113 武士の情け
「さて。いろいろ話を聞きてーが、まずは家を造んねーとな」
オレの能力と技術なら家くらい造作もねないが、それでも家一軒造るとなれば半日はかかる。
異常だろうとの突っ込みはノーサンキュー。別に前世のような建築法がある訳でもないし、複雑な造りにするわけでもない。それに、道工や材料、家具類は以前に作ってある。だから半日もあれば造れんだよ。
「そのことなんだが、隣に造ってくれねえかな」
はん? 隣?
「どーゆーこった?」
山部落としても村としてもうちが端っこだ。住む場所としては不便……じゃないな。家の隣では……。
「いやまあ、結婚を期にこの村に引っ越してきた……」
はあ? なに言ってんのあんちゃん?
「引退すんのは早いんじゃねーか?」
あんちゃんまだ二十五くらいだろうが。
「行商人は辞めたが商人は辞めてねえよ。勝負に出たんだよ」
まあ、根っからの商人だしな、辞めたくても辞められねーか。
「わかったよ。って、村長には言ったのか?」
この時代(地域)、村人でねーヤツが村に住むなんて滅多にいない。いたとしても村八分に近い扱いを受けるだろう。
まあ、うちの村の場合はいろんなヤツがくるし、家に泊まりにくるので余所者に抵抗はない。いや、なくはねーが、薄いのは間違いないな。会長さんらとか自然に受け入れてたし……。
「ああ。村長の許可はもらったし、お前んちの隣で良いってよ。税金も二年分は先払いしたし、土地代も払った。商人ギルドにもここで商人することも報告してあるよ」
「マジでここに引っ越してきたんだな」
やるときはやるあんちゃんなのは知ってたが、ほんと、やるときは躊躇いがないな、このあんちゃんは。
「マジで引っ越してきたんだよ。まあ、それだけじゃねえがな……」
言って畑でオカンと話すねーちゃんを見た。
「ねーちゃん、医者なのか、マジで?」
聞くと、なんか複雑そうな顔をする。
「うん、まあ、なんだ。自称だがな」
「自称、ね……」
まあ、医者になるのに資格とかいらねーし、ギルドがあるわけでもない。医者の弟子になって認められたら医者になるってのが、この時代の常識(法)だからな。
「まあ、あいつと知り合ったのもお前から教わった人工呼吸法や心肺蘇生法だからな」
ああ、そー言やぁそんなこと教えたな。医者の話になったとき。
「もしかして、やったのか?」
聞くと、顔を真っ赤にしてソッポを向いてしまった。
「まあ、その辺は聞かずにおこう。武士の情けだ」
「意味わかんねぇよ、お前のツッコミはよ!」
わかってくれねーのが悲しいよ。
「んで?」
「……お前の切り替えに着いていけねーよ、ほんと……」
まあ、それがオレです。キリッ。
「……なんだ。それで知り合ってだ、いろいろあってお前のこと、つーかお前の医学に興味をもったらしくてな、まあ、なんだかんだあって、医学を学びたいってのと、おれの勝負に出たいって気持ちが、あった? 的なことで、それならって、な」
「意味わかんねーよ、それ」
「いつもお前が言ってんだろう! 考えるな、感じろって!」
「アハハ。冗談だよ。なんとなくはわかったよ」
「……いや、言ってなんだが、なんでわかんだよ、あんな説明で……?」
「男社会で女が成り上がるのは大変だし、好きなこともできねーもんさ。ましてや、志あるヤツは諦めたりしねーよ。だからこそ、惚れちまったんだろう? そんな女によ?」
「…………」
顔を真っ赤にしてソッポではなく、下を向いてしまった。クックック。純情だね~。
「わかったよ。あんちゃんとねーちゃんの結婚祝いに立派な家を建ててやるよ。ちゃんと医者としてやってける"病院"もな」
「ワリーな。お前頼みでよ」
「気にすんな。あんちゃんにはいろいろ無茶言ってるしな」
本の収集とか、世間の情報とか、行商人に頼むようなレベルじゃないもんばかり頼んでたからな。
「あ、なんかリクエ──じゃなくて、どう言う家にしたいか考えはあっか?」
「ん~~。それなんだが、店を造ってくれねえか。よくある雑貨屋くらいの店で……」
「ここに店開くのか?」
「ああ、ここで開く。が、広場でも開く」
まあ、ここはスルーしとくか。
「了解。店も立派に建ててやるよ」




