っても薄くスライスして鉄板で焼くだけなんだけどね。
イイ感じに焼けたら塩を振ってパクッとな。うん。クセはなく不味くはないが、ちと固いな。好んで食べたいもんじゃねーわ。
「ミタさん、ちょっとこの肉使ってなにか作ってみてよ。凝ったものじゃなくてもイイからよ」
好んで食うもんじゃないが、保存食にするは手頃だろう。無限鞄の在庫も寂しいしな。
「畏まりました。では、いろいろ作ってみますね」
料理メイドを呼んでワニの肉料理を開始。なんかいろいろできあがっていく。
「勇者さん、食ってみるかい?」
トカゲさんたちの舌がどうなってるかわからないが、料理の匂いに釣られてたくさんの方々が集まっていた。
「よいのか?」
「ただ、あんたらが食ったことがないものも混ざっている。体に合わない場合もあるから何人かに食わして大丈夫だったら皆に食わせることを勧めるよ」
種としての違いはある。注意せず食わして死んで拗れたらメントクセーからな。
「そうなのか?」
「種によって食える食えないはある。オレらが食えてもあんたらが食ったら毒ってこともある。だから食うなら慎重にな」
これまで魔大陸出身者が作っていたから気にもしなかったが、さすがに繋がりがないところの種族には気を使わなければいかんでしょ。こちらの人との関係を崩すわけにはいかんぜよ。
「わかった。まずはわたしが食べる」
と、自ら毒味を試みた。
まさに勇者。さすが勇者。惚れてしまいそうである。




