1154 マッドクリエイター
試作として一つ、作ってみた。
「……ただの箒だな……」
いや、空を飛ばなければ箒なんだが、なんか想像してたのとちがう。
「……もっとファンタジー溢れるもの想像してたんだがな……」
一応、結界を纏わせて飛ぶようにはしたよ。
三センチもないところに乗っても大丈夫なように自転車のサドルのようなものを見えないようにも創った。
跨がり浮いてみる。
「うん。空飛ぶ結界に乗ってるのと変わらんな」
いや、オレが乗るために創ったわけじゃねーから空を飛ぶ楽しみは感じんでもイイんだが、なんかこう、ワクワク感と言うかドキドキ感と言うか、盛り上がれるものが欲しいのだ。
「……オレの想像力、貧困すぎる……」
クリエイターと言ってるクセに想像力が貧困とか、泣けてくるぜ……。
「マイロード。創造主が「これを観て学ぶでござる」とDVDを送って来ました」
エリナが? DVDを?
なんかそこにある段ボールを開いてみると、DVDとポータルプレイヤー、あと、単三電池がいっぱい入っていた。
「アニメ?」
DVDの一つを取ってみると、なんか派手な服を着た女の子が描かれていた。
「空飛ぶ箒が出て来る魔法少女系のアニメだそうです」
魔女っ子なサリーちゃんな感じか?
いや、平成の、日曜日の朝にやってた魔法少女らしきものを観たことはある。と言っても毎週観てたわけじゃなく、日曜日たまたま起きてテレビをつけたら観た、くらいなもの。
内容なんてまったく記憶にもねーが、キラッキラな衣装を纏って敵と戦ってた記憶はある。
ん? 敵と戦う? え? 魔法少女ってバトル系だったの!? 平成魔法少女荒れてんな! 平和にやれよ!
なんかオレの想像と違う方向にいきそうな予感がするが、オレの貧困な想像力では出て来ねーんだから参考にさせてもらうか。んじゃ、これから観るか。
………………。
…………。
……。
「戦ってばっかりだな! 平成の魔法少女は!!」
なんなのコレ? 世の女の子を戦いの世界に送り出したいの? 弱肉強食な世界で生きるためのバイブルなの? 前世の世はそんなに荒れてたのか!?
「魔法少女ってもっと夢と平和に溢れてるのかと思ってたよ」
なんかもう愛と勇気に溢れてたよ。完全にバトルな世界だよ。ちょっと熱くなった自分が恥ずかしいわ……。
「クソ。バトルが激しくてなんの参考にもならんかったわ」
そもそも空飛ぶ箒が出て来たのなかっただろうが。なんか不可思議なビーム出したりナックルつけて殴り合いしたり、あまつさえ銃まで出しやがって。これならまだ夢と冒険の世界の方が乙女的だわ。
「……やっぱこれが一番なのか……?」
試作として創ったものが一番魔女らしい空飛ぶ箒だわ。
「まあ、これはこれでイイか。別にお遊びだしな」
近場ならともかく箒で長距離とか馬車より苦痛だろうよ。
でも、遊びならとことん遊ぶのがオレである。どうせならおもしろおかしく作ってみるか。
「ベー様! 起きてますか! ベー様、いるんですか!」
なにやらミタさんが部屋の外で騒いでる。ドレミ、ちょっと言って来て。
ミタさんのことはドレミに任せ、遊び満点の空飛ぶ箒を考える。あ、いや待てよ。なにも箒に拘ることもねーだろう。自転車だって飛ぶんだからな。
「そう言や、掃除機に乗った魔女がいなかったっけ?」
なにで見たかは忘れたがそんな記憶があるぞ。
なんで掃除機? と言う謎は横に置いといて、だ。そのアイデアはいただきだ。
「吸うことができて吐く──ではなく噴くこともできるってイイな」
掃除機にもなれば空を飛ぶこともできるじゃん。イイぞ、それ!
「あ、柄のほうからビームを出すのもおもしれーな」
モコモコビームを撃てるとか、なんか波動砲みてー! ダハハハハ!
イイねイイね。乗って来たよ。クリエイターの血が騒ぐぜ!
「……ご主人様と同類だったんですね、ベー様は……」
なんか後ろで言ってますが、今のオレには構っている暇はありません。さあ、創るぜ!




