1130 魔道具職人
酒場はたくさんのシュードゥ族で溢れ返っていた。
「酒クセーな」
当たり前と言えば当たり前なのだが、飲めないオレには苦痛でしかねー。なので結界で遮断。フローラルな香りで結界内を満たした。
「ベー様。ここは騒がしいので二階の個室へと参りましょう」
とのミタさんの言葉に従い、二階へと移動することにした。
「二階はなにに使ってんの?」
何部屋かあるみたいだが、宿屋か?
「静かに飲みたい方のため個室です。シュードゥ族は歳を重ねると静かに飲みたくなるそうですから」
ほーん。ドワーフとは違うんだ。あいつらは騒いで飲むのが好きらしいからな。
「こちらです」
通されたのは八畳ほどの部屋で、テーブル一つと椅子が四脚あるだけの、なんとも質素……と言うより味気もなにもあったもんじゃねーって部屋だった。
「酒が不味くなりそうな部屋だな」
牢屋にテーブルを置いたところで飲む酒は旨いのか? オレなら……いや、オレもコーヒーならどこでも美味しく飲めるタイプでしたね。
「ミタさん。疲れてるなら休んでも構わんよ」
なんなら数日ほどバカンスにいって来てもイイぜ。それだけの働きをしてんだからな。なんならボーナスも出すよ。村の復興に使うのもよし。豪遊するもよしだ。
「大丈夫です。大体のことは部下に任せてますので」
ミタさん、部下に任せることを覚えたのか。それはイイことだ。が、益々メイドが増えてそうな感じだな。
「この酒場、メイドの誰かに仕切らせるってこと、できるか? ゼルフィング家としてやりたいんだがよ」
シュードゥ族を抑えるためにもオレがかかわっていると知らしめておくほうがイイだろう。市長代理殿も安心できるだろうしな。
「はい、大丈夫です。すでに体制作りは完了しております。あとは飛空船による輸送計画を詰めるだけです」
「飛空船もうちで仕切ってんのかい?」
「はい。ベー様配下の船団ですから」
あ、ああ、そうだっけ。プロキオンや輸送船は商会から外してたっけ。ってか、放置してましたね。ごめんなさい!
「そうか。婦人、なんか言ってた?」
「商会と別ならお好きにどうぞ、だそうです」
うん。怒ってないのならなにより。ゼルフィング家として好きにさせてもらいやす!
テーブルにつき、ミタさんが淹れてくれたコーヒーをいただく。うん旨い。
「ベー様。シュードゥ族の長老衆を呼んでもよろしいですか?」
あ、そうだった。コーヒーの旨さに忘れてたわ。
「ああ。通してくれや」
と言うと、部屋のドアが外から開かれ、老シュードゥと船団長、枯れた細身のじーさんが入って来た。
「待たせて悪かったな」
さすがに忘れてたとは言えませぬ。
「なに、ただで旨い酒を飲めるのだ、一年でも二年でも待つさ」
なんとも嬉しそうな老シュードゥ。年寄りなんだから控えろや。体壊すぞ。
「その様子では酒に不満はなさそうだな」
えーと。なにを出せって言ったっけ、オレ? なんかテキトーに言ったから忘れたわ。
「ああ。仕事終わりのビールもよいが、まったり飲む焼酎も最高だ。感謝する」
他の二人も酒が飲めることに喜んでいるようで、満ち足りた顔で頭を下げていた。
「報酬に満足してもらえたら雇い主としてはありがたいよ」
カイナーズホームで買った酒ならびっくりするほど安いはず。それで気持ちよく働いてもらえてイイもんを作ってくれるならジャンジャン飲めだ。
「ただ、オレが雇っている間だけだがな。終われば金を出して飲んでもらうぜ」
そこははっきりとさせておく。
「ああ。それは重々承知している。あまり優遇されると他の種族から反感を買うからな」
妬み嫉みは種族に関係なし、か。メンドクセーこった。
「つまり、正当な理由があれば優遇してもイイってことではあるがな」
無限鞄から人数分のコップを出し、魔術で氷を創り出して入れてやる。
「魔術でものを温めたり冷やしたり、こうして氷を創りは出せるってのは便利っちゃー便利だが、結構手間のかかるもんでもある。魔道具で代用できると楽なんだがな」
さらに無限鞄からウイスキーを出してコップへと注ぐ。
酒のアルコールが氷を溶かしていくのを黙って見詰めていると、ゴクリと唾を飲む音が耳に届いた。
「……つまり、我々に作れと?」
枯れた細身のじーさんが呟いた。
「正当な仕事をした者には正当な報酬を与えるのがうちのやり方。年齢も男女も問わない。もちろん、種族もだ。それを飲んでもイイって魔道具職人がいたら紹介してくれや。礼は弾むからよ」
イイ感じになったウイスキーを三人へと押し出した。イイ返事を待ってるぜ。




