1156 ララ
空を飛ぶ魔女。
字面はファンタジー感があるが、実際の魔女はメルヘンよりだった。
「……まさか鳥に変身するとは思わなかったわ……」
スライムやヘビが人化する時代(?)である。人が鳥になっても不思議ではない、のか? ま、まあ、魔女ってスゲーってことで納得しておこう……。
「べー様。これ、おもしろいですね!」
空を飛ぶメイド。
逆にこっちはファンタジー全開である。
設置するだけだからオレだけと思ったのだが、それはいけないとごねるので、ミタさんたちメイドに空飛ぶ箒(仮)を渡したのだ。
ちなみに空飛ぶ箒はほとんどオレの結界術で創られたもので
空飛ぶ箒(仮)は見た目が箒じゃないからです。
「じゃあ、やるよ。戦闘にも掃除にも使えるからよ」
夢中になりすぎて遊びの域を出てしまった。制作者として封印するのも偲びない。使ってくれるのなら万々歳だ。
「……戦闘にも掃除にも、ですか……?」
「ああ。いろいろ機能を詰め込んだから説明するよ」
ミタさんなら使いこなせんだろう。万能なメイドだし。
大河な感じに幅の広い河を飛び越えると、鳥に変身した補佐長さんが降下をし始めた。
……牧場かな……?
雪が薄く積もっているのでよくはわからんが、感じが牧場っぽかった。
雪が積もった大地に着地、といったところで補佐長さんが人へと戻った。メルヘンやな~。
オレらも着地する。雪から下、草が生えてる感じだな。
「ここは、アルビック公爵の領地ですが、閣下が借り受けましたのでご自由にお使いください」
へ~。皇帝の弟、閣下って呼ばれてんだ。じゃあ、オレも閣下どのと呼ばせてもらおっと。そのほうが呼びやすいし。
「それで、どうするのですか?」
「こうするんだよ」
結界術で雪を払い、土魔法で軽自動車が乗るくらいの台座を創り出した。
「な、なんて魔法力なの!?」
魔女が驚くオレの土魔法。自分でもえげつないとは思ってたが、予想以上にえげつないものだったようだ。
まあ、今はそんなことに時間を割いている暇はねー。収納結界からフュワール・レワロを出してつけ添えた。
「……これが、フュワール・レワロなの……?」
見た目はデッカい水晶玉だが、この中には広大な空間が広がっており、幾万もの命が溢れているのだ。
「ここに文字が刻まれている。読めるかい?」
何語かはわからないが、オレはラーシュからもらった自動翻訳眼鏡があるので難なく読めました。
「……これは、旧サイサル語かしら……?」
なにやら読めない感じだな。マイナーな言語かい?
「伝わってない文字なのかい?」
「いえ、伝わっている文字です。ただ、分野が違うのでわたしには読めないのです」
魔女の世界にも分野ってあるんだ。結構幅広くやってんのかな?
「これは命の揺り籠。未来に命を残すって書いてあるんだよ」
「読めるのですか!?」
「これのお陰でな」
と、自動翻訳眼鏡を出し、見せてやる。
「……凄い。なんて魔法具なの……」
魔女界では魔道具を魔法具って呼んでんのか?
「こ、これは、どこで創られたもなんですか?」
「南の大陸だな。大魔法師が創ったらしい」
ラーシュの手紙には皇国一の魔法師だって書いてあった。名前が書いてあったかは忘れました。ごめんなさい。
「南の大陸の大魔法師。ラレット様かしら?」
「ラレット様とやらは有名なのかい?」
「有名だとララ様から聞いたことがあります」
ララ? 誰や?
「大図書館の魔女ですよ」
と、なぜかミタさんが教えてくれました。なんで知ってねん!?
「補佐長様に聞きました」
あ、うん、そうですか。オレは忘れると思うので覚えておいてくださいませ……。
「そうかい。まあ、長く生きてる感じだし、南の大陸のこともわかんだろうよ」
人外ならファンタジーの海も越えられんだろうよ。知らんけど。
「まあ、ここに設置したが、丸見えなのが気になるんならそっちでなんとかしてくれや」
「あ、あの、どうやったら入れるんですか?」
「それは、そちらの準備が整ってからだ。今入られても困るからな」
補佐長さんがどれだけ強いか知らんが、なかなか過酷なところだ。入って死なれたら大図書館の魔女に顔向けできねーよ。
「んじゃ、オレらは戻るんで、用意ができたらまた知らせに来てくれや」
赤毛のねーちゃんの船の改装せんとならん。あっちも怒らせるとメンドクセーからな。
空飛ぶ箒に跨がり、造船所へと向かった。




