1200 理不尽
「バカじゃない」
やって来たメルヘンからの心ない一言。傷つくわ~。
「なんなの? ベーは平和に暮らせない病気にかかってるの?」
君、現役薬師に向かって失礼なこと言うね。あと、そんな病気ありませんから。
「オレ、なにもしてないもん」
と言うか、オレ、なにしたよ? ここに降りてからコーヒーしか飲んでねーよ。
「ベーは動くだけで問題を引きよせるのよ」
なにその理不尽。いや、否定できないので黙ってますけど。
「はぁ~。で、今回はなによ? 今度は誰に丸投げするつもり?」
うちのメルヘンが容赦ありません。誰か助けてください。
ミタさんに助けを求めるが、なぜかサッと視線を逸らされた。ヤだ、見捨てないで!
「……ウパ子が肉を食いたいって言うから狩りにいくだけだもん……」
「それがどう拗れたらこうなるのよ?」
ベースキャンプを建ててるカイナーズを見て呆れている。
本当に理不尽。オレのせいじゃないのに……。
「今回は狩りがメインなの! 狩ったら帰るの!」
オレはうるさいメルヘンから逃げ出した。
「逃げんなやアホー!」
でもドロップキックで吹き飛んだ。
「アーホアーホプリッつあんのアーホ!」
「アホはお前じゃボケがー!」
全力ダッシュで逃げたのに後ろからまたドロップキックをかまされた。最近、うちのメルヘンが狂暴で困ってます。誰か助けてください……。
「まったく、このバカは。そう簡単に逃げられると思わないでよね! あんたの行動はお見通しよ!」
なにやら行動を見透かされてます。クスン。
「ミタレッティー。このバカから目を離しちゃダメよ」
と言って転移バッチを発動して消えてしまった。って、君はなにしに来たのよ?
「ったく、鬼か」
「プリッシュ様は羽妖精ですが?」
クソ。鬼がいる世界で鬼と言っても通じんわ。つーか、種族差別で非難されるわ。
泥はついてないけど、起き上がって架空の泥を払った。
「ベー様。狩りに出るなら供をつけてくださいね」
なんでだよ? と言ったらメルヘンがやって来そうなので素直に頷いておいた。
「狩りだから少人数で頼むな」
それがオレの精一杯。チキンなオレを責めないでください。
「畏まりました。では、四人つけます」
と、なぜか青鬼っ娘さんが四人の中に混ざってた。なにかオレに助けを求めているように見てるのは気のせいだろう。とりあえず「ガンバ!」とサムズアップしておこう。
「……ううぅ。なんでわたしが……」
よくわからないけど、きっとイイことあるって。なくてもオレは責任取らないけどな!
「勇者さん。狩りの案内を頼む」
「……あ、ああ。わかった……」
トカゲさんの表情はわからないが気配が薄くなってる感じがする。なんでや?
「種が違えどベー様がヤバいってわかるんですね」
種の枠に入らない幽霊に言われたくありません。
「まずはボフガットを狩る」
勇者さんを先頭にボフガットなるものを狩りに向かった──のだが、沼地すぎて歩き難い。なので珍獣どもをデカくして背に乗せてもらった。勇者さんも乗りなよと誘ったら丁重に断られました。
「美味しそうとヨダレを垂らすウパ子さんに乗りたいと思うわけないじゃないですか」
あ、うん、そうだね。油断したら食べられちゃいそうだしね。ギンコは八岐大蛇っぽいのを踊り食いしてたし……。
ちなみにオレはウパ子に乗り、なんかどんよりした天候の下を進むこと約三キロ。また八岐大蛇っぽいのが現れた。
「えげつないのが生息してるところだ」
鉄球を出して八岐大蛇っぽいヤツに投げ放つ。
七割の力で投げたが、防御力が低いようで体にメリ込んでしまった。いや、弱すぎんだろう。
「……見た目負けしてんな……」
これならC級冒険者でも狩れんじゃね?
「食べていいか?」
「まだ食うのか? 一匹丸々食ったのに」
ゾウくらいある体に八つの頭がついて、ギンコもそのくらいにしている。珍獣ってのは胃にブラックホールでも飼ってるものなのか?
「いくらでも食べられる」
ソウデスカ。なら食っちゃいなさいよ。
弱った八岐大蛇っぽいヤツに飛びかかり、R18な踊り食い。神よ、どうかオレにモザイク処理能力を与えたまえ。
「ベーよ。ボフガットだ」
勇者さんが指差す方向に目を向けると、六メートルはあろうかと言う目が四つあるワニがいっぱいいました。
「美味しそうでし!」
珍獣どもの味覚が謎である。まあ、理解したいとは思わないけど。
ウパ子を元のサイズ(だと思う)に戻して背から降りた。
「思う存分食うがよい」
ただ、生態系を崩さない程度にしてもらえると助かります。
これから散るたくさんの命に合掌。ナンマンダブ~ナンマンダブ~。
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