1157 柔堅能力
「空を飛ぶのは凄いけど、箒に跨がって飛ぶ理由ってなによ?」
アンタチャブルなことを平気でぶっ込んで来る赤毛のねーちゃん。この世界に様式美はないらしい。
いや、魔女の様式美を決めたのは別の世界のアンタチャブル婆だが、そこは空気を読んで流しなさいよ。
「趣味だ」
と、返しておく。説明すんのメンドクセーし。
「ならしかたがないわね」
あれ? あっさり納得されちゃいましたよ。なんで?
「あんたの作るものにいちいち突っ込んでられるか」
だ、そうです。流してもらえるのはありがたいが、それはそれで寂しいものがあるのは勝手と言うものでしょうか?
「これはおもしろいね」
軽く流した赤毛のねーちゃんとは違い、興味を持ったのはシュードゥ族の奥様たちだった。
「あたしたちにも乗れるかね」
なんか続々と集まって来る奥様方。結構な数が来てんだな。大丈夫なんか?
「これ、どうやって浮いてんだい?」
「魔力かい?」
「魔力っぽいけど、なんか違うね」
「箒自体が軽いから、箒になんか仕掛けがあるんだろう」
奥様方も魔道具作りをするのか、不思議そうに議論している。
「箒の柄に浮遊石を仕込んでんだよ。浮遊石は魔力の込め方で浮き沈みするからな。あとは、風を吹かして進むようにしてる」
隠すほどでもないんで教えてやる。
「それだけだと不安定になるし、乗るの大変だろう」
へ~。なかなかわかってる奥様だこと。魔道具職人なの?
「ああ。あたいはサンジュ。魔道具職人さ」
見た目は肝っ玉かーちゃんだが、手を見たら職人の手をしていた。ゴッツいけど。
「そこは独特の技術だな。興味があるなら研究してみな」
「いいのかい?」
空飛ぶ箒は四、五本作った。一本渡しても困りはしない。気にせずやったれだ。
「なあ、あっちのも一つ、もらえるかい?」
ミタさんが持つ空飛ぶ箒(仮)を指差している。
「ワリーな。あれは打ち止めだ。それに、あっちはオレの独自技術満載でためにはならんと思う。それで我慢しな」
結界術てんこ盛りだからな、調べようも想像するのも無理だろう。発想は得られても技術は得られない。それどころか害になるかもしんねーんだ、空飛ぶ箒のほうで我慢しろや。
そんなことより赤毛のねーちゃんの船の改装だ。
造船所に入ると、ニューサリエラー号が真っ白に輝いていた。
「船の色、白にしたんだ」
前の船は茶色っぽかった。色が違うだけで別の船に見えるから不思議だわ。
「ああ。前から白にしたかったんだ。綺麗に見えるから」
そんな理由でイイんだ。まあ、自分の船なんだから何色にしようが構わんけどよ。
「んじゃ、中を改装するか」
「改装ってどうするんだ?」
「簡単に言えば家具とかソファーを変えたりだな。もうこの船で稼ごうってわけじゃねーんだから快適空間にしねーとな。あ、なんか要望があるなら聞くぜ」
好みがあるなら最初に言っておいてくれ。あとでクレームされても困るからよ。
「いや、好きにやってもらっても構わないんだが、元のままじゃダメなのかい?」
「別にダメじゃねーよ。そのままがイイってんならそのままにしとくぞ」
新しくなるから中も新しくしようと思ったまで。これと言った理由はねー。
「あ、いや、やってくれんなら頼むよ」
「おう。任された」
快適空間にしてやるよ。楽しみにしてな!
家具やソファーは前に買ってあるし、プリッつあんの柔らかくしたり堅くしたりする能力──メンドクセーから柔堅能力と命名しよう。
伸縮能力と柔堅能力があれば隙間なく配置できる。改装野郎ベーにお任せよ!
「さあ、やっちゃるぜ!」
あらよ、ほらよ、どっこいしょー! で、完成よ! ドヤ!
「……ちょっと豪華すぎないか……?」
「快適空間は豪華なくらいがちょうどイイんだよ」
テキトーだけど。
あーイイ仕事した──ら、なんか眠くなって来たわ。ってか、二徹してたわ。
ダメだ。この眠気に勝てる気がしねー。
「ミタさん。オレは寝る」
造船所の端へといき、無限鞄から毛布を出して包まり、お休み一秒で夢の中。グーグーグー。




